「歯磨き」から
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3点に注目したい。
1.ITの巨人でも採取できない豊かな情報
2.日常生活の中には非効率が溢れている。
3.歯磨きの進化・代替は「今更」ではない。
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A 日常生活の中における「非効率な行為」や「労力のかかる行為」というのは、ビジネスの種になるりうる。私がよく思うものの一部を列記する。
・歯磨き
・洗濯
・お湯が出るまで時間がかかる
・洋服や本の整理
・シンクや風呂場の掃除
・キッチンの油汚れの掃除
・床周辺の掃除…etc.
床周辺の掃除であれば、「自動化」されてきている。洗濯も自動化が進んでいる。風呂場やシンク、あるいはキッチンでいえば、「汚れない工夫」「汚れを落としやすい工夫」が技術的に導入されてきている。ここに自動化が入るのだろうか?
B 例えば、直径100㎜程度の円盤状ロボットで、壁面に吸着しながら素早く移動可能な形態はどうだろう。吸着機構の周囲ではブラシが回転しており、シンクやキッチン面を自動でブラッシングし、汚れたら指定場所でブラシを洗浄し、自動で掃除を続ける。
A 私が特に気になっているのは、「歯磨き」。これには2つの側面がある。
(1)子供の歯磨き(親が子どもの歯磨きを代行する作業や、いつまでも子供が歯磨きを終えず遊んでいる状況)は、親にとって過負荷であるケースが多いという事。
(2)歯磨き自体が非効率である。歯磨きにより「手」がふさがる。
B この2つに対してはそれぞれソリューション化ができるし、時系列で考えれば、(2)の方が包括的な対策になる。
A 子供の歯磨きであれば、例えば、未決課題として、子供が率先して歯磨きをしない状況が挙げられる。顧客の顔は明確であって、子供の歯磨きにイライラしている親である。根底には、歯磨きが楽しくない(する意味がよくわからない、もっと楽しいことがある)という課題が潜んでいるのだろう。これに対して、ゲーミフィケーションを導入できるだろう。イネーブラーとしては、歯ブラシに付ける3次元センサーとディスプレイで行うゲームの連動である。
B 子供の歯磨き状態を、原点座標からの変異として読み込み、これをゲームに反映させると、非常に面白いと思う。ゲームをクリアするには、自然と、歯の表や裏、右や左、前や奥…を満遍なく磨く必要がでてくる。子供にとって楽しいイベントとして歯磨きを位置付けていく。
A 歯磨き自体が非効率であるのは言うまでもなく、ここに対しては、「全自動歯磨き」の検討が進んでいる。早大の石井准教授とGenicsがマウスピース型の全自動歯磨きを開発したとも報告されている*1。マウスピース型は理想的であり、食後にパクッと咥えると、両手が空いた自由な状態で歯磨きが完了する形態である。
B 開発された全自動歯磨き機では、「手磨きと同様のレベル」を達成できるという。私であれば、ここでは止めない。歯磨きが必要な理由は、虫歯抑制や口臭抑制を代表例にした口の健康を健全に保つことではないのだろうか。現状の「手磨き」で「十分」と誰が決めたのか?
A ここまで機械化するのであれば、口内環境をモニタリングした方がよい。これを経時的データとして把握し、口の健康を健全に保つことを目標に、「(全自動)歯磨き」だけでは足りない部分は、消費者のスマホにリコメンド情報をだしていけばよいと思われる。
B 口の中の情報を採取できる機会はすくない。このような情報は、ITの巨人企業でも取得できていないものである。折角、ゴリゴリの機械を口の中に入れるのであれば、口の中の状態を口の健康管理を目的に取得するところまで、踏み込むべきである。そうしないと、単なりカミソリの代替刃モデルのモノウリで終わってしまう。
A 採りたい情報の1つは、口内の唾液成分であり、口という平均的情報。2つは、口の中のマッピング情報(歯の表裏、どの歯、どこの歯茎…等)であり、マウスピースを利用してIRか何かで検知できないだろうか。サイズや機構的に技術障壁が高いが、無理と諦めるようなレベルではない。
B 全自動歯磨きと聞くと、「誰が使うの…」と思う方も多いだろうが、それは「手で磨く文化に慣れきっているから」だろう。圧倒的に便利であるし、食後に口をゆすいでマウスピースを咥える流れはそこまで不自然ではない。マウスピースから不潔さの「ふ」の字も想像できないようなデザイン性は、重要になるだろう。
A 一時期、「芸能人は歯が命」という見事なプロモーション戦略があった。この全自動歯磨き機の普及のためには、行動スタイル変化が必要なため、的確な消費者とのコミュニケーションが必用になる。
*1 ニューススイッチ 2019年01月09日
https://newswitch.jp/p/16000
/2018.01.09 JK