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2024年おすすめ本12
「ほんのささやかなこと」クレア・キーガン
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〈あらすじ〉
1985年、アイルランドの小さな町。寒さが厳しくなり石炭の販売に忙しいビル・ファーロングは、町が見て見ぬふりをしていた女子修道院の〝秘密″を目撃し――優しく静謐な文体で多くの読者に愛される現代アイルランド文学の旗手が贈る、史実に基づいた傑作中篇
(Amazon商品解説より)
〈感想〉
舞台はクリスマスシーズンのアイルランド。
石炭を売って暮らしているビルは、妻と娘たちに囲まれて、地味ではあるが安定した生活を送っている。
ところがあるとき、町の修道院の悪い噂を耳にする。
そこでは、訳あって妊娠してしまった女性たちを閉じ込め、酷い扱いをしているという。
穏やかに暮らしていくためには、他の住民と同様に見て見ぬふりをするのが賢明なのだが、ビルは恵まれない幼少期を他人の善意によって生き延びた過去があり、なかなか無視することができない。
思い悩む彼が下した決断とは......というお話。
腐敗したキリスト教社会と、キリストの教えに従い、善意の行いをする住民との対比が淡々とした筆致で描かれる。
この本の内容が事実に基づいているということに驚いた。
もし私が住人のひとりだったら、おかしい!と気づいたことに声をあげられるだろうか。
多くの人と同様に、見て見ぬふりをして保身を図るのではないか。
そんな勇気のない自分を恥じた。
この本に書いてある社会的抑圧は、遠い世界の出来事ではなくて、今まさに近くで起きていることだという当事者意識は失くさないでいたい。
中編で読みやすい文章なので、日ごろ海外小説に触れない人にも勧められる本。