図1

「Apple、液晶重心」から

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三点に注目したい 
 1. 要は〇〇が欲しい。
 2.スマホ事業としての収益最大化
 3.スマホの次を生み出すための、組織の仕組

関連代表記事 日本経済新聞 2018/11/6 18:10
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO3743278006112018TJ1000/
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A OLED(有機EL)は紆余曲折を経てきた。ついに、OLED時代の幕開けかもしれない。困難であった量産での製造安定化なども解決している。コスト面やさらなる機能性など開発課題は多いが、今までの歩みからみれば「乗り越えられる壁」であり、たいした障壁ではない。


B スマホでは、例えば、iPhone XS、Pixel 3、Galaxy Note 9、AQUOS zeroなどにOLEDが搭載されている。今回、アップルは主にコスト面からiPhoneXRのディスプレイをOLEDから液晶に戻している。OLED採用によるコスト増は事実であり、10万円を超えるスマホの位置づけが、事業戦略の方向性をわけるため。買い替えを促すのか、新規技術で顧客をとるのか。


A OLEDのプラス因子は複数ある。その根源は発光原理が自然面発光であること。これにより、薄い・曲がるといった特性や、黒色の質といった面が見えてきたりする。気を付けるべきは、OLEDという付加価値、はそこまでないということ。


B 一部の消費者が新しい物好きなわけであり、「OLED搭載」といった最新情報に飛びつくが、多くの消費者は「OLEDだろうが、液晶だろうが、そんな名称は関係ない」という状況。消費者はOLEDが欲しいわけではなく、例えば「1週間充電レスで使えるスマホ」が欲しいわけであり、例えば「スマホなのに、まるで大画面で見ているように、綺麗に動画を楽しめる」デバイスが欲しいわけである。決して、OLEDが欲しいわけではない。


A 要はセグメント論であるが、年代とか性別ではなく、「消費者は要は〇〇が欲しい」というカテゴリで切ったときに、どこがボリュームゾーンで、どこが空白地帯で、どこが成長域で…と把握しておく必要がある。特に、先進国での買い替えを促すのであれば、多くの機能が提供されている現状に対する不満を、効果的に吸い上げられているかどうかが重要になってくる。


B スマホについては、スマホデバイスとしての限界はそろそろ近いだろう。道案内しながら街情報を提供するとか、未来のEVと連動させるとか、日常健康情報を健康増進につなげるとか、脳波等でコントロール可能にするとか…このような進化は容易に描けるが、スマホはスマホであり、インターフェースデバイス以上でも以下でもない。スマホとしては、液晶⇒OLEDにより、パンツの形を崩さない位薄くするとか、あまりに軽くて落としても衝撃が少なく破損しないとか、言ってしまえば、想像できる範囲での進化で収益最大化を目指すフェーズだろう。平行して、スマホの次のデバイスを生み出す取り組みが重要になってくる。


A 漫画的に考えれば、腕時計のようなデバイスやゴーグルを介して、素敵な女性(男性でもよい)が現れ道案内をしてくれたり、目的物を立体で空中に表示してくれたりする世界がある。空中に像を結像させるでもいいし、MRのように現実と仮想を合わせこんでもいい。いずれにしても、このような世界観は圧倒的にスマホより便利である。相手の顔や全体像を見ながらハンズフリーでリモート会話したり、会話しながら電子資料を提供しあったりと容易になる。百貨店などに入れば、各店や商品の情報が自動で表示され、気になった「背景」を指定していくと、製造現場などの見学申し込みなどもできる。すれ違う通行人に対して「いいね」をする世界だって直ぐに来るだろう。


B スマホというものを中心に見た時に、液晶・OLED・QLED…といったディスプレイ原理の軸があり、コンテンツ戦争の軸があり、ブランディングの軸があり、LeapFlog的新興国展開の軸があり、周辺機器との連動性とい軸があり…そして、スマホの次という軸が既に存在している。経営として考えると、スマホ事業での収益最大化を目指しながら、スマホの次で覇権をとるように動く必要がある。ここで問題になってくるのは、スマホ事業vsスマホの次事業との衝突。


A スマホ周辺のエコノミーを成熟・深耕という事業であれば、スマホ事業とは常に相乗するので、仲良しとなる。一方、スマホの次事業の場合、スマホ事業からみればアンチ事業部的位置づけになるため、その組織の全社的意義の浸透や、責任者の配置方法、責任者のコミット方法などが、組織運営効率に大きく影響してくる。これが、開発競争の力を左右してくることになる。経営幹部の振る舞い方が重要になる局面でもある。 


B 近年、新規事業創出に対して「自由な発想で」という方向性を強く打ち出すも、その発想を事業にまで飛翔させる仕組の欠如した企業が多いように感じる。多様性といった流行文句を言葉だけでとらえ、自由な発想をだれでも!と気前のいいふりをするも、出てきたアイディアを叩いて潰してしまうか、出てきたアイディアを育成する仕組がなく干からびさせてしまうか。仕組というのは本当に重要だがサボりがちな部分に相当する。企業自体が虚構的役割のため、組織の成員の気持ちと行動をコントロールする術をデザインし導入しておかないと、せっかくの未来を牛耳るアイディアが、腐敗することになってしまう。

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