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教育格差とペアレントクラシー(教育社会学)
大学院で学ぶ「学習のデザイン」、今日は教育格差について取り上げます。
メリトクラシーとは違う格差
前回、エリート主義や能力主義を意味する「メリトクラシー」のSFを紹介しました。
50年以上前の見立てに対して、現代はそこまで極端な学力一辺倒ではないにしても、教育による社会格差は広がっています。
低所得の家庭は塾や大学に行けず、非正規雇用の職につき、貧困と学歴低下が連鎖している状況です。対して高所得層は子どもに教育熱心な傾向が見られます。親の年収と成績に相関関係があるデータも示されています。
つまり、いまは親の影響力が大きい社会です。これをペアレントクラシー(親による統治)といいます。
経験という幻想
このテーマを考えるうえで、こちらの動画を取り上げてみます。2021年に放送されたものですが、のちに一部ネットで炎上します。
ゲストの1人は「学歴中心の履歴書から経験中心の履歴書に」という提案をします。格差を解消するために一見聞こえのよい内容に思えますが、他のゲストから次のような指摘を受けます。
若新:経験の方が貧富の差がでると思うんです。お金持ちの方が海外に行かせられるとか、楽しいことさせるとか。(中略)どんなすばらしい家庭教師呼んでも、暗記は自分でしなきゃいけないじゃないですか。意外と学歴とか学校の試験というのは、学びの本質に直結してなくても、誰でも頑張ればある程度チャンスが巡ってくるかと思います。経験の方が格差広がらないか?と思うのですが、どんな経験だといいのですかね。
これに対して、お金に限らない経験として子育てを例にあげますが「それだと履歴書には書けませんよね」という指摘を受けます。
他にも、
成田:僕は経験重視というのは最も格差をつくり出すものでないかと思いました。アメリカの有名大学ってあまり知られてないですが、入学試験がないんです。これまでの経験値を総合的に出願書類にまとめて総合的に判断している、すべてがAO入試みたいな世界なんですね。そういう世界で何が起きてるかというと、高校生がみんな多様な経験と称するものを手にいれるために、2週間で100万円とかするパッケージツアーに参加しまくって、NPOとか会社とかつくって「社会起業家です」といって自分をプレゼンするということが起きてます。その結果として、イエールとかハーバード大学に入学している人の親の平均年収が2500万とかそういう状態になってます。履歴書に書ける経験にしてしまうとお金で買う。かしこい豊かな家の子どもほど経験をしっかり蓄えられることになっちゃうのではないかという気はします。
と意見します。経験は金で買える、鋭い指摘だと思います。
実は勉強や学歴は、個人の努力で逆転がある程度可能な、数少ない平等なシステムの1つではないかともいえます。
ペアレントクラシーを乗り越える
とはいえ、学歴でも経験でも親の影響力は強く、各家庭の考に対して政府は介入できないので、この流れがすぐに止まることはありません。
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僕はいまこそ、学校の公教育を見直すべきではないか?と考えます。
公立は誰でも平等に学べる場ですが、学習環境の質は低下しています。社会の変化に学習内容が適応できず、IT導入は遅れ、教員に過剰な負荷を強いられて、ここも負の連鎖が存在ます。
前に学校は、開かれた存在と閉じた存在どちらがよいか?について考察を書きました。今は学校の外に出て学ぶことが大事だ(インターンシップなど)という風潮がありますが、学校の中にいるからこそできる経験を重視することは大切ではないかと考えます。
公教育のなかで創造性を重視する教育によって、金で買えない経験値を学ぶ機会を提供できる提案をしたいと考えます。創造の取り組みにもお金はつきものですが、一人で試行錯誤したり葛藤する過程は、恵まれた環境に限らず学べることです。
学んだこと
僕は創造性は学歴や収入とはあまり関係ないと思っていますが、実際のところ、デザイナーは両親が高所得層であることが多いです。
所得の影響が出る前の小中高での公教育や、所得が低めの層が集まる学校で、創造性を取り入れた学習機会を提供できると、格差解消の機会につなげられないかと考えます。
なぜなら、創造性は21世紀に必要な力だと言われているからです。そんなことを思いながら、創造性の学習に可能性を見出していきたいと思います。
今日はここまでです。
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