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赤ちゃん2ヶ月予防接種の不安③~小児肺炎球菌~
前回は5種混合ワクチンについて調べた事をまとめてみました。
今回は小児肺炎球菌ワクチンについて調べた事をまとめてみます。
小児肺炎球菌の疾病の特性
小児肺炎球菌について厚生労働省のHPで確認できます。赤ちゃんはリスクが高いとされることからワクチン接種を推奨しているみたいです。
肺炎球菌感染症の概要
肺炎球菌感染症とは、肺炎球菌という細菌によって引き起こされる病気です。この菌は、集団生活が始まるとほとんどの子どもが持っているといわれるもので、主に気道の分泌物により感染を起こします。これらの菌が何らかのきっかけで進展することで、肺炎や中耳炎、髄膜炎などの重い合併症を起こすことがあります。
特に、髄膜炎をきたした場合には2%の子どもが亡くなり、10%に難聴、精神の発達遅滞、四肢の麻痺、てんかんなどの後遺症を残すといわれています。
また、小さい子どもほど発症しやすく、特に0歳児でのリスクが高いとされています。
幼児肺炎球菌症の現在の状況
国立感染症研究所HPから幼児は肺炎球菌感染症報告の中では肺炎や髄膜炎よりも菌血症の報告割合が最も高いとしています。また、ヒブ(IHD)と同様にコロナの緊急事態宣言があった2020年から幼児肺炎球菌病が減少しています。
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政府統計の総合窓口では政府が一歳未満の乳幼児死亡原因の1〜10位まで毎年統計をとっており、最新で2022年までのデータがみれます。こちらを見ると、一歳未満の死亡にて髄膜炎は1985年、肺炎は2020年を最後にデータがないようです。データがないということはランク外になったということだと思います。
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国立感染症研究所HPによると侵襲性肺炎球菌症は現在5類の感染症みたいです。子どもの肺炎球菌ワクチンは2013年に定期予防接種になり、届出の調査を始めたのは2014年からだそうで、報告書数は2020年まで年々増えていました。この増加は医師の届出率が増えたからそれに伴って増えたと考えられており、ワクチンが定期予防接種になったのと届出を取り始めたのが同時期なのでワクチンが届出に影響があったかはわからないとしています。
2014~2019年はサーベイランス開始直後の期間であり、報告数が増加した主な要因として医師の届出率が上がったことが考えられる。2016年の届出基準変更により、髄液・血液以外の無菌部位から菌が検出された場合も届出対象となったが、これらの検体のみから診断された症例は少なく、報告数増加に対する影響は小さいと考えられる。
その他のIPD発症予防として、肺炎球菌ワクチン接種が行われている。2013年4月から小児を対象に結合型ワクチンが、2014年10月から高齢者を対象に莢膜多糖体ワクチンが定期接種化された。定期接種化とIPDサーベイランス開始は同時期であり、これらのワクチン接種導入によるIPD届出状況への影響を評価することは難しい。
厚生労働省のHPから肺炎球菌ワクチンの”PCV”後の数字は肺炎球菌ワクチンが対応する種類の数を表していることが分かります。肺炎球菌には90種類あるみたいなので、PCV20なら90種類中の20種類に対応するワクチンという事みたいです。逆に言うと肺炎球菌ワクチンを打っていてもワクチンの対応していない種類の幼児肺炎球菌病になった場合は抗体がないので予防効果は発揮されないという事になると思います。
ワクチンの効果
肺炎球菌には、90以上の種類があり、PCV15はそのうち15種類、PCV20は20種類の肺炎球菌に対して予防効果があります。
小児の肺炎球菌による侵襲性肺炎球菌感染症(※)は、肺炎球菌ワクチンの定期接種等が実施される以前の2008~2010年は10万人(5歳未満)あたり約24-26人が罹患(りかん)していましたが、2022年には、約4.8人と、約8割の患者数の減少がみられています。
※侵襲性感染症とは、本来は菌が存在しない血液、髄液、関節液などから菌が検出される感染症のことです。
厚生労働省HPではワクチンが患者減少に効果があるとしていますが、国立感染症研究所HPはワクチンが重症患者減少になった可能性があるとしつつ2020年以降の報告数の大きな減少はコロナにおける感染症対策が主な肺炎球菌症の予防になった可能性があると考えているみたいです。
2020年以降に報告数は大きく減少し、これは小児・高齢者いずれの年齢群においても認められた。...
