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私たちは「コロナで可哀想な世代」じゃない。デジタルハリウッド大学2023年度卒業制作展レポート。
2020年春。その年の新入生と保護者の皆さんに届いたのは、入学式中止のお知らせでした。
大きな節目である入学式を経験できず、春休みが続いているかのような心境のままオンライン授業がスタート。2年生の後半から3年生になるころに対面の授業が増え始め、そこからようやく大学生活が始まったと話す学生もいる——それが、「コロナ第一世代」と呼ばれる今年度の卒業生(主に学部16期生)たちでした。
しかし、「可哀想な世代」という世間からの視線に抗うように、各所で新たなサークルを立ち上げ、オンラインとオフラインの境目のない新たなコミュニケーションを模索し続けたのもまた、今年度の卒業生たちです。
次は私たちが影響を与える番。いろいろあったけど、
うちらは「コロナで可哀想な世代」じゃないよ。
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コロナ禍を乗り越えたDHU生たちは、4年間の成果をどのように表現したのか。「YEAHKYO!」(いい影響)をテーマに掲げた2023年度の卒業制作展。2日目(2024年2月10日)の会場の様子を、note編集部が総力取材しました。
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次は私たちが影響を与える番
今年度の卒業制作展も、3DCG、映像、Web、グラフィック、ゲーム、アート、ビジネスプランなど、多種多様な分野の研究・制作を行なってきた4年生の成果が集結しました。
ここからは限られた時間の中で、お話を伺うことができた学生の作品とインタビューを中心にお届けします。
作品を見て、頑張る力を与えられたら
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デジタルアート研究ゼミのオキナさんによる『Ann』は、パニック障害になった高校3年生の自分を題材にした作品。
自分の身体なのに自分でコントロールできず、電車や車などに乗れない。生活に支障が出るほど当時は苦しんでいたそうです。辛いことの方が多い人生で、それでも生きていくために頑張ってもがいていく。そんな姿を描きたくて、ドラムを叩く躍動感のあるアニメーションを制作しました。
DHUに通うため和歌山からひとりで上京し、さみしい日もあったと言いますが、そんなときはサークルの仲間と一緒に過ごして元気をもらっていたと言います。
オキナさんが与えたいYEAHKYO!は?
僕の作品を見て、皆が何かに頑張ってくれれば嬉しいな。僕は頑張れって言葉が好きで、頑張っている人も好きで、良いなって感じがするので。
誰にでも使いやすいものを、洗練されたデザインに
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『ONE WARE』は片手しか使えない人に向けて開発されたプロダクトです。「身近に片手しか使えない方がいて、食事の様子を見て『使いづらそうだな』と感じたことが作品の原点になりました」と語るのは、作者の杉山 伊吹さんです。
普通の食器は片手で使う人に親切ではないけれど、片手でも使いやすい食器を調べてみると、介護用の色が強く、素朴なデザインが多い——そこに課題を感じた杉山さん。ハンディキャップを持っていても楽しく食事をしてほしいと、『ONE WARE』の開発に至りました。
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機能性を重視しながら、いかにデザインを洗練し目に留まるものにできるのかを考えるのに苦労したと言います。「世の中のデザインにはすべて意味があるはずだけれど、決まった形にとらわれずに、いろんなデザインが生まれる世の中を作りたい」。そう今後の展望を語ってくれました。
杉山さんが与えたいYEAHKYO!は?
影響…うーん…難しいな。人にはいろんな特徴があるので、誰にとっても差が無く、分け隔てなく生活ができるようになったらいいなと思います。デザインを通して、もっといろんなデザインが生まれるきっかけになるような影響を与えられたらいいな。
コンセプトは“伝えられなかった言葉”
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「伝えられなかった言葉ってあると思うんですよ。たとえば好きな人に告白されたんだけど照れて返事ができなかったとか、お世話になった先生が異動しちゃうんだけど思春期で素直にありがとうって言えなかったとか。それが、私にとっては父への言葉でした」
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『少女』のコンセプトは“伝えられなかった言葉”。作者の宮本 真桜さんは、幼いころに父親と離れ、別れて暮らした経験をモチーフにドキュメンタリー制作に取り組みました。十数年ぶりに実際に父に連絡を取り、父の生きる地で11日間にわたり撮影を実施。あの頃を思い出す感覚で見てほしい、という思いから、ただ映像作品を作るだけでなく、ブラウン管、クッションなどを置いた部屋を再現し、部屋全体を作品としました。
「眠れない夜にスマホを思わずスマホをいじっちゃう、そんな感覚で見てくれたらいいなと思います」
宮本さんが与えたいYEAHKYO!は?
