ジャカルタで働く人達「経営者へのインタビュー」
こんにちは、デンソーデザイン部の宮地です。
「働くモチベーションと幸せ」をテーマにインドネシアのジャカルタに焦点を当て、先回・先々回はジャカルタのクラウドキッチンで働く人への、職場環境などのインタビューを掲載しました。
今回は、雇う側のオーナさんへのインタビューを報告します。
クラウドキッチン「コケコッコー・チキン」にビジネスサポートしているインドネシア総研代表のアルベルトゥス プラセティオ ヘル ヌグロホさんにインタビューしました。我々はアルビーさんと呼んでいます。
インドネシア総研は、東京とジャカルタにオフィスを構え、日本企業のインドネシア進出をサポートし、日本とインドネシアのビジネス振興を目標に掲げている会社です。アルビーさんはインドネシア出身ですが日本滞在の経験を持っていて流暢に日本語も使えるほど日本の文化事情にも詳しい方で
仕事に対するインドネシア人と日本人の意識の差
アルビーさんは、日本人とインドネシア人の仕事意識の差をこのようにお話してくれました。
日本人:バイトの学生でも、自ら出来ることを探して仕事をします。(例)レストランのバイトで、お客さんがいなくて待っている間でも、何も言われなくてもテーブルを拭いたりします。
インドネシア人:仕事を定義しないと、動こうとしません。与えられた仕事が何でやらないといけないか、やるとどうなるか、どんな内容の業務をどのレベルをいつまでにやるかをしっかり教えないといけない。
また、インドネシア人の気持ちの中にはロボットのようにはなりたくない、型にはまりたくないとの意識があるそうです。そして型にはまらないと技術が身につかないということを知っている人が少ないのだそうです。なので、仕事を覚える・技術を身に着けるには、何度も繰り返して行う必要があることを理解させることが大事だそうです。
時間を守ること
日本人から見ると、インドネシアの人達は時間にルーズに見えます。これも遅刻することを悪いことと知らないからだそうです。インドネシアの人達でも帰りの時間やお祈りの時間は守っています。実は時間は守れるんです。まわりで遅刻が多い、みんなが遅刻している、だから私もしても良い、悪いことではないと思っていたそうです。そこで朝会を必ず9:00から開始するようにして、“遅刻をすると仕事に支障が出る”“みんなに迷惑がかかる”ことを身をもってわかるようにしたそうです。ただ“遅刻は悪い”と言って怒るだけでは、何が悪いかわからないので、治そうとしないらしいです。これを繰り返し、教え