マーケティングとは組織革命である_メモ

どんなことでも勝ち筋から思考しよう:マーケティングとは組織革命である

著者の代表作でもある『USJを劇的に変えた、たった1つの考え方』を読んで以来、僕は森岡さんの考え方に強い影響を受けています。いま自分の中で組み立てているデザインストラテジーの考え方は、この本から始まったといってもいいくらいです。

そんな森岡さんの新しい本(とっても2018年で既に一年近く経ってますが)をやっと読む時間ができたので熟読。この本は会社の組織について書かれたものです。僕自身はそれほど社内マーケティングには強い興味はないのですが、実際の仕事では避けては通れないですし、「いるいる、こういう人」と内容がたくさん紹介されているので、単純に読み物としても面白い本です。

マーケティングとは組織革命である
森岡毅
日経BP社 2018.05

会社で働く人にとって、この本に書かれている内容は隅から隅まで参考になる内容ですが、僕がこの本を読んで「すごい!」と思った一番のことは

マーケティングの思考は人間関係や社内事情などにも活用できる

ということでした。後半の章で紹介されている実践の内容は『USJを劇的に変えた、たった1つの考え方』で書かれていたことと全く同じ、5つのプロセスによるフレームワークを用いて説明されています。

1. 組織文化の理解
2. 目的
3. WHO
4. WHAT
5. HOW

人は何か1つの物事に取組もうとすると、つい「どうやって解決するか?」という手段の方に目が行きがちです。例えばモノのデザインだったら、どんな機構や形にすればより売れるようになるか、といったような。ですが、それはこのフレームワークでは一番最後のプロセスで、そこにたどり着くまでの前提によって、より売れるためのデザインのアプローチは全然変わってきます。

そこに至るまでどういったことを考えて行動する必要があるか、本書の要点のところを『伝え方』という点にフォーカスして紹介してみます。

1. 組織文化の理解:まずゲームのルールを理解する

何か新しいことを始めるときにリサーチは不可欠です。それは自分がその業界のことを知らないから情報を得るという意味合いもありますが、単に現状を把握するためのデータ収集はあまり本質的ではありません。

大事なことは『その業界のルールを知ること』です。ルールが分かるようになると、何を抑えておくべき必要があるかが分かるようになります。逆にいうとルールに背いた中で正面突破するのは非効率だとわかるし、ルールを変えていくための方法も見つけられるようになります。

よく、リサーチをしすぎると凝り固まって動けなくなる、という意見がありますが、それはデータ収集に注力しすぎて判断軸をつくれないから起きることであって「ゲームのルールは何か?」ということに焦点を当てて行えば、必要なリサーチ情報は絞られてくるはずです。そしてその情報は定量的なものだけでなく、例えば組織についてだったら組織の目的や人間関係など、定性的な情報も大切になってきます。

2. 目的:勝つ確率の高い戦いを設定する

ゲームのルールが分かったら、そのルールの中で勝てるための方法を考えるのが次のステップです。野球であったら選手の構成を見て打撃中心で高得点を狙うか、それとも守備の強化で失点を避けるようにするか、など。あるいはルールの隙を見つけるという視点も大事です。

ここで大切なことは目的を意思決定者と握っておくことです。攻めのスタイルか守りのスタイルかの狙いがバラバラな状態で進めると、組織としての指示と担当レベルの行動がともなわなくなるからです。そして、そのためのポイントはその組織や上司の大義は何かを捉えることだそうです。例えばそれは経営理念であったり、組織文化であったり、上司が抱えている悩みだったり。決して自分のエゴではなく相手の立場で考える姿勢を示すことです。

3. WHO:組織目的で動く人/自己保存で動く人

目的を設定して共有ができたら、次はターゲットを絞り込みます。伝えたいことがあったとしても、人によって言い方を変えていかないと全く通じないことがあるからです。伝える内容の前に、伝える相手の理解が重要です。

意識するのは、意思決定者は誰か(肩書だけでなく、組織文化の中で実質的な決定権を持っている人がいる場合もある)、意思決定を支えるフォロワーとなる人は誰か、潰してきそうな人は誰か。プロジェクトやチームの中で関わる人の特性をこのような観点から分析して優先度を見定めます。

