Spectrum Tokyo Design Fest 2022に出てみた。(どこからどこまでUXデザイン?)
12月は、Spectrum Tokyo Design Fest 2022で初日1番目に発表しました。11月に参加したDesignshipと雰囲気やスタイルとは違い、ステージを移動しながら途中で歓談もしてといった、まるで音楽フェスのような場でした。
発表内容を共有します。今回はすべて手書きイラストだけで構成、テーマは「どこからどこまでUXデザイン?」です。ではどうぞ。
1.UXとは?
どこからどこまで?結論を先にいうと、どこまでもだと思ってます。UXとかの言葉(できれば使いたくないくらい)に縛られることなく、デザインを起点にあらゆる領域に関われる方が楽しいと思ってます。
ユーザーとビジネスの間にプロダクトとかサービスがある、ビジネスは基本このつながりで成り立ってます。
ビジネスがうまくいかないのは、ユーザーが欲しいものが競合だったり他業種だったり、線がつながらないからです。
それをつなぐ役割がデザインです。ところが、
デザイナーもユーザーが欲しいものを体現できなかったり、ビジネス側の経済合理性との両立が難しくつながらないこと、よくあります。
そのため、プロダクト側からではなくユーザー側から考えて、欲しいは何かを探る、これがUXの起点になります。
2.User理解とは?
ユーザーがコンピューターであれば毎回同じ反応をします。
でも、ユーザーって何を考えているのか、よくわかりません。
ユーザーにはたらきかけるには、ビジネス側からのインプットで情報を受け取り、判断をして行動に移す、結果モノを買ったりサービスを使ったりにつながります。
その過程でユーザーは、情報と判断の間にバイアスを受けます。
昨年、行動経済学とデザインの本を書きました。その一部をご紹介、バイアスには大きく8つの傾向があります。
決断:一度決めつけてしまうと他の選択肢を排除してしまいます。
時間:タイミングによって判断も変わります。
周囲:1:1に比べてNだと自分ごとに受け取ってもらえません。
気分:怒った時に判断してしまうと引きずってしまいがちです。
距離:物理的な近さが親しみにも関係します。
条件:押すなと言われたら押したくなるものです。
枠組み:同じ数の差でもキリが良いかで印象は大きく変わります
相手:一人よりも競争心が芽生えるし影響も受けてしまいます
ユーザーは何に影響を受けるかを知り、行動を観察したり話を聞くことで深い理解が得られます。ユーザー理解にはこのような専門知識やスキルが求められると考えます。
3.Businessに関与する?
ユーザーの欲しいは1つではありません。その中でどこに目を向けてもらうかはビジネス側の思惑によります。
行動経済学には「ナッジ」という考え方があって、ユーザーを好ましい行動をしてもらうよう、うながすことができます。
バイアスには大きく4つの方法があります。
目に入りやすい場所にオススメ商品を置いたり、
ついついやってしまいたくなる仕掛けを取り入れたり、
ラベリングの情報でユーザーの行動を定めたり、
ギブアンドテイクの関係で動機付けを与えたりです。
そうやって、ビジネス側がアプローチしやすい欲しいを定めます。
ビジネスが提供しやすい領域を定めないと、無理をした事業戦略になってしまうので、どこで勝負するかを示すこともUXデザイナーの役割になります。
開発だけでなく、マーケティング、セールス、カスタマーサポートなど、事業戦略でやることはたくさんあります。デザイナーがすべての具体をつくるのは難しくても、方向を示すための関わりはできます。
4.何をDesignする?
UXデザインとは実態のない概念です。実態がないからこそ、どんな対象でもデザインに関われる必要があります。
具体は各専門のデザイナーが行うとしても、ユーザーとビジネスをつなぐためのアイデアを示すことは、UXデザイナーの役割だと考えます。
5.まとめ
まずユーザーの欲しいとビジネスが提供できる「機会領域」を見つけることです。これをUX Researchとします。
大事なことは、仮説を立てて両方からアプローチすることです。
そして機会領域が見つかったら、実現手段としてのサービスやプロダクトをユーザーとビジネスに戻します。これをUX Designとします。
デザインの対象は「ユーザーが体験できるモノ・コトのすべて」です。
そうやって、ユーザーとビジネスの関係性のながれをつくることがUXデザイナーの役割です。ジャーニーマップを書くとか、ワイヤーフレームをつくるとかの手法(これらももちろん大事ですが)に限定せず、どんな領域にでも関われるのは、UX=ユーザー体験ならではです。
理想論と思われるかもしれませんが、僕が今いるコンセントリクス・カタリスト(旧Tigerspike)では、ユーザー起点でビジネス戦略からデジタルを中心とした対象を問わないデザインを実践しています。こんな仕事の仕方に興味ある人、ぜひお声がけください。
ありがとうございました。
6.おわりに
発表後のAMAでは、カードツールを紹介しました。
発表者と参加者の一方的な関係ではなく、同じ場にみんなと混ざって話し合う時間がとてもよかったです。もっと発表時間抑えればよかった。
他のセッションも学びになることが多かったです。プロジェクトでのビジョンの立て方、組織を1つにするデザインのアプローチ、いろんな手法を実践している事業会社での試みなど、ネットや書籍ではなかなかしれないことが盛りだくさんなうえ、ネットワーキングもできました。
イベントのデザインも会場の体験設計もとてもすばらしく、参加して本当によかったと思います。来年は(仕事を持ち込まないで)思う存分参加したいと思います。