めっちゃ考えるけど…大義みたいなのって、映画とかには必要だけど、それに振り切りすぎると作品の本質を見失っちゃう気がしていて。お金を集めるためにはそういうのは必要だけど、作品のことを誰よりも考える監督という立場ではあまりそういうのを考えず、作品のことだけ考えていきたいかな。
これからもマスクが手放せなくなる?
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デザイン&プロトタイピングゼミの北方 優介さんが制作したのは『物理的成立性の高いデジタルコンテンツ向けハードサーフェスデザインの試み』。
コロナ禍によって、自身や相手の健康を気遣う目的から当たり前につけるようになったマスク。そしてApple Vision Proの登場によって、世の中に浸透するかもしれないヘッドマウントディスプレイ。多機能なマスクを身に着けて生活する人が将来的に増えることを予想して、北方さんはフルフェイスのマスクをデザインしました。
また、北方さんのフルフェイスマスクのデザインを踏襲し、ゼミの担当教員である星野先生がさらに未来のデザインを考案。北方さんと星野先生のコラボレーション作品も展示されました。
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北方さんが与えたいYEAHKYO!は?
一家に1台3Dプリンターがある時代にしたい。最近の3Dプリンターってスマホで簡単に操作できちゃうんですよ。データを投げて遠隔からでもプリントできますし、印刷に失敗したら通知が来て、スマホで止められる。面倒な設定がなくなりましたし、価格も下がってきたので、3Dプリンターを購入する人が増えてほしいなと思っています。
4人の共同研究が1つの映像作品に
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グループで制作された『warmth of steel hands』。メンバーそれぞれが研究テーマを持ち、技術研究を行いながら約7分の映像作品としてまとめ上げていきました。
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グループでの制作だからこその難しさもあったと語るのは、主人公とそれに関連する制作を担当した関口 知宏さんとShin Youngsuさん。4人での共同制作でしたが、4人の進捗が合わない場面もあり、重要キャラクターであるロボットの完成が間に合わないトラブルに見舞われたと言います。しかし、一致団結し徹夜で作業を続け、なんとか遅れを取り戻したのだとか。
ところどころ服が無かったり、動物に毛が生えていなかったり不完全なところがあるという2人ですが、すでに目線は未来を向いています。「3月8日に原宿で展示があるので、それまでに完成版をみんなで頑張って作ろうと意気込んでいます」。
関口さんが与えたいYEAHKYO!は?
自分は「こういうのが好きだ!」っていうのがはっきりしているなと思っていて。この作品みたいに、獣人と呼ばれる動物のキャラクターがすごく好きなんですよ。今は獣人でアニメ調の作品が多く作られているので、リアルな、ディズニーのズートピアのような獣人を流行らせたい。自分がインフルエンサーになりたいなと思っています。
Youngsuさんが与えたいYEAHKYO!は?
他の人に「こういう作品を作りたい」「3DCGを学びたい」と思ってもらえるような作品を今後作りたいです。後輩たちが私たちのような新しい分野に飛び込めるような影響を与えたいと思います。
罪を受け入れ、やり直すことの重要性を伝えたい
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映像作品『罪咎-zaikyu-』のテーマは、「逃した罪から逃げ切ることによる恐怖・不安」。さらに、逆説的に罪を受け入れやり直すことの重要性を伝える映像作品に仕上がっています。作品の舞台となるのは、とある高校。夜の学校に閉じ込められてしまった高校教師が、生徒と協力して脱出を目指しますが、さまざまな怪奇現象に見舞われる中で失われた記憶が呼び起こされ——?
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撮影期間が1週間しかなかったうえに、最初はメンバー間の連携も上手く取れずスケジュール管理が大変だったと語るのは、カメラマンの小川 葵さん。絵コンテを組みなおし、まとめて撮れるカットが無いか、休みを返上して進行できないかなどを検討しながら、なんとか期日までに作品を仕上げていったそうです。
自分の中のモヤモヤや、本来表には出したくない後ろめたい気持ちを表現できていれば嬉しい、と話してくれました。
小川さんが与えたいYEAHKYO!は?
