清少納言『枕草子』には「あいつの服クソダサ」なんて暴言も!?歴史嫌いの編集者が作った『やばい日本史』
城の跡地を見に行く面白さが分からない
――この本を企画したきっかけを教えてください。
きっかけは、著者の滝乃みわこさんとの雑談です。滝乃さんは、日本史がとてもお好きで、歴史に関する本を多く執筆しています。そんな滝乃さんと『やばい日本史』とは別件で、何度か地方へ取材をご一緒する機会があったんです。その際に、滝乃さんが「これから城の跡地を見に行く」とおっしゃっていたんです。私が「城の跡地って何があるんですか?」と尋ねたところ、「城そのものはないけれど石垣の跡が残っている」と教えてくださいました。正直私はその石垣を見ることが楽しいものとは思えなかったんです。けれど、滝乃さんは「歴史の知識があると、ただの石垣も歴史の断片を感じられるとても楽しいスポットになる」とおっしゃっていました。
私はそんな滝乃さんをうらやましいなと思ったんです。というのも、私は学生時代からとても歴史が嫌いで。高校では日本史を選択していたのですが、勉強するのだるいな~といつも思っていたくらいなので(笑)。その通り、滝乃さんに伝えたところ、「じゃあ金井さんでも分かる歴史の本を作ろうよ!」と言ってくださって。このことがきっかけで生まれたのが『やばい日本史』です。
卑弥呼のすごさを現代で例えると?
――『やばい日本史』は、その人物の偉業となる「すごいエピソード」と、欠点や失敗を集めた「やばいエピソード」が交互に繰り返されている構成になっています。『やばい日本史』を編集する上で意識していたポイントはありますか?
一番は、歴史上の人物を身近に感じてもらえるようにすることですね。まず、この本を作るにあたって私自身が歴史をなぜ好きになれないのかを考えてみました。その理由は、時代が違うため、当時の感覚や文化が分からないので自分の身近に感じられないことではないかと考えました。
例えばですけど、卑弥呼が邪馬台国のみならず、日本のほかの国々もまとめて女王になったと説明されても、そのすごさがよく分からなくないですか? 私はこの卑弥呼のすごさが全然わからないと正直に滝乃さんに言ったんです。そしたら滝乃さんが原稿にこう付け足してくれました。
私はこれを読んで、「あっ卑弥呼は他の人とまったく違うビジョンをもっていた人なんだ」と感じたんです。このように「現代の言葉で例えてもらうこと」によって偉人がどれだけすごいかが理解しやすくなると思いました。なので、このように子どもでも分かりやすいような現代っぽい例えはたくさん入れてもらえるようにしていますね。
――「やばいエピソード」をどのように選んでいるか教えてください。
「やばいエピソード」は、とにかく面白いかどうかで選んでいます。著者の滝乃さんはもちろん、監修の本郷和人先生にもなにか面白いエピソードはないですかと話を聞いて、いくつも候補を出してもらいました。
そのようにエピソードを集めた上で、歴史の前提知識がないと面白さが分からないエピソードは外すようにしています。例えば、「この身分なのにこんなことしちゃってる!」みたいに言われてもよく分からないと思うんです。なので、例えば「うんこを漏らす」とか、「太りすぎて死にかける」とか、子どもがとにかく面白いと思えて、ぱっと分かりやすいことを基準に選んでいます。
清少納言はめちゃくちゃ性格が悪い
――「やばいエピソード」はただ読んでいるだけでも楽しいですし、新しい発見がありますよね。『やばい日本史』の中で金井さんが一番お気に入りの人物はいますか。
迷っちゃいますけど、清少納言ですかね。実は清少納言ってめちゃくちゃ性格が悪いんですよ。
――あっ! 私も清少納言のエピソードはいいなと思いました。今NHK大河ドラマでも取り上げられていますけど、この性格の悪さは知らなかったです。
そうですよね! 清少納言が書いた『枕草子』は、綺麗な部分しか教科書には載っていなくって。枕草子は現代でいうエッセイなので、結構本音がぶっちゃけられているんです。例えば、あいつの服ってクソダサいよね(笑)とか言っていて……。私はそんな清少納言ってとても面白いなと思いました。平安時代から人間の本質はどんどん変わっていったように錯覚しがちなんですが、結局今になっても変わっていないことを実感できたんです。そんな風に「人間の本質」が普遍的であることを感じられるので、清少納言のエピソードが一番お気に入りですかね。
読者がつまずくところには「転ばぬ先の杖」を!
――「やばいエピソード」以外にも、年表や漫画解説、人物相関図が組み込まれています。なぜこれを組み込んだんですか?
これらは読者がつまずきそうなところには転ばぬ先の杖を置いておきたいという意図から組み込んでいます。特に相関図は、画期的に分かりやすいなと思っています。元々は著者の滝乃さんに私が質問をしていたら、人物の関係を説明するために作ってくれたものなんです。戦国時代でいえば、意外とある人物同士が知り合いということって結構多いんですよね。具体的にいうと、滝乃さんが徳川家康は織田信長より年下で、上司と部下みたいな関係だったと言っていました。このように時代背景とともに、人間関係を知りながらどういう状況でこの出来事が起きたということを理解しながらだと、学びやすいんですよね。なので、この相関図は特に書いていただいてよかったなと思っています。
――では最後に『やばい日本史』をどんな人におすすめしたいか教えてください。
歴史が好きな人だけではなく、勉強が苦手だったり、成績が良くなかったりするお子さんに読んでほしいですね。成績を上げることももちろん大切ですけど、「知らないことを知る楽しさ」を体験する踏み台として、この本を使ってほしいです。
『やばい日本史』は教科書ではないので、読んだだけでは学校の成績が直接的に上がることはないです。けれどこの本を通して、歴史を面白いと思ってもらえれば、歴史を学んでみたいという意欲に火をつけることができると思うんです。そういう用途として、ぜひおすすめしたい一冊になっています。
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