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産休中に読んでよかった本の記録

妊娠してから、「友人はどんな生活を送ったんだろう」「この出産した芸能人もつわりとか苦しんだのかな」と他人の生活が気になることが多くなった。
このつわりはいつまで続くのか、胎動ってこんなに激しいの、男は生まれるのをただ待っているだけでいいよなあ、といろんな疑問・不安・感情でぐるぐるしていた。
ネットで探すと大量に出てくる情報。でもどれも断片的。
もっと線で繋がったストーリーで妊娠から出産・育児を知りたい。それに、著名な人はこの経験をどんな風に描くんだろうと気になって、エッセイ本をいろいろ読んだ。その中で心に残った本を記録します。

私のプロフィール
職業:デザイナー
年齢:31歳
出産:2023年11月


妊娠中に読んだ本

きみは赤ちゃん・川上未映子

宝物みたいな一冊になった。同じく出産を控えた妹にも買って渡したし、今子育て中の本が好きな友人にも勧めた。(その友人も絶賛していた)
川上未映子さんの本は高校生のときに「乳と卵」を読んで、少し文体に苦手意識があった(ごめんなさい)。でもこの一冊に出会えて記憶がアップデートされた。妊娠から子供が1歳になるまでがかっこつけずに、赤裸々に描かれている。関西出身としては関西弁も心地よい。無痛分娩の考え方や、夫への感情など、自分と近しい考え方が綴られていて共感の嵐だった。
また、月齢単位でセクションがわかれているので、妊娠周期に合わせて読むことができる。自分の妊娠周期が更新される度に読み返しては、私と同じだ、と嬉しく思った。
そして「産後クライシス」「母乳問題」「仕事と子育ての両立」という産後の状態まで記されているのもよかった。感情の変化がわかるので、今後の自分の心づもりになったし、そうなったときに「そういうものだ」と思える安心材料になった。
あと、当時出産知識が乏しかったので、帝王切開って術後めちゃくちゃ辛いんだ…..というのが本当によくわかった。

そういうふうにできている・さくらももこ

気楽に読める。そして、その気楽さに救われた。
産前産後はとにかく大変!しんどい!というエピソードで溢れていて、調べれば調べるほど怖いし不安な感情に襲われる。
そんな中、さくらももこは、さくらももこだった。これまでいろんなエッセイを読んできたけど(「あのころ」が一番好き)、変わらない。妊娠中の便秘との格闘で1エピソード綴られる。辛いんだろうけど、それがギャグ風で面白い。だけどしっかり、マタニティブルーなど、妊婦の感情の浮き沈みも綴られていて、やっぱり妊娠ってそういうものなんだなあと思えた。そういうふうにできているんだな、と。
生まれたばかりの赤ちゃんに「あなた、何の縁ががあって私のお腹から出てきたのかね?」と小声で尋ねる、その距離感というか接し方もいいなと思った。自分は自分、子は子。独立した人間として捉えてるんだろうな。それもさくらももこさんらしくていいなと思った。

れもん、うむもん!・はるな檸檬

漫画のエッセイ本。はるな檸檬さんは「ファッション!」とう連載漫画が面白くて、この方の妊娠出産エピソードを読んでみたいなと思った。
ただ、個人的には読んでいてかなりしんどかった。こんなに産後って辛いの?と思うエピソードが多い。妊娠糖尿病などは私もかかったのでその大変さだったり、産前は共感する部分が多かったけれど、出産後はとにかく壮絶なエピソードが多かった。
結局自分が産んだ後読み返しても共感できるところは少なかったけれど、こういう経験をした人きっとたくさんいるんだろうなという学びになったので読んでよかったと思う。
子供一人産んだ経験があるとしても、その出産体験は自分の経験であって、他人は違う。当たり前だけど、いろんな産前産後の経験があるから、自分はこうだったと押し付ける思考を持ちすぎないようにしようという自戒になった。

母性・湊かなえ

これは小説でエッセイ本ではないけれど、妊娠中「母性ってなんだろう」と思うことが多くて手に取った。
私自身は、子供がお腹に宿ったと知った時から、自分の中に「この子を守らなきゃ」という思いが芽生えた。生活に必要不可欠だったカフェインも絶ったし、満員電車に乗れば押されて潰されないように無意識にお腹を手で守るようになった。これが母性?そんな気持ちで手に取った本。
そのアンサーとしては、産んだから・子供を宿ったから、誰しもが母性をもつわけじゃないということ。この本の主人公は母性をもてない人だった。実際に、虐待で亡くなった赤ちゃんのニュースも絶えないし、そういう人は世の中にいっぱいいる。でも、母性という言葉で、母はそういうものだと植え付けてられてきた気がする。
これが母性なのかな?と感じるときは間違いなく自分の中にはあるけれど、だけどすべてを「母性」という言葉で括らない表現で、妊娠出産を語りたいなと思った。

パリの空の下で、息子とぼくの3000日・辻仁成

母性を読んで、「父性」が気になって読んだ一冊。辻仁成さんが、パリで息子と二人暮らしする生活を綴ったエッセイ本(離婚していて母はいない)。
とにかく子への愛が溢れている。食事の描写、暮らしの描写、子どもとの会話、そのとき感情、綴られているすべてに愛を感じる。本当に子どものことを想うからこそ、うまくいかないときもあるし、それが子育て。間違いなくこれは子育ての本。
私は、「父」という立場の人がこんな風に生きることができると知らなかった。無意識に「母の役割」という定義を作ってしまっていた気がする(反省)。子育てに性別は関係ないんだなと、強く思った一冊だった。
パリの生活もおしゃれで素敵です。

番外編・出産後に出会った本

色と形のずっと手前で・長嶋りかこ

これは産後に出版された本なので、育休明けに読んだ本だけど、本当に出会えてよかった。というのも、デザイナーが子育てを赤裸々に書いている本は世の中にまだなかなかない。しかも、長嶋りかこさんという著名な女性デザイナーが綴っている。読むしかない。
読んでいると、自分のいた広告業界であることもあり共感の嵐だった。マッチョイズムな世界、その中での女性の生き方、そして感じる違和感。過去に感じた違和感が残り続け、今度は怒りに近い感情となってまた残り続ける。共感しかなかった。
新卒の頃に上司が「あの人は出産したから、もう必要ないわ」と言っていた言葉(子供のいない女性上司の発言)。「子育てしている人とは仕事したくない」と言っていた同期の男の子の言葉。いろんな言葉を思い出した。あの頃だれかに投げかれられていた言葉たちが、10年越しに今の自分に突き刺さる。
そして、やっぱり「育児と仕事の両立」、これは社会問題なんだよなと思った。結局今の社会だと、「自分で仕事を制限する」「育児に理解のなさそうな人と仕事しない」とか自分で取捨選択していかないと、両立はなかなかできない。それができない人は、結局「頑張り続ける(フィジカル)」か「辞める」になってしまう。こんな世の中じゃそりゃ出生率も上がらない。
こうして、名声のある長嶋りかこさんが、絶対に声を上げにくかったであろうデザイン業界に一石を投じてくれたこと、とってもありがたく思う。

おわり

育休復帰して全然自分の時間が持てていないけれど、これからは子育て系の本もいろいろ読んでみたい。

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