広告の制作進行の仕事に就くので、クライアントの要望を可能な限り叶えて、良い映像、CMや広告を通じて素晴らしい商品、サービスを届けていけるようになりたいと思います。最近だとテレビ離れが大きかったり、市場が小さくなってきたりしているけれど、見る人に求められていることは今も昔も大きく変わっているわけではないはず。お客様第一で、良い影響を与えていきたいです!
性格特性「失感情症(アレキシサイミア)」がテーマのゲーム作品
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失感情症(アレキシサイミア)とは、感情の言語化の障害、また内省の乏しさといった点に特徴がある性格特性です。作者である林 大稀さんは、自身もこの特性を持っており、特性の認知度を高めることを目的にゲームを制作しました。
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ゲームはRPG形式。主人公以外のキャラクターたちが感情をなくしてしまう中で、主人公は音楽を通して「こういう感情を伝えたいのではないか?」と登場人物の感情に向き合い、キャラクターたちが失感情症(アレキシサイミア)になるきっかけとなった悪い神様を倒すことを目指します。
幼いころからゲームや音楽が好きだったという林さん。好きなものの多さゆえに、DHUに入ってからも「自分は何が好きなんだろう」と悩むこともあったそうです。しかし、DHUで幅広い学びを得る中で「人を楽しませることとゲームが好きだから、ゲームで表現ができたらいいな」と思うようになり、卒業後はゲームプランナーとして働くことが決まりました。「有名な作品を作り、日本のゲーム市場をもっと大きくしたい」。そう未来の展望を語ってくれました。
林さんが与えたいYEAHKYO!は?
見た人を、あなたを笑顔にします!コロナ禍にはVTuberとして配信をしていたんですが、そのころもこの作品を作っていたときも、必ずハッピーエンドになってほしいなって思っていて。いろいろ悩みを抱えたし、つらい経験もあったけど、最終的には君を笑顔にしたいんだって思って作っていました。やっぱり、人を楽しませたいかな。
圧倒的な芸術には、ルールなんてない
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「僕たちは、圧倒的に芸術的なことをやっているんだから、ルールなんてない。それが僕の言いたいこと」。そう話すのは、映像作品『逆説』を制作したDO ANH KIETさんです。
物語は、「〇(丸)」を宗教的に崇拝する学校を中心に展開していきます。「〇」とそれに関連するすべてのものが崇拝される場所の中に現れた、「△」を愛する者。異端者ともいえる彼が物語のキーとなり、作品は急展開を見せていきます。
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コロナ禍でなかなか学校に足を運べず、映像制作のアルバイトに力を注いでいたというDOさん。しかし、制作において自分のアイデアを伝える機会はあまりなく、団体のルールや道理ばかりが優先されることに違和感を覚えたと言います。
「〇の中に入ったら、〇のルールで生きなければいけないというのが一般的なルールだけれど、あえて異端者になることを選び、ルールを破ってみてもいいと思う。そのほうが、後悔がないと思うから」。そう話すDOさんの表情からは、DHUの4年間を悔いなくやりきった様子がうかがえました。
DOさんが与えたいYEAHKYO!は?
影響、ですか。アーティストとしては、もっともっとクリエイティブな影響を与えたいな。僕はcompetitiveが好きだし、人の作品を見るのが好き。すごいねって思うし、もっと応援したいと思うから。応援されたらもっと頑張ってすごい作品を作りたいと思うし、努力すれば絶対に作れるって考えを持てるはず。
広東語を未来に残すため、楽しく学べるWebサイトを
張 敏徳(チョウ ビントク)さんは、多くの⾹港⼈の⺟語である広東語が近い将来消失する恐れがあることに課題感を抱き、保護活動の⼀環として『広東語文化発信プロジェクト 廣東道 -カントンロード-』に取り組みました。
より多くの人に広東語を知り、興味を持ってもらうこと、知っている⼈も新たな発⾒があることを目指し、楽しめるWebコンテンツを制作したと言います。
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『廣東道 -カントンロード-』のサブタイトル通り、Webサイトはネオンサインのようなイラストが描かれた道となっており、立ち並ぶお店などをクリックすると、広東語と日本語の意味が表示されます。
面白いのは、選ばれている熟語。たとえば「大檸樂(ダイ・レン・ロッ)」は直訳すると「大きなレモンコーラ」ですが、コミュニケーションの中では「非常によくない状況にある(≒やばい)」の意味を持っています。
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言葉から直接的には意味が結び付きにくい、広東語にある⾯⽩い熟語や慣⽤句を中⼼的にイラスト化したという張さん。面白おかしく学びながら、興味を持ってほしいと話してくれました。
張さんが与えたいYEAHKYO!は?
