前回は同時接種の安全性について自分なりに調べた記事を書きました。(下記記事)今回は定期予防接種の今年度(2024)から開始した5種混合ワクチンについて調べた事をまとめます。
5種それぞれの病気の特性や発生状況
5種混合ワクチンは1つのワクチンの中に(ジフテリア(D)、破傷風(T)、百日咳(P)、ポリオ(IPV)、Hib)を含むワクチンとなります。それぞれの病気の特性や発生状況については下記の厚生労働省のHPから確認できます。
厚生労働省 5種混合ワクチン 疾病の性質
ヒブ(Hib)ワクチンの疑問
昨年度までは4種混合とHibは別々のワクチンでした。こちらの厚生労働省 5種混合ワクチンについてのP9を参照すると費用対効果を主な理由として5種混合の導入を検討していたよう見受けられます。
またP13にてHibワクチンに関してヘモフィルスインフルエンザ菌感染症の発生状況について国立感染症研究所HPより引用したグラフを用いて5歳まで一定の発症数があるとしています。
実際に国立感染症研究所のページに飛ぶと同じグラフが確認できました。よく読むと予防接種に導入されたHibは侵襲性インフルエンザ菌感染症(IHD)の中のtypeBである事がわかります。
厚生労働省の参照していたグラフは厳密にはtypeBを含むIHDなので、実際のtypeBがどれくらいか分かりませんが、おそらく同じ感じで乳幼児と高齢者に発症数が多いと推測します。私が気になったのはこの厚生労働省の資料は2023年作成なのに対し国立感染症研究所から引用したグラフは5-10年前(2013-17)のグラフである事です。
もう少し探してみたところ、国立感染症研究所から2023年1月27日に公開されたページを見つけました。下記グラフは年齢全体ですが、緊急事態宣言後から報告数が減っています。
また下記の表でも0-4歳のIHD報告数、全体におけるIHDによる死亡者数は緊急事態宣言後に減少しています。
国立感染症研究所の考察を読むと緊急事態宣言が患者さんの届出に影響があったか評価できていないものの、重症者の届出の影響については考えにくく、死亡者の割合も緊急事態宣言前後で大きな変化がなかったとしています。また、コロナの感染対策がIHD届出の減少になった可能性があるとしています。
厚生労働省の5種混合についての資料は2023年8月29日の資料なので、なぜ国立感染症研究所の2023年1月27日公開のHPを参照しなかったのか疑問です。
国立感染症研究所の1月27日のページでは実際に2020年から重症者+死亡者数の減少がグラフと表からよみとれます。感染対策が重症者+死亡者数の減少につながったと考察がある事から、ワクチンよりも感染対策を行う方がtypeBに限らずIHDに対する予防効果があるのではと個人的には思いました。
5種混合ワクチンの製品情報
さて、役所や小児科から赤ちゃんのワクチンのスケジュールや種類を記載した紙を受け取るものの実際に打つワクチンの製品情報はまったく載っていないので分かりませんでした。なので、厚生労働省のHP ワクチンの安全性から5種混合ワクチンの製品を確認しました。現在、5種混合には2種類の製品があるみたいです。
厚生労働省のHPから、どちらの製品もかなり高い頻度で副反応がでることがわかります。
クィントバック
クィントバックはKMバイオロジクス株式会社が製造販売元、Meiji Seika ファルマ株式会社が販売元の製品です。クィントバック添付文書はこちらから確認できます。
この記事でも記載した通り、日本のワクチン承認審査はPMDAで行われます。
クィントバックがどのようにPMDAで審査・評価されたのかクィントバックの審議結果報告書を確認していきます。
早速1ページ目にてクイントバックは承認条件付きで承認されている事が分かります。
審査報告(1)のP3(PDFのスクロールでは6ページ目)にてクィントバックは2022年時点で国内外未承認の製品である事が分かります。
7.1第一相試験(P14)、7.2第二相試験(P15, 17)、7.3第三相試験(P19)から安全性は治験薬各回接種後から27日後までに出た副反応や抗体を調査している事が分かります。つまり27日後以降に出現するかもしれない副反応や抗体価は調査の記載がないため、年単位の中長期的な安全性は不明だと思います。
また、有効性の評価方法についてを読むと5種それぞれの感染症の患者さんの割合が低いため感染症の発症予防に関する臨床試験が難しく、代わりに抗体保有率で有効性を評価するとあります。つまり5種の感染症の発症頻度はワクチンの真の有効性を確認する臨床試験が困難なほど低い事が分かります。
同時接種については下記の記事でも触れましたがクィントバックの臨床試験結果からも同時接種による影響がある事がわかります。(対照群でも同様の傾向があるから安全性は大丈夫だろうとしています...)
