畑でエビを育てる!?広まる陸上養殖
普通の養殖のイメージとは、だいぶ違う印象だよな〜
スーパーの生鮮食品コーナーには、ここ10年くらいで養殖の魚がめちゃくちゃ増えてきている。私の小学生の頃、養殖の魚って珍しいイメージがあったけど、今や養殖を食べることの方が多い印象だ。
特に、ハマチやカンパチなどは養殖魚のブランド化が進み、各地方でブランド化した養殖魚が売り出されているほどだ。今後も養殖魚の浸透が広がりそうな雰囲気がある。
そんな養殖の流れのなかで、面白い養殖の取り組みをみつけた。
なんと、「エビを海から離れた陸上で養殖」するという。
千葉県の房総半島に位置する鋸南町で昨年から始動した試みだ。
養殖するエビは食用としても広く使われる「バナエイエビ」。
日本では「むきえび」などに使用されることが多く、世界的に最も盛んに食べられているエビの一種だ。
そんな「バナエイエビ」を、なぜ陸上で養殖しようと思ったのか?
陸上養殖のメリット・デメリットについて調べてみた。
1. 環境面に配慮した陸上養殖
まず、陸上養殖で真っ先に思いつくメリットとしては、環境面への負荷の軽減が挙げられる。海から離れた陸上で養殖が行われるため、海の環境に与える影響があまりないのだ。
世界で広く食べられている「バナエイエビ」は世界でも養殖による生産が盛んなエビだ。
しかし、エビの養殖の拡大に伴って、マングローブ林の破壊や水質悪化の問題が大きな議論を呼んでいる。
エビ、特に「バナエイエビ」のような種類は、遠浅の砂地が養殖に使用される。この養殖場の確保に伴って、東南アジアでは多くのマングローブ林が失われた。
また、エビ養殖の活発化に伴って、水質も大幅に悪化することがしばしば問題となっている。
陸上での養殖は、これらの環境面の問題を解決する手法として期待されている。海の環境を汚すことのない、陸上養殖はまだ世界でも実現できていない重要な手法だ。
2. 供給の安定化にも陸上が最適
また、陸上での養殖は生産量の安定化といった意味でも、利点が大きいとされる。
海での養殖では、台風などの自然災害や水質悪化によって生簀(いけす)内の生き物が全滅することがある。
自然が相手の事象のため、仕方ない部分もあるが被害を受けた漁業従事者への影響は甚大だ。
一方で、陸上養殖では、これらの影響を最小化することが可能だ。
自然災害については、しっかりとした施設を建設すれば問題ないし、水質についても、濾過装置の管理によって生育環境を自由にコントロールできる。
水温調整によって、生き物の生育を早めることも可能だ。
様々な要因をコントロールできるといった意味で、陸上養殖のメリットは大きい。
3. 課題はコスト面
以上、見てきたように色々なメリットをもつ陸上での養殖だが、超えるべき壁もある。
1番はやはりコスト面だ。
海での養殖は、生簀の建造とエサ代という出費を乗り越えることが課題となるが、陸上養殖はここに水質・温度管理のコストが加わる。
水質・温度管理はかなりシビアな管理が必要な分野だ。
少しでも調整を間違えば、生簀の中の生き物が全滅することさえある。
これらの管理のために、支払うコストは海での養殖よりも多く、そのコストの高さがこれまで、陸上養殖の普及を妨げてきた問題でもある。
実際、これまでフグなどで陸上の養殖が試みられているが、現状は陸上で養殖された魚の方が値段が高くなってしまっている。
(克服しているのは、ヒラメだけ)
「バナエイエビ」の養殖は今年初めて出荷されたばかり、これからエビの陸上での養殖が広く普及していくのか、興味をもってみていきたい。
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