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『アデル、ブルーは熱い色』情感のディテールの嵐!
<超いい演技について語ろう①>
『アデル、ブルーは熱い色』2013年フランス映画。
まるで自分もシーンに立ち会っているかのような最高の鑑賞体験・・・すごく切なくなったし、消耗しましたw。それはたぶんわれわれ観客がアデルたちの心の動きに共鳴しまくったせいで、いや~俳優たちの演技が素晴らしかった!
主人公アデルのシズル感がハンパなくて、もうなんか画面から彼女の情感のディテールがブシューッて溢れ出てくる感じw。しかもそれを撮影監督の手持ちカメラが超アップで余す所なく撮影してるので、臨場感がハンパない!
アデルの心の動きに観客がどんどん巻き込まれていくんです。一瞬たりとも客観的にさせてもらえないw。
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これぞ演技のディテール!
気になる男の子とケバブをガンガン食べながら読書の話をするシーンの、食欲と読書の喜びがほとばしりまくる、しかも恋愛の予感のシーン。
男友達に恋愛相談をして、自分の中の矛盾と、その男友達の優しさに泣いてしまうシーン。
学校の喫煙所で女友達と、はじめて女性同士でキスしてしまうシーン。
公園でエマの絵のモデルになって描いてもらいながら、自分の見た目を褒めてもらって小さく激しく動揺するシーン。
どのシーンもいちいち身に覚えがありすぎて切なすぎるw!
その「最高のアルアル」は、まったく演技に見えない。
そしてシーンの小さな状況の変化に反応して、ころころ全身で変化してゆくアデルの表情・・・3時間の映画なんですが、この主演のアデル・エグザルホプロス(役名と同じ!)の小さな小さな表情の変化にずっと心奪われてました。
俳優やってる人は特にわかると思うんだけど、このディテールの豊かさをカメラの前で演じてるって・・・奇跡的なのです。
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すべてがアクションではなく、リアクション。
反応が瑞々しいと書きましたが、アデルが能動的にアクションとしてセリフを言ったり行動している形跡がほぼ無いんですよね。
アデルのセリフも行動も、相手役のアクションや状況の変化に対する反応として発生している・・・つまり相手の芝居や状況の変化に完璧にリンクしてるんですよ。
だから芝居を長回しで手持ちカメラで撮影すると、そこにはもう現実が映っているとしか思えないリアリティが、「最高のアルアル」が発生していて、観客の世界と地続きになるというか、観客を巻き込んでくるんです。
そう、演技はアクション(意志的な行動)の時代を終えて、
リアクション(反応としての行動)の時代に突入しているんですよねー。
主演のアデル・エグザルホプロスは、やはりオーデイションに来た女優の中ではずば抜けた「純粋さ」と「感情の深さ」「感情の自然さ」があり、そして「カメラの前でも身体と感情がオープンな状態でいられること」に突出していて。 つまり「反応に優れている」ことが認められて主演を勝ち取ったそうです。いや~納得。
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本当に「体験するタイプ」の演技法。
なぜこんなにも瑞々しいディテールが生まれるのか?
それはつまり、俳優がそのシーンをカメラの前で本当に体験しているからです。 だからアデルに共鳴する観客も、そのシーンに立ち会っているかのような感覚を体験できるのです。
なのでこの映画の前半部分、恋愛のドキドキ感や青春のワクワク感に観客は巻き込まれ、夢中になれて最高なのですが・・・映画後半、アデルの恋愛や人生がキツい展開になってくると、演技は相変わらず素晴らしいので、キツさのディテールも豊かでシズル感がハンパなく伝わってきて・・・観客もキツいのですw。
つまりこれ、俳優たちもこのキツさを本当に体験している!(笑) というわけですよね。で今、主演のアデル・エグザルホプロスさんはインタビューで「あの映画の撮影はホントにキツかった。あの監督の作品には2度と出たくない」と言ってるそうですw。
いやロバート・デ・ニーロとかアル・パチーノみたいな、演技超人というか演技変態みたいな人達がw、自ら進んで役の人物の破滅的状況の中に100%突入して演じるのは、べつに彼ら本人の趣味の問題なのでよいのですが。てゆーかそれはそれで素晴らしいことなのですが。
でも、まだ10代の女優さんたちに、その手法をカジッた映画監督がそれを強要したらダメですよね。
まあこの映画でアデル・エグザルホプロスさんは壊れたりしなかったようなので良かったのですが、この「映画の中で起きることを本当に体験しながら演じるタイプの手法」は、俳優本人がそれを望んだときのみ!がルールだと思います。マジで。
とはいえ、いち観客としてはこの映画『アデル、ブルーは熱い色』の芝居は本当に素晴らしいと思いました。ディテールの海に吞み込まれました。奇跡的な作品です。
俳優さんなら一度は観てみてはいかがでしょう?
小林でび <でびノート☆彡>