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ネバーホーム〜伊達男アッシュ

わたしはつよくてあのひとはつよくなかったから、わたしが国をまもりに戦争に行った。

ネバーホーム〜レアード・ハント 柴田元幸 訳

ひらがなが並んでいる書き出し〜訳者の意図を
戦争に行った女性の姿を想像した。
これは南北戦争時代の残された手紙を元にした物語だ。

女性の名は
コンスタンス・トムソン
夫と共に農場を経営している。
夫の名はバーソロミュー

2ヶ月間たっぷりと考えて出した結論が
夫の代わりの男として戦争に行く事だった。

コンスタンスは軍隊で
アッシュ・トムソンと名乗った。
1日が終わるとバーソロミューに手紙を書く
”わたしのいとしいバーソロミュー”

一方、バーソロミューの返事として
表現されていたのは以下。
感性豊かなバーソロミューの姿が浮かんでくる。

コトバを五つ書いただけで、よく知っている世界がいっぺんに息づく。
手紙を読むだけで秋のはじまりの香りがかげて
秋のはじまりの音がきこえた。

ネバーホーム 本文P14より


木の上で洋服が破れ
恥ずかしさで一杯のお嬢ちゃんに
上着をかけてあげたアッシュ。
以来、仲間は、伊達男アッシュと呼ぶようになり
その慇懃(いんぎん)な振る舞いから
大佐との交流も始まった。

アッシュの活躍は半端ない。
誰よりも弾を上手に撃てる。
子豚だってリスだって食料は任せておきな
威勢のいい時はこちらも爽快な気分になる。

だが、戦況のまずい時、
そして、とうとう負傷した後の
臨場感が伝わって来ると切ない。

手当をしてくれた女の裏切りで
ぶっ込まれた場所での
仕打ちには厳しく激しいものがある。

何でもありが戦争なのか?
そうなんだろう。きっと、今の戦争もそうなんだろう。

戦争は怖い。恐怖だと心底思った。
アッシュの心の疲弊が自分の心の疲弊と重なる。
戦争は人の心を
尊厳を奪ってしまうんだよ。

それでもコンスタンスには
愛するバーソロミューがいる限り。。だ。

捕まった先から
やっと逃げ出して向かったのは
裏切った女ニーヴァ・サッチャーの家だ。
ニーヴァのお気に入りの磁器のポットの
欠片が宙に舞い上がるほどに
粉々に砕いた気持ちは十分過ぎるほど分かった。

そしてバーソロミューの
待っている農場へと帰っていく。帰りたいんだ。
途中、大佐の奥様の家を見つけるのは偶然?
二人で語り合う場面はとても好きです。
普通の感覚の人との語らいはホッとする。

コンスタンスの取り戻した感覚は以下の通り

わたしはバケツをひとつ見つけた。
涙でいっぱいのバケツ、バケツはもれていた。
まだもれている。わたしはそれまで、
目をちょっとうるませる以上泣いたことがなかった。

ネバーホームP197より

さて、農場に帰って来ると状況が一変していた。
バーソロミューが守りきれなかったものを
取り返そうとするコンスタンス。

コンスタンスがアッシュと名乗った意味もわかった。
アッシュとはトリネコ〜木の名前だった。

切ない最後に思ったのは、
コンスタンスは、アッシュとして
戦争の傷を負ったままで、
そして、それは癒えるんだろうかってこと。

Never home~家なんてない。。

たどたどしい、ひらがな言葉の中で、
ハッとするような感性の表現だったり
あっちこっち辻褄がどうなってんの?
って言う感じも
全ては読者の捉え方に任される物語です。

柴田元幸さんの訳本が好きです。

そして戦争映画を感じながら読了。

名画「ディア・ハンター」の
クリストファーウォーケン演じるニックが
ロシアンルーレットで
心が壊れたことを思い出しました。










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