「XR(X=A,M,V)の用途」から
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3点に注目したい。
1.ニッチ側、XR以外のデバイスを無視しやすい状況
2.本質は、行動変容。これにより、新たな市場が湧き出る。
3.怪我を刺激的にも視覚的にも、リアルに。
DIYを、誰でも簡単にハイスペックに。
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A VR, AR, MRなどのXRは、消費者の行動様式を変容させることが可能である。EVも同様であり、単なる電動化や自動化ではなく、消費行動そのものの変容が本質である。スマホ前と後を考え見てほしい。XRはそれと同じようなインパクトを持つ。
B グローバルAR/VR市場(ハードウェア、ソフトウェア、関連サービスの合計)は、2017年の140億ドルから2018年の270億ドル、2022年の2,087億ドルへと、CAGR71.6%で高成長すると予想されている*1。2022年予想でみると、最大の領域は一般消費者向けであり、530億ドルと予想されている。続くのが、小売業、組立製造業、輸送運輸業であり、これらの合計が560億ドルと予想されている*1。
A XRが当然化した世界を構想し、そこに向けて戦略的に製品を投入し、エコシステムを作り上げることは重要である。一方、巨大市場への欲が出てくるのも当然であり、ニッチ側が無視されやすい状況でもある。また、XRデバイスやシステムという手段が目的化し、本来必要な他の機能やプロダクトに目がいかないという現象も起こるだろう。
B 私が面白いと思っているのは、労災防止である。モノづくり企業にとって労災防止は超のつく重要テーマである。熟練工が減り、自動化が進む中で、ピンチポイントや危険源を本当に把握している者が減っていくという未来がある。ここに対して、XRを利用した体験やマニュアルなどを導入する試みは既にある。私が目指すと面白いと思っているのは「仮想での怪我の体験」である。XRでリアリティある「怪我」をし、「別途構築する刺激システム」により怪我はしないがしっかりと記憶に焼き付く痛みなどを与えていく。
A 痛みや恐怖感をリアルに把握している人は、安全感度が飛躍的に上がる。XRに加えて、刺激や風、音などの五感をさらに刺激するデバイスを併用することで、リアルと仮想の境目がぼやけてくる。ここまでやると、「恐怖感」がうえつき、安全感度が上がり、抑えるべきポイントを押さえ、抑えなくてもいいポイントが主観としても明確化し、効率の高い安全維持が可能となるだろう。
B もう一つ思うのは、「裁縫」のような分野である。もっと大きく「DIY」でもいい。例えば、日本のクラフト市場(編・織物、趣味工芸、洋・和裁、日曜大工、書道など)の規模は約8,500憶円とされる*2 。DIYは盛んであり、これにより客層も大きく変わってきている。ホームセンターの売上高は4兆円弱で2004年頃より横ばいだが、ホームセンター数は2009年頃より上昇に転じ、2017年には4,760店舗に到達している*3
A 家のリフォームでも、洋服のお直しや手作りでも、「解説困難」である分野である。文字や図を駆使し分かりやすくなっているのだが、消費者層がDIYのように大きく変わっているフェーズを考えれば、「誰でもわかる」「より専門的にわかる」状況を簡単に作り上げることには、大きな価値がある。これはXRの得意技である。
B 実際の作業者目線であったり、感覚的に指でなぞってプロが把握している裏側の映像などを、XRで体験できるようにするのは、有効だろう。特に、リアルと仮想を重ね合わせながら作業するとか、所定の瞬きに応じて映像が切り替わるとか、実際の使用環境に応じたユーザビリティが重要になってくる。当然、作業性に影響を与えないような軽さや装着性が必要になる。
A 労災防止目的の怪我の体験というのは、安全活動の結果を良好にし且つコストを下げられる。利用者の目線や筋肉の動きをモニターすれば、その体験者が何を感じているかといった情報も取得できる。感覚から情報ベースの安全活動へとシフト可能であり、訴求度は高い。
B 一方の裁縫やDIYというのは、「深く好きな人」がいる分野であると同時に、幼稚園で使う手提げ袋を自作するといった「半強制で必要性に迫られる人」のいる分野である。アーリーアダプターの把握と、彼ら・彼女らとの改善学習プロセスを高速で回しやすいという特徴がある。難しいと思っていたことが簡単にできるようになると、人の行動は大きく変わる。素人が第一歩を踏み出すのもそうであるし、慣れた人がプロ・職人に近づくのもそうである。DIYを加速させるというのは、市場を形成している作業である。また、壊れたら捨てる世界とは路線が異なり、地球環境的な意義も大きい。
A ゲーム、不動産、エンタメ、ファッション、マニュアル・・・などにXRを利用するケースが非常に多い。XRというのは人の行動を変容させるものであり、この行動変容により「新たな市場が湧き出る」分野である。人の行動がどうかわるのかをしっかりと考えていく必要がある。現在ニッチに見えても、行動変容により「化ける」市場も多数あると考えられる。
*1 IDC Worldwide Semiannual Augmented and Virtual Reality Spending Guide
https://www.idc.com/tracker/showproductinfo.jsp?prod_id=1381
*2 ホビー白書、一般社団法人日本ホビー協会
*3 日本DIY協会
http://www.diy.or.jp/i-information/association/jigyo/transition.html
/2018.01.24 JK