「中国、スタートアップ紅い奔流」から
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三点に注目したい。
1.エコシステムを体感しモノにする
2.組織としての仕組(人財育成)
3.構想力
関連代表記事 日経新聞 2018/10/17
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO36574820X11C18A0MM8000/
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A 中国のスタートアップ生成のペースが更に加速している。CB insights*1によれば、ユニコーン(10憶ドル超)の数はまだアメリカには及ばないが猛追している。アメリカが120社弱であり、中国が80社強である。時価総額上位十社*1のトップ10の内訳をみれば、半数以上が中国企業である。
B 北京、上海、杭州、深セン…中国を代表するスタートアップ集積地である。特に深センは、そのエコシステムの性質や、対シリコンバレーという構図で多くの分析がなされている。現在、習近平は製造2025・一帯一路という必達構想をドライブしているが、中国の技術力という面でみると、AI特区*2が存在している。即ち、深セン=ヘルスケア、杭州=スマートシティー、合肥=音声認識、北京+雄安=自動運転というAI開発の拠点化である。
A 中国のスタートアップ創出力について、多くの意見が展開されている。例えば、国が私企業と強く繋がる新しい資本主義であったり、中国自体の市場性であったり、余剰資金であったり、国民の欲求ステージであったり、或いはセーフティネット…といった形で。
B 日本の場合、未だに「中国を下」にみるケースが多い。日本の黄金期という歴史で培った印象を非常識にも、未だに引きずっている状態でありみっともない。中国人は横暴であり、出来上がる製品は粗悪品、農産物は農薬まみれ…といったところか。このような過去の記憶でステレオタイプを形成し、そのメガネを通してしかモノを考えられなくなるのは、非常に危険である。
A 日本に入ってくる繊維(服)のどれほどの割合を中国で、製造しているのか。中国で作られるハイテク機器の生産管理やスペックがどのようなものか。農作物はどうか。自分でみて考えないと、どれだけエコシステム分析をし学ぶべき点を洗い出しても、日本に導入すればまず機能はしない。
B 例えば、メーカが「ちょっと、深センでも利用しようか」といった態度をとるが、これでは利用もなにもない。待ち受けるのは、やっぱり使えないという結果であり、真実はまったく使いこなせていないということである。深センのような地区は重要であり、そこの文化やネットワーク含めて、肌で感じ、溶け込み、その上で、自我流に修正していく必要がある。例えば、1週間の出張などはナンセンス。やるのであれば、若手エースを2年間駐在させるくらいの意気込みが必用。
A 駐在させて、現地の言葉で、現地の文化で生活させる。裁量権は事前にしっかりと移植しておいて、多くのことは現場判断で即決可能にする。上司に確認しないと…では話にならない。定例での報告は事前に設計しておき、本部処理が必用なものも、電子媒体提出から返答・返送までを1,2日で回転できるように、事前に仕上げておく。
B 深セン、杭州、合肥、北京…あたりには、駐在組を配置してよいと思う。それぞれの文化とエコシステムを肌で感じ、やり方をしり、ネットワークを広げ、グローバル基準で物事を考え行動できる人財を作り上げる。そして何より大事なのは、戻ってきた社員が「活躍できる=活躍したくなる」場所を「事前に」作っておくことである。戻ってきたら、旧来の常識の範囲内でしか行動できず、印鑑リレーで束縛されるようでは、まったく意味がない。
A このような仕組みを作りながら、同時に、構想の力を鍛え上げる術を考える必要がある。日本でもスタートアップが増えているが、その狙いの小ささが気になるケースが多い。自由に楽しく働きたい=起業というケースも多い。半ばノリだけで起業しているケースであったり、自己満足やあまりに目の前しか見えていないケースも非常に多い。未来への飛翔というのか、拡がり、展望、期待度…が弱い。これは構想力の欠如が原因である。
B 理念の重要性をやはり感じる。実現した最終的な世界観や世界像である。人々の行動や生活がどう変化し、みながどうやって笑い合っているのか。それがどのような原理で、どのようなサービスやモノを通じて回転しているのか。構想をヴィジョンとして共有可能にし、それを実現するための戦略論へと展開する。この順序をとっていれば、いまは、1つの微小パーツを手掛けていても、それは大きな構想実現の1部であるとすぐにわかり(わかるように説明でき)、期待度が一気に上がる。
A このような面でも、日本から外に出た方がよい。中国を見て、イスラエルを見て、アメリカを見て、フランスを見て、インドをみて。発想にかけられた制限を取り除き、自分の性質をもって作ることが出来る新たな構想を練り上げられるようにしていく。経営者として考えれば、中国などの重要地域をフル活用し新たな事業を創出するために、自社の人財を長期的にコミットさせて、同時に育成できるような仕掛けを作り上げる必要がある。
*1 CB insights https://www.cbinsights.com/research-unicorn-companies
*2 UBS REPORT http://japan1.ubs.com/am/microsites/china-insights/pdf/0810_China+City3.pdf