そして、会社で働く人には大きく2種類の傾向があります。1つは会社のために正しいと思えることに動く人です。一方もう1つは自分のために動く人です。言い換えると、エゴや上から良く見えることを意識している人たちです。好き嫌いは別として、こういった目的で動く人たちも一定数いるのは事実で、人は誰でもこの2面性を抱えているものです。なので相手の状況に応じて伝え方を変えていく必要があります。

4. WHAT:便益を公と私で使い分けて伝える

誰かが明確になったら、何のメリットがあるかということをWHOのところで紹介した2つのタイプを意識して伝えます。

会社のために正しいと思えることに動く人に対しては、目的意識の伝え方を「会社のために」や「事業のために」という前提で話をすることが効果的です。組織としての観点で会話が進むので、魅力・実現可能性・コスト(リスク)それぞれを丁寧に説明する必要があります。それによって聞き手の意思決定の助けになったり、一緒に物事を解決するための架け橋として、伝える情報が機能します。

そして、個人のために動く人に対しては、実利的な面と心理的な面それぞれを示唆させる会話をすることが有効です。やってはいけないのは、はじめからストレートに言ってしまうこと。個人のためであっても会社で仕事をしている以上、それを全面に出されると空気の読めないやつと思われてしまいます。なので始めはあくまで公的な説明をしたうえで最後にちょっとほのめかす、あるいは言わなくても感じ取れる伝え方が効果的だということです。

ちなみに英語圏では「What's in it for me? = 私にとって何のメリットがあるの?」といわれることもあるそうです。この場合はストレートにいってもいいのかもですが文化の違いってすごいですね。

5. HOW:言いたいことを相手が聴きたいように話す

ここまで経てやっと最後にどうやって伝えるか、という内容になります。でもここでもポイントは同じく、相手の視点に立ってストーリーを組み立てるということです。

意外だけどビジネスシーンであっても、人は好きか嫌いかで決めているということです。本当に?と思う一方で、自身の経験に照らし合わせてみると、確かに多くの場合がそうやって決まっている気がします。そして、こういった事実がある中で大切なことは、相手の情緒(好きのレベル)まで満足させるということです。

情緒まで満足させるには、相手がどういったコミュニケーションのスタイルであるかを知る必要があります。スタイルは大きく、PUSH型かPULL型かの分類と、構築型か破綻型かの分類で4つに分けられます。どのタイプに対しても最も好意的なのはPULLx構築の反応タイプ(傾聴して相手の考えを引き出す)です。理想的な流れは、はじめはこのタイプで対応して、今が攻め時というタイミングが訪れたらPUSH型に切り替えていくことです。

ちなみに僕は職業柄、相手の話を聞くことが多いので、ラッキーなことに基本はこの反応タイプだと思いますが、傾聴スタイルはビジネスシーンの中で本当に役立つと実感することが多いのでおススメです。

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以上、5ステップを踏まえた社内マーケティングのテクニックでした。これは組織のことだけでなく事業企画や人生設計など、どんな物事においても共通して考えることのできる戦略思考だと思っています。このステップを実践の中でじっくりと理解しておくことは重要だと改めて思った次第です。

そして5ステップすべてにおいて共通する視点は、次の2点だと思います。

・俯瞰して捉える力
・相手の視点に立って考える力

「これってどういったシステムの上で動いている現象なんだろうか?」とか「相手が望んでいることに対して自分の考えはどこが接点となるんだろうか」といったことを常に考えることが、こういった戦略思考を身に着けることにもつながるのではと思います。

僕はデザインストラテジーという分野で、デザインをどう戦略的に扱っていくかということを常に考えていますが、デザインであってもこの思考の整理はとても学びになるものでした。

マーケティングとは組織革命である

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ジマタロ
デザインとビジネスをつなぐストラテジーをお絵描きしながら楽しく勉強していきたいと思っています。興味もっていただいてとても嬉しく思っています。

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