...ただし、後述の肺炎球菌ワクチン接種によりIPDの原因血清型が変化しており4,5,6、重症な病型のIPD患者数が減少している可能性についても留意する必要がある。新型コロナウイルス感染症流行に対して、3つの密を避ける、人と人との距離の確保、マスクの着用、手洗いなどの手指衛生といった感染対策が広く行われるようになったことで、主として飛沫感染の感染経路をとるIPDの予防にもつながった可能性があると考えた。
厚生労働省は罹患したら肺炎や髄膜炎などのリスクが高いから幼児ワクチンを推奨しています。実際の小児肺炎球菌報告をみると菌血症が多くを占めています。ワクチンで予防できるのは20/90種類に対してであり、コロナの感染対策により2020年から罹患は大きく減少しています。また、政府の統計からも幼児の肺炎と髄膜炎による死亡原因はランク外という現状です。
幼児肺炎球菌ワクチンの製品について
厚生労働省の資料ではPCV15は今年の2024年4月から開始されたみたいです。PCV15の定期予防接種開始の1ヶ月前にPCV20の薬事承認があり2024年10月からはPCV20へ切り替わっているみたいです。
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使用するワクチン
2024年10月以降、原則として、沈降20価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV20)を使用します。
沈降15価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV15)も使用可能です。
沈降15価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV15)で接種を開始した方は、原則としてPCV15で全ての接種を行ってください。
現在は既にPCV20へ切り替わっていますが、参考までにPCV15の情報も載せておきます。
PCV15はMSD株式会社が製造販売元で、製品名はバクニュバンスだそうです。バクニュバンスの添付文書を確認できます。また、こちらがバクニュバンスの審議結果報告書になります。
プレベナー20
今年の2024年10月以降からはPCV20が定期接種開始となりました。PCV20はファイザー株式会社が製造販売元で、製品名はプレベナー20だそうです。リンクからプレベナー20の添付文書を確認できます。
プレベナー20がどのようにPMDAで審査・評価されたのかプレベナー20の審議結果報告書を確認していきます。
早速1ページ目にてプレベナー20は承認条件付きで承認されている事が分かります。
[承 認 条 件]
医薬品リスク管理計画を策定の上、適切に実施すること。
プレベナー20の赤ちゃんのワクチンは2023年10月時点で3カ国で承認されているみたいです。
2023年10月時点で、本剤は18歳以上の成人を対象として米国、欧州を含む44の国又は地域で製造販売承認されている。幼児適応については、米国を含む3ヵ国で承認されており、欧州で申請中である。
(P3, 1.起源又は発見の経緯及び外国における使用状況に関する資料等)
プレベナー20は前から使用されているプレベナー13を元に7種類を新たに追加したワクチンみたいです。臨床試験にてプレベナー20がいくつかの種類で主要評価項目の基準より劣っているものがあったものの、総合的にみてプレベナー13と同様の有効性が期待できるとしています。
以上の結果から、国内第三相試験(1016試験)で、本剤の筋肉内接種と皮下接種時の免疫抗原性が同様であることを確認した。また、海外第三相試験(1011試験)で、主要評価項目の非劣性基準を満たさない血清型が認められたものの、その結果のみがIPDにたいする予防効果がないことを直接的に予測するものではないと考える。主要評価項目の非劣性基準を満たさなかった血清型についても、主要評価項目以外の有効性評価項目を含めた総合的な考察に基づき評価し、OPA応答を含む免疫原性について、PCV13と同様の本剤の免疫応答が示唆され、また、本剤の追加免疫により初回免疫後よりも高い免疫原性が概ね確認された。
以上より、本剤の筋肉内接種における初回免疫及び追加免疫による各血清型に対する免疫応答が確認されたことから、本剤は幼児におけるIPDに対する有効性が期待できると考える。
(P31, 7.R.1.1本剤の有効性について)
また、プレベナー20の有効性の持続については臨床試験をしていないものの、プレベナー13が2年くらい有効性が続く被験者が一定数の割合でがいたのでプレベナー20も同様と考えているそうです。(逆に言うと2年持たない被験者もいたということでしょうか。)
本剤の長期的な効果の持続性は評価していない。...PCV13の臨床試験において、PCV13の4回接種後2年を経過した後も、各血清型に対するIgG抗体濃度0.35ug/mL以上(ELISA)を保有する被験者は一定程度存在し...