そんな深い質問してくる!?(笑)ひとつすぐ思いつくことを話すと、個人的にゲームとか楽しいことが大好きで。やっぱりワクワクした方が世の中も明るくなるから、作品も楽しく感じられるものを作れればなと思っています。
自分の眠りを見つめ直すきっかけに
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アートディレクションゼミの米沢 絵梨香さんが制作したのは、眠りをテーマにしたイラストレーション群『本能』です。
睡眠の時間が好きで、いろんな眠りがあることを知ってもらうために春眠、夏眠、秋眠、冬眠などをオリジナルのイラストで表現。春眠や冬眠はよく聞く言葉かもしれませんが、たとえば暑さや乾燥が苦手な生物が夏季に休眠することを夏眠と言うんだとか。ほかにも、安眠やレム睡眠、ノンレム睡眠など、色彩豊かなイラストが展示されていました。
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米沢さんが与えたいYEAHKYO!は?
ただ寝るだけではなく、いろんな眠りを知ってもらいたいな。あと、自分の眠りを見つめ直すきっかけにしてほしいです。
世のお母さんがもっとリスペクトされる存在へ
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マーケティング戦略企画ゼミの斎藤 萌さんの卒業制作は、『現代の母親の立場についてのリサーチと作品制作〜うちのおかん展〜』です。
自分のことを犠牲にしがちで、とにかく家族が一番な斎藤さんのお母さん。ふと振り返ったときに斎藤さんは、お母さんに「ありがとう」や「大好き」を伝えたのはいつだったか思い出せなかったそう。お母さんという存在が、自分の中で当たり前になっていることに気づきました。もっと感謝の言葉を伝えたい、たくさんの人がもっとお母さんをリスペクトする世の中になってほしい、そんな願いを込めて企画しました。
同級生にアンケートを取ってみると、ポジティブなイメージを持ちつつも「家事育児が大変そう」「結婚はしたいけどお母さんになるのはちょっと…」と本音を話してくれる人もいたそうです。
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斎藤さんが与えたいYEAHKYO!は?
制作を通して、今以上にお母さんが輝ける社会になってほしいなって。私の場合、22年間生きてきて、お母さんといろいろなことを乗り越えながら、生意気だった時期とかもあったりしたんですけど、私はこれからもお母さんの1番の味方でいたい。お母さんの娘で良かったって伝えていきたいな。
“集大成”ではなく“今後に役立つ”ツールを目指した
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映像制作の進行管理表『楽々管理book』を作ったのは、秋山 穂波さんらICTビジネスプランニング&プロデュースゼミの皆さん。映画を自主制作する人のために無料で配布することを目的に作られたのが本ツールです。
制作会社には各社独自の進行管理表がありますが、自主制作をする人がフォーマットから制作するのはなかなか難しいもの。そこで、誰でも使えるGoogle スプレッドシートを用い、スケジュール、予算などを一元管理できるフォーマットを制作したそうです。
DHUで“制作側”だけを経験していると、全体のマネジメントや予算管理の側面は見えてこないこともあり、このツールを作ったことで「こんな項目もあったほうがいいのか」と気づくことも多かったと話す秋山さん。ご自身もSNSコンテンツの制作会社に就職するそうで、「今後に役立てられれば」と語ってくれました。
秋山さんが与えたいYEAHKYO!は?
