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回復する人間〜誰にも言えない傷

今年のノーベル文学賞作家 ハン・ガンの短編集を手に取った。

7編のうち 
もし、あなたが傷を負った人間なら
どれかがあなたの傷に寄り添ってくれるだろう
そして、傷なんて癒えてもう無い!って思っている人も
知らない自分の傷に気づくかもしれない

余分な言葉が一切ないので、読む進めるには時間がかかるかも
途中、途中で自分の心と対話してしまうから

どれもこれも覚えておきたい言葉たち
それぞれの物語の中で見つけたものも添えておきたい。

〜〜明るくなる前に⭐️
大切な人を亡くしたウニ姉さん、
そしてウニ姉さんを大切だと思う主人公が
ウニ姉さんを亡くした後の再生〜最後の一文に光が見えた


〜〜回復する人間⭐️
わかりやすい作品だったし、好きです。
近しい関係であるが故に、こじれてしまったままで
相手がこの世から居なくなれば、もっと特別な心の傷となる
姉が逝ってしまった。

そして今、妹である自分は体に大変な火傷を負っていて、
ヒリヒリと心の傷と交差する。火傷の痛みってそうだよね。
傷が簡単に治るのも嫌。 姉は忘れたくない存在でもあるから。


〜〜エウロパ⭐️
離婚して傷を負ったイナと性的マイノリティーの僕との
愛してる気持ちと友情と。
すごく好きでした。イナがとても魅力的。
彼女は歌を歌うことによって回復していく。
エウロパとは、イナが口ずさんでいた歌だが、
文中の歌詞に勝手にメロディをつけてしまったのは
私だけではないんじゃない? リズミカルで🎶踊れそう
エウロパとは木星の衛星


〜〜フンザ⭐️
家計の全てを自分が
背負い込んで生きる母親の見た夢の地フンザ
夫を表す言葉に何も言えない。以下↓

固有の個性をと呼ぶしかない独特の鈍感さが、彼にはあり、諦念に近いその無感心さのおかげで、いかなる挫折も怒りも、そっとやり過ごして生きているように見えた。同時に、情熱や哀れみ、粘り強い深い愛情までが、苦々しげに淡々と、彼を通り越して消え去った

回復する人間より

〜〜青い石⭐️
おじさんと私の淡い愛情物語 
私がおじさんを偲ぶ時に語る言葉としての一文、これだけで伝わった。

寂しいときに、木を数える癖、照れ臭い時に手額を隠す癖も変わりません

回復する人間


〜〜左手
⭐️
男性が主人公の物語
勝手に意思を持って動き出した左手が起こす悲劇
ちょっと滑稽でもあって、だけど最後は切なくて悲しくて救いがない。

〜〜火とかげ⭐️
絵を描くことが全てだった主人公
事故に遭い、手が使えなくなってから何もかもが変わった。

私たちの平和は、私の健康を前提としたものだった。
条件が変われば状況も変わる。それは自然な過程だ。
毎日私があの事故で死んでいたら、
私たちの優しさは汚されずに済んだのだろうが、私は生き残った。
私はうんざりするほど苦しみ、私がうんざりすればするほど、彼もうんざりした。私にうんざりしている彼に対して、私もうんざりした。

回復する人間〜「火とかげ」より

そんな時、昔の友達から写真館に飾られていた一枚の写真
〜自分の写真の存在を知らされた。
誰?誰が撮った? 
それは、まだ手が元気だった頃の彼女の姿だった。

そして、写真を撮ってくれた人を思い出しながら、
生を受け継ぐまでの過程が素晴らしい。

私が彼と分け合ったのは沈黙だった。悲想でもなく、憂鬱でもない、ただの沈黙。

回復する人間〜火とかげ より

一番大好きな作品であり、
火とかげの意味を知ったことも嬉しい。永遠がキーワード。

街も社会も健康であるという前提で成り立っている。
それが基本ラインで、人々の心は動いてやしない?
健康の条件が崩れ去った時、虚しく散っていくものは何?

世の中には色んな傷を負っている人がいる。
心も体も 人には言えない押し殺したような傷を抱えている

私は不意打ちされた。


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