また、接種時期に関しても安全性に問題なしとしているものの、生後2ヶ月の集団は抗体価が低かったり注射部位腫脹が発現しやすい事が分かります。
気になる点としては、臨床試験のサンプル数が少ないので、製造販売後に情報収集をするとしている点です。
ちなみに販売後調査を確認すると、因果関係不明と評価されたクィントバック接種後(同時接種)の死亡事例があります。
ゴービック
ゴービックは阪大微生物研究会が製造販売元、田辺三菱薬株式会社が販売元、ファイザー株式会社がプロモーション提携している製品です。ゴービックの添付文書はこちらから確認できます。
厚生労働省の資料からゴービックのHibは海外メーカーから導入したものだそうです。しかし海外メーカーがどこなのか色々ネットや審議結果報告書を調べて見ましたが記載がありませんでした。断定はできませんが、このワクチンのプロモーションにファイザー社があるので何か関連があるのかもしれません。
ゴービックがどのようにPMDAで審査・評価されたのかゴービックの審議結果報告書を確認していきます。
早速1ページ目にてゴービックもクイントバック同様に承認条件付きで承認されている事が分かります。
ゴービックもクィントバック同様に審査報告(1)のP3(PDFのスクロールでは6ページ目)にて2022年時点で国内外未承認の製品である事が分かります。
ゴービックの安全性評価は長くても接種後6週までの副反応を確認しています。それ以降あるかもしれない副反応や抗体価は調査の記載がないため、年単位の中長期的な安全性は不明だと思います。
対照群に同様の傾向があるから安全性は大丈夫だろうとしていますが、同時接種により発現割合の高い特定有害事象があるとあります。
またゴービックの臨床試験で川崎病が本剤群のみに複数あったものの偶然の可能性が高いとして製造販売後に調査するとあります。
ゴービックも販売後に情報収集をする予定みたいです。
また、ゴービックの医薬品インタビューフォームP43にて、ゴービックに含まれる類薬は過去にギラン・バレー症候群の報告があるとしています。
ちなみに販売後調査を確認すると、因果関係は不明ですがゴービック接種後(同時接種)の死亡事例があります。
まとめ
5種混合ワクチンは1つのワクチンの中に(ジフテリア(D)、破傷風(T)、百日咳(P)、ポリオ(IPV)、Hib)を含むワクチンとなります。2024年度から費用対効果を主な理由として厚生労働省は4種混合+Hibの5種混合ワクチン接種を開始しました。
国立感染症研究所の最近のデータからはHibを含むIHDの報告数は緊急事態宣言後から減少し、コロナの感染対策が減少に影響した可能性を示唆しています。
現在、5種混合ワクチンの製品はクィントバックとゴービックの2種あります。それぞれの審議結果報告書や販売後調査資料を確認するとどちらも下記の共通点があります。
次の記事はこちら⇩⇩
参考
厚生労働省 5種混合ワクチンHP
厚生労働省 資料 5種混合ワクチンについて厚生労働省 資料 5種混合ワクチン、小児に対する肺炎球菌ワクチンについて
国立感染症研究所 侵襲性インフルエンザ菌感染症発生動向:2013~2018
国立感染症研究所 侵襲性インフルエンザ菌感染症発生動向:2018年1月~2021年12月
クィントバック添付文書
クィントバック 審議結果報告書
クィントバック市販直後調査結果報告
ゴービック添付文書
ゴービック 審議結果報告書
ゴービック市販直後調査結果報告