難しい質問だ…「影響」ですか…?なんていったらいいんだろう。私は私生活から派生してアイデアを得ることが多いので、自分が得た影響を、他の人につなげていけたらいいなって思います。私が就職するところは特に見た人に直接的に問いかけられるコンテンツを作っているから、買いたいと思ってもらえるような、ちゃんと影響を与えられるようなコンテンツ作りができたらいいな。
コロナ禍の影響で、新しい音を知ることができた
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サウンドエンジニアリングゼミに所属する大谷 大樹さんは『骨伝導イヤホンにおける高音質化のための外耳道音響特性の実験と通常のスピーカー・イヤホン・ヘッドホンとの利用法の差異 骨伝導の体感』という作品を制作。音の違いを体験できるブースを設営しました。
2020年4月に入学した大谷さんたち4年生は、入学直後からオンラインで授業を受けていた世代です。自宅で授業を受けているときだけでなく、寝ているときでさえ、1日中イヤホンをつけていた大谷さん。それによって外耳道炎になってしまい、耳をふさぐタイプのイヤホンの使用を控えるようになりました。
そこから鼓膜を介さずに音を聞ける骨伝導イヤホンと出会い、その使い心地や音漏れの少なさなどを知ることができたと言います。
大谷さんが与えたいYEAHKYO!は?
この作品で知らない音、新しい音を体験していただきたいなっていうのが、良い影響かなって。いつものイヤホンと違うんですよ。外の音も普通に聞こえるけど不快じゃない。いつもとは違う非日常な体験ができるのは良い影響かなと考えています。
多角的な視点を持つ人が増え、優しい社会になれば
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DHUの駿河台ホールに開店したのは、ある人物たちの罪を食材とし、コース料理が提供されるレストラン『食罪食堂』。来場者の正面には、食罪について噂話のように話すシェフが現れます。その話をもとに来場者は誰が悪かをジャッジ。そして、テーブルの上にある白いお皿に食罪が映写され、シェフによる情報がいかに切り取られたものかが明らかになります。
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映像表現実践ゼミに所属する白鳥さんと中島さんは、当事者の事情に配慮せず、SNS上に誹謗中傷コメントを投稿する人が数多くいる現代で、多角的な視点の必要性を感じてもらうために本作を企画しました。
白鳥さんが与えたいYEAHKYO!は?
昨日一生懸命2人で考えたんですけど、多角的な視点を皆さんに与えたい。それによって、アンチコメントを打つ手が減ればいいなって。それで傷つく人たちを少なくできるかなっていう。
なんか、人の立場に立って物事を考えようって結構言うと思うんですけど、それって完璧にはできないとは思ってて。結局そこに置き換えるのって、自分の経験とか価値観で見た時に、きっとこうだろうっていう推測しかできないって思ってて。今後もそういう発信というか、クリエイター活動をしていきたいなって思ってます。
中島さんが与えたいYEAHKYO!は?
私も同じ、2人でセットで!(笑)多角的な視点ってところで、相手の視点からどう思うかなとか、そういったところで思いやりが増えたらいいな。
私はこの大学生活の中では、結構自分がこう思うみたいなところを発信しがちな作品を作ってたんですよ。なので、この食罪食堂に関わって、 もう自分の意志だけじゃなくて、なんて言うんだろうな、 自分が伝えたいことを作品に入れて、それを受け取れっていうような作品ではなくって、何か考えられる作品、体験した人とか見た人がまた次の発想に繋げていけるようなのを作りたいなと思います。
もっと怖がってくれ、キモがってくれ
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映像表現実践ゼミの坪井 勇樹さんが制作したのは、公衆電話を舞台にしたインタラクティブなお化け屋敷『さとるくん』です。
密室の公衆電話で呼び出し音が鳴り、受話器を取ると「もしもし、ぼくさとるくん。きみの名前は?」。さとるくんとのお話が始まり、彼が徐々に近づいてきて最後は——、という体験型の作品です。坪井さんに話を聞いてみると、受話器の声の主は生成AIだったという驚きの事実。
体験者から聞き取った名前をさとるくんが覚え、「◯◯くんあそぼ」と呼びかけられる。体験者は、得体の知れない何かに感知されているという恐怖に襲われます。
坪井さんが与えたいYEAHKYO!は?
なんか作品の題材がポジティブじゃないですけどね!もう、もっともっと怖がってくれ、キモがってくれみたいな感じ。人を怖がらせたいって願望で作ってたんで(笑)。
喜んでくれる人がいる限り、ゲームを作り続けたい
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PCの前から来場者を離さないほど熱中させる、『POLY DEFENCE』を生み出したのは、ゲーム制作ゼミ名倉 康平さん、西尾 波留樹さん、山岡 恵大さん。
本作は、拠点を自衛するために防御設備を建設するタワーディフェンスゲームと、パズルゲームを組み合わせており、限られた5×5の拠点をいかに効率良く確実に守るのかを考える、戦略的なゲームなのです。西尾さんは「どんな年齢の方でも遊んでもらうために、ゲームをシンプルに設計するよう意識した」と、工夫したポイントを紹介してくれました。
名倉さんが与えたいYEAHKYO!は?
