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『アフターデジタル2』をデザイナーの視点で読んで整理してみた

アフターデジタル2を読んだので、「UXデザイナーがこの本から何を学べるか?」を考察してみます。

僕は1年前、前書の『アフターデジタル』が出たときに感化され、アジアへリサーチ旅行に行きました。(現地のアプリを駆使したり現地の友人に使ってもらって体験しました。詳細は文末に)

今回の2はその続編となる内容で、前書に比べて実践的な位置付けです。

アフターデジタル01

アフターデジタル2 UXと自由
藤井文保
日経BP 2020.07

文章の途中にある(※)は最後に参考書籍のリンクをまとめています。

1(前提). オンラインリアル

アフターデジタルの世界で提供するサービスは、ただのオンライン化ではありません。デジタルとリアルが行き交う接点からユーザーを理解して、体験を変えていくことです。(このあたりは前書に詳しく書かれています)

データの観点で考えると、デジタルが関わることでユーザーの解像度が高まることが特徴です。データの種類が、

属性データ → 行動データ

と変わります。単に40代・女性・埼玉県在住といった属性データにリアルさはありませんが、どのタイミングで、どんな理由で、使ってどう思ったか、という行動データは、ユーザーをより深く理解できます。オンラインであるほどリアル、がポイントです。

やみくもにデータを取ろうと考えずに、ユーザーのことを理解してソリューションにつなげられるデータになるか?という観点をもってサービスの設計を考える視点が欠かせません。強く意識したい点です。

2(前提). 中国と日本は違う

前書を読んで「中国はすごいから参考にしよう」と思いがちですが、中国は日本といろんな面で違います。次の3点を理解したうえで、ユーザーにどんな価値を提供できるかを考える必要があります。

・国家体制:日本で新しい取組みをするには保守的な規制の壁がある
・経済構造:中国は人口が桁違いに多く、低所得層への伸びしろが大きい
・文化背景:食に対するこだわりの考え方などは国ごとに違う

また、日本も中国も市場が成熟すると、単に便利で役に立つ(便利)という価値から自分に意味のあるもの(好き)へと価値が変わります(※1)。ユーザーとの強い結びつきにはブランディングなどの視点も重要です。

まず、ここまでをまとめてみます。

アフターデジタル02

3(定義). あらためてUXって何?

ユーザーとの結びつきで欠かせない考え方がUXですが、本書でのUX(User Experience)の定義はシンプルかつ明確です。

UXとは「ユーザー(デザイン)、ビジネス、テクノロジー(機能)の3つがそれぞれ関わり合うときに生まれる体験・経験」である

あらためて「UXってデザインだけじゃないんだ」ということに気づかされる定義です。そしてUXの提供価値は、役に立つだけでなく、その人にとって意味のあることかがより高い品質につながります。

・便利か    ↑ 役に立つ ↑
・楽か
・使いやすいか
・楽しいか
・心地よいか
・信頼できるか
・感動できるか ↓ 意味がある ↓

そしてUXによる改善は大きく3つのパターンがあります。

1.ユーザーの体験向上
2.ビジネスプロセスの効率向上
3.双方を助ける付加価値(評価し合うなど)

これらをまとめて図に整理してみます。

アフターデジタル03

4(定義). じゃあDXって?

DX(Digital Transformation)については以下のように書かれており、UXを中心に置かないDXは中身のない変革になりがち、と述べています。

デジタルとリアルが融合することで膨大で高頻度な行動データを使い、企業競争の原理が商品販売型から体験提供型になる、つまりバリュージャーニーを作って運用していくことを踏まえ、新たな顧客との関係性はどのようなものであり、どのような体験を提供する存在になるべきなのかを考える活動である。

なので例えば、業務のペーパーレス化そのものはDXではなく、ペーパーレスによってユーザーの行動がどう変わったのか、変わったことで、ユーザーとサービサーとの関係が変わり新しい施策が打ち出せたか、までがつながらないとDXとはいえません。(※2)

ここでも大切なことはループの関係です。

UXを中心に、片方では行動データからユーザーを理解してソリューションにつなげる、もう片方ではその取り組みで得た利益を、よりサービスの質を高めるための施策につなげて投資するというループです。(※3)

