ゴール目前の声
『止まったらアカ~ン!』
見ず知らずの人から発せられた叫び
悲鳴にも似た女声
それはたしかに 自分に向けられたものだった
ゴールラインの手前
ゲートをくぐるまで残り約30メートルくらいだったか
総行程:42195mからみるとほんの僅か
そんな地点で動けなくなってしまったのである
今回も”前触れ”はあった
脹脛を主とする痙攣の発症はいつものこと
よりによって「目と鼻の先」で襲われた
歪む表情
上半身屈み うつむく
そんな時 届いた声
市民マラソンのゴール地点は競技場ではないことがほとんどで 距離数メートルのところから
意志は落ちずに高く保てている でも
身体がどうにも動かない
数十秒じっとしている そしたら収まる
いつものとおり
症状は引いていった
顔を上げても 誰が発してくれたのかは分からない
でも確実にその”声”の想いを受けて 残りの数十歩を前へと進めることができた
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テレビでのスポーツ観戦は「こちら側」。
そのような「競技者/向こう側での実体験ドラマ」はもう何年も前のこと。あくまで市民マラソンレベル。アラフォーになった以降ウォーキングの延長からの、ピークはサブ4x2回。
💉のおかげで遠のきガマンの年月が続いているけれど、トップアスリートの姿を観て、その度に諸々の実体験シーンを思い出す。
--- どうしようもなく【言うことを聞かなくなる身体の状態】【経験のない他者には理解されない激痛/身体の神秘】【それに伴う苛立ちや無念】【あの日の叫び声】・・・
世界陸上ブダペスト大会男子マラソン - 山下一貴選手。
40キロ過ぎまで5位の位置。メダルも狙えるポジション。突如、左脹脛の痙攣に見舞われた模様。立ち止まる。(患部を”伸ばし”、数秒で再発進。さすがトップアスリートである。)
後続に抜かれつつも、”だましだまし”でレースを続ける。ほどなく逆の右脹脛も痙攣発症。また立ち止まる。 ~12位まで下がりゴール🏁
※運動不足の人がふと「攣った~」となるのとは異質のもので、その運動連続の疲労重なり/身体の中のバランス崩壊
本格的な競技者から見れば、こんな〔感受〕は笑うのかもしれない。「素人のクセに」と。
でも少なくとも、本質的に似た実症であることに変わりない。同じように「見舞われた」人にしか分かり得ない。
だからこそ。
そんな姿を目にするたび、瞬時に涙が溢れて、止まらなくなる。