その、大したことは僕はできないんですけど、ゲーム作るのが好きで。僕の作ったゲームを喜んで遊んでくれる方がいるので、これから就職先でもゲームを作っていこうかなと。
自分のゲームで、誰かが楽しく生活できるように
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ホラーミニゲーム集『学校の怪談』は、ゲーム制作ゼミの三浦 大和さん、RAYNHARD MARCIELLO KEMALさん、菅野 寛登さん、松尾 耀太さんによる卒業制作。ゲームプランニングやプログラミングは主に三浦さんたち卒業生が担当。キャラクターデザインやBGMなどは他学年の学生に協力してもらいました。
4年生になって就職活動もしつつ、複数のミニゲームを作るのは非常に大変なことですが、1年生や3年生など学生の力を借りて、なんとか完成させたそうです。
新年度からゲーム会社で働くインドネシア出身のKEMALさんは「毎日それぞれの人が問題を抱えながら生活していると思うけど、私のゲームがあるから楽しい生活ができると思ってもらいたい」と一言。三浦さんは「自分の作品をプレイした人の感情を爆発させたい」と話してくれました。
三浦さんが与えたいYEAHKYO!は?
自分の作った作品とかで、 プレイしてくれた人に、なんていうか感情を動かすみたいな。エモーショナルエンジンフルドライブ、感情の起伏、ぶち上げていこうぜみたいな。爆発してもらえばいいかなっていうふうな気持ちですね。
KEMALさんが与えたいYEAHKYO!は?
私のゲームを通して笑わしたい。ほとんどの人がなにかに打ち込んで、毎日たくさんの問題があると思いますけれども、できるだけゲームをやったら楽しい生活ができるように。
編集後記
取材にあたったnote編集部は、2023年度の卒展をどう感じたのでしょうか。
note編集部 E.Y.
今年の卒業制作展のポスターは、“うちらは「コロナで可哀想な世代」じゃないよ。”という一言が印象的です。確かに、今回卒業生たちに話を聞いてみると、「通学時間がなくてラッキー、その分自分の好きなことに時間を当てられる」「オンライン上のコミュニケーションの取り方を学べた」「オンライン授業の方が自分に合っている」とポジティブに捉えている学生が多いように感じました。
デジタルハリウッドの学生であれば、社会人になってから在宅勤務をする人は一定数いるはずですし、たとえ出社しても遠方の人とオンラインでやり取りすることはあると思います。もしかしたら今年の卒業生にとってコロナ禍は、社会人になるための予行練習の時期だったのかも。それくらいたくましく、エネルギーあふれる学生が多い印象です。
note編集部 りほまる
2020年4月。思い返せば、私たちがnote編集部としてDHUに関わり始めたのもあの春でした。オンラインだけど、何を学んでいるかが学生や保護者に伝わるように。オンラインだけど、実践的な授業をしていることがわかるように。全ての活動や制作に「オンラインだけど」の枕詞が付き、オンラインであってもオフラインに負けないクオリティで、と各所で試行錯誤が為されていた時期でした。
あれから4年。気づけば、当時入学した学生たちは「オンラインだけど」の枕詞など必要のないほど自由に・なめらかにオンラインとオフラインを行き来し、どちらの世界も知っているからこそ生まれた作品を携えて、DHUを巣立とうとしています。
「うちらは『コロナで可哀想な世代』じゃないよ」。2023年度卒業制作展には、その言葉通り、前向きなエネルギーに溢れ、未来への希望が感じられる作品が並びました。4年間、親戚のおばさんみたいな距離感で関わらせてもらっていたわたしは、勝手に胸がいっぱいになりました。皆さんが入学したあの日から卒業制作展の日まで、大学を訪れるたびに素敵なエンターテインメントの世界に誘ってくれたこと、心から感謝しています。卒業するすべての皆さんの活躍を祈っています!
いかがでしたか?
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