図にするとこんな感じです。

アフターデジタル04

こう書くと、以前紹介したJohn MaedaさんのCX Report 2020で使われていた図と多くの共通点に気づきます。ループの仕組みで循環していること、テクノロジーによってループが自動化・高速化されていること。

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5(実践). アフターデジタルのUXデザイン

では、UXデザイナーがアフターデジタルのサービスにどう関わるかを考えてみます。本書の第4章は実践的な取り組み方が紹介されています。

まず基本概念として、提供する世界観をもとに UX → データ → AI のループをまわす考えがあり、実践では大きく3つのフェーズがあります。

アフターデジタル05

6(実践). コンセプトフェーズ

企画の段階では、社会の変化から自社の価値を再定義して、ユーザーにどんなことを提供すべきかを考えます。そしてユーザーが置かれている状況の理解を行います。(※4)

ここでUXデザイナーはジャーニーマップを書くと思います。

ポイントは「不幸せな状況を構造的に捉えること」であり、状況や出来事だけをみて対処療法的な課題抽出は失敗するといいますが、このあたりは経験のあるデザイナーなら心得ていることと思います。

7(実践). 設計フェーズ

ですが、ジャーニーマップを課題抽出だけで終わらせてはだめです。幸せな状況に転換できるコア体験をつくり、どこにユーザーとの接点がうまれるかを次に考えます。

そしてもっと大事なのが、UX → データ → AI のループを設計することです。1回で終わるのではなく循環してどんどんUXが成長して良くなっていくことに目を向けます。

僕自身、ここまでの意識はまだ弱かったので、この視点は取り入れていきたいところですし、デザインだけの領域ではないので、エンジニアやビジネス側の人に積極的に加わってもらいたいフェーズだと考えます。

8(実践). 運用フェーズ

 アフターデジタル世界のUXはサイクルがまわり続けるので、成長させていくためのグロースハックの体制構築が欠かせません。(※5)

ここでは当然、システム運用や開発の要素が強くなるので、求められるスキルも変わってきます。が、デザイナーとしての立場では常に「そのデータがユーザーにどういった価値を還元できるのか?」を主張していく必要があります。

あらためて図示します。これでループが回るようになります。

アフターデジタル05

・・・・・

以上、デザイナーがどう関わるかという視点で整理してみました。上に書いたことはケイパビリティ(能力やスキル)ですが、ベースには精神(考え方や倫理観)があり、本書はこの点を強く主張しています。

というのも、使い方によっては、監視社会や権力者を優遇するようなサービスになりかねないからです。前職の大先輩がよく言っていた「デザイナーは常にユーザーの味方」という言葉を思い出しました。

アフターデジタル06

9.まとめ

アフターデジタル2を通じて学んだことをまとめます。

・属性ではなく行動データに注目する
・便利だけでなく意味のある体験をユーザーに提供する
・UX = デザイン x ビジネス x テクノロジー
・DXは真ん中にUXを置いて、データは常にユーザーに還元する
・データによってループをまわす仕組みを設計する

ここで書いたことは、デザイナー向けに焦点を当てていることと、かなり自分の解釈を入れた内容であるため、本書の意図とずれている点や説明不足な点があるかもしれません。

なので、興味を持たれたら、ここで終わらずにぜひ本書を手にとって熟読してみることをお勧めします。

参考書籍

※1 役に立つから意味のあるへ。書籍ではニュータイプの時代が紹介されていますが、デザイナーには突破するデザインがより深く学べます。

突破するデザインは以前、感想を書きました。

※2 僕が勤めている会社の代表が書いたDXの考え方です。Biz/Zineにも記事が掲載されています。

※3 ループをまわすビジネスモデルの考え方はこちらにもみられます。

※4 D2Cは仕組みに注目が集まりがちですが、思想や企業ミッションの考え方がより重要だともいわれています。

※5 グロースハックのことがわかりやすく書かれています

一年前にリサーチ旅行をしたときのまとめです。(全部で5つ)

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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デザインとビジネスをつなぐストラテジーをお絵描きしながら楽しく勉強していきたいと思っています。興味もっていただいてとても嬉しく思っています。