構成要素
夜、犬の散歩に出たら、バイクの集団が通りかかった。
ブンブン、ブブン、ブ、ブブンブブン
アクセルをふかしてリズムを刻む。
それが集団になった時、うねるような轟音のノイズになる。
空に響いて雲に反射する。
しばらく歩くと、スタジオ兼ライブハウスからオンガクが流れてきた。
機械が刻むノリのいい安定したビートに、レコードから流れるオトが切り貼りされて小気味よく乗っかっている。
体がリズムを引き取って、まぁ楽しいよね。何一つ新しくも珍しくもない。でもノレる曲。
しあわせとは何なのか、インタビューしていた彼女は、その形を捉えたのか。もう尋ねることもできない。彼女はこうも言っていた。「歴史が積み重なった今を生きている私たちは、過去の偉人たちより賢くなれるはず」
少しはね。
でもあまり変わらないようにも思える。現象それぞれをとったらね。こころの動きも、反応も。世の中が窮屈になっていくにつれて、表面上は穏やかに平和になっている。おさえこむ主体が変わっただけかもしれない。
ともかく、なにもわからないまま終えてしまいそう。
生きるってなんなのか
なんのために生を受けたか
どうやって死ぬのか
どこから来て
どこへいくのか
知らなくていいことを
知りたくなるのはなんなのか
しあわせとはなにか
それを知ったところで
なにができるのか
全ては何かの組み合わせでできている。
50音の組み合わせで
あまたの新しい文学が書かれる。
ドレミファソラシドだけで
あまたの音楽が奏でられる。
尽きることのない活動
新しい物ができる。はず。
凡庸なまま終わるのが怖いと思いながら、もれなく凡庸で、かつ特異。全ての人が特別な普通を抱えて生きている。人生に普通なんてない。一人一人がドラマチック。
構成要素のどこを見るか。どこを切り取るか。もしくは構成要素の一つを抜いて、それを維持できないようにする。
缶コーヒーから缶を抜いたら、もう缶コーヒーたり得ない、という感じ。
不幸から仏頂面を抜いてみる。抜けたらね。
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