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【書評】躁鬱大学 坂口恭平

〈概要〉

誰にも言えない悩みだと思っていたのに、そうじゃなかった?! 31歳で躁鬱病と診断され、気分の浮き沈みの激しさに苦しんでいた僕がみつけた、ラクに愉快に生きる技術。
みんな、人からどう見られるかだけを悩んでいる。鬱のどうにもならない落ちこみ、自己否定をどう扱うか。
はたまた躁の周囲を疲れさせてしまうほどに過剰なエネルギーをどうするか。
自らの経験をもとに、ユーモアあふれる対処法を徹底講義

〈感想〉

精神科医が書いた精神障害への対処法は多く書籍化されているが、当事者が実際に躁や鬱にどう向き合っていくかについて書かれた本は少ない。
本書は、その希少な本のひとつである。
クリエイターとして活躍している著者は長年躁鬱病と闘い、そこから得た知見を読者にわかりやすく教えてくれる。

躁鬱病を病気ではなく一種の性質とみなし、躁鬱人としての生き方を追求していこうという著者の発想は、長年躁鬱病を患い、医師の言うことに従う、いわゆる「良い患者」として暮らしている私には目から鱗だった。
私は躁鬱病の波を抑えながら、安定して生きていくことを理想とし、そのためなら少々の我慢は仕方がないと考えていた。
しかし、著者は躁鬱人は非躁鬱人と元来違う性質を持つものと考え、「普通」の生き方を求めることをやめようと提言している。

躁鬱人の思考は、非躁鬱人のそれとは驚くほど違う。
非躁鬱人が大半を占める社会の中で、躁鬱人は窮屈な思いをして生きることが多い。それが積もり積もると、うつ状態になってしまう。
暮らしを多彩なものにしたり、人からお礼を言われるようなことをしたり、自分が心躍ることをしてみたり、とにかく自分のペースで生きていくことが安定に繋がるのだと認識させられた。

躁鬱人の家族や友人にもおすすめしたい。
ただ躁鬱病患者といっても、それぞれ違う個性や環境を持つ人間であり、すべての人に当てはまるものではないことには留意する必要がある。
自分にしっくりくる部分をうまく取り入れてみるのが良いだろう。

文章の読みやすさ  ★★★★☆4
テーマの重さ    ★★★☆☆3
テンポの良さ    ★★★★☆4
読後感の良さ    ★★★★☆4

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