マガジンのカバー画像

牛をめぐる冒険

2
テスト的に投稿する自伝的小説です。かなーり不定期な小説です。
運営しているクリエイター

記事一覧

01:2015―現在 七月某日

「やっぱこの季節は暑いですね……疲れました」 「まるで夏やな」 「いや、夏ですよ……それにしてもセンセは初めて会ったときと比べる変わりましたよね」 「自分でも言うのもなんやけど、確かに変わったと俺も思うなぁ」  汗を拭いながら少し思い返してみる。この子と会ってからそんなに長い期間では無い気がするが、確かに俺自身に変化はある。そもそも外に出て暑い暑いと言っているこの状況も俺の変化の一つだ。 「なんていうか、自信がついたというか」 「自信? ですか?」 「うん。子供の頃から自信な

00:牛をめぐる冒険 -序

 只々、それは偶然。だったのかもしれない。しかしそれは必然の縁のようにも思えた。  運命は交差する。人は交差する。真実は交差する。その一点だけが紛れもない出会いだ。  そしてそれは物語なのだ。  僕が《牛》と出会ったのはそのような類いなのかもしれない。  牛を巡る冒険に終わりは無いのかもしれない。が、たかだかあの出逢いはまだ一年足らずなのだから。  ユメ、ゆめ、夢。  夢の中で出会ったのは紛れもなく牛だった。途轍もなく大きな黒い牛。全てを悟ったかのような目で僕を見つめていた