したがって抗体応答パターンから、本剤においても、過去の肺炎球菌結合型ワクチンで認められた長期的な予防効果の特性と考えられるメモリー応答が誘導されることが示されたため、長期的予防効果が期待される。
(P34-35, 7.R1.3 免疫原性の持続について)
安全性については熱性痙攣(けいれん)や血小板減少性紫斑病が臨床試験でも発現する例があり、またPCV13でも販売後に発現の報告があることから、プレベナー20の販売後にこれらの副反応について注意喚起するとあります。
国内第三相試験(1016試験)では、本剤接種後に痙攣発作が非重篤なものを含め5例認められ、いずれも熱性痙攣であった。...
...以上の臨床試験成績に加え、PCV13の国内市販後において痙攣(熱性痙攣を含む)が報告されていることを踏まえると、本剤接種後に痙攣(熱性痙攣を含む)を発現する可能性が考えられ、本事象の発現後に速やかな処置がなされない場合、重篤な転帰をたどる可能性があるため、PCV13と同様に、本剤の添付文書等において痙攣について注意喚起を行うとともに、製造販売後に引き続き情報収集を行う。
(P41, 7.R.2.2.1 痙攣発作(熱性痙攣を含む)について)
海外第三相試験(1011試験)では、本剤IM群の1例で血小板減少性紫斑病が重篤な有害事象として報告された。
またプレベナー20の安全性は現在市販されているプレベナー13と同じだから大丈夫という結論のようです。
本剤の臨床試験成績から、本剤はPCV13と同様の安全性プロファイルを有すると考えられるものの、本剤は本邦においてPCV13と同様に、臨床試験では検討されていない様々な背景因子を有する者も含めた多くの小児への接種が想定される。
(P46, 7.R.5 製造販売後の検討事項について)
現在最新の厚生労働省HP(2024年10月24日時点)からプレベナー13の死亡・副反応数が確認できます。プレベナー20がプレベナー13と同様の安全性であれば同じくらいの死亡・副反応が想定されます。
リンクはプレベナー13販売後から2024年6月30日までの死亡・副反応報告数が確認できます。下記は2024年4月1日〜6月30日の3ヶ月間に報告された重篤症例一覧です。
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ちなみに肺炎球菌ワクチンを打って結果、肺炎になるのは、本末転倒な気が個人的にはしますがどうなのでしょうか...
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まとめ
厚生労働省のHPからは小児肺炎球菌は肺炎、中耳炎、髄膜炎の重症化を防ぐためにワクチンを推奨しているみたいです。しかし、国立感染症研究所のHPをみると、幼児は肺炎球菌感染症の報告の中では肺炎や髄膜炎よりも菌血症の報告割合が最も高いとしています。また、2020年以降に幼児肺炎球菌報告数の主な減少は感染対策によるものとしています。政府の統計からも統計自体は2022を最新としてありますが、髄膜炎は1985年、肺炎は2020年を最後に死亡数のデータが無い=死亡原因のランク外になるほど主な死亡原因ではなくなりました。
2024年10月からファイザー社が製造販売するプレベナー20という幼児肺炎球菌ワクチンが開始されました。このワクチンは肺炎球菌90種類中の20種類のみに対応するワクチンとなります。プレベナー20の審査結果報告書からはプレベナー20は既に販売されているプレベナー13と同様の有効性と安全性であるとしており、プレベナー13は2年程の抗体持続性があります。プレベナー13の市販後副反応調査を見ると3ヶ月間の調査で複数の副反応重症報告があり、また副作用として肺炎になるケースもあるみたいです。
参考
厚生労働省HP 子どもの肺炎球菌ワクチン
国立感染症研究所HP 侵襲性肺炎球菌感染症の届出状況、2014年第1週〜2021年第35週
政府統計の総合窓口
厚生労働省資料幼児に対する肺炎球菌ワクチンについて
バクニュバンス添付文書
バクニュバンス審議結果報告書
プレベナー20添付文書
プレベナー20審議結果報告書
厚生労働省プレベナー13副反応疑い報告状況について
次回はロタについて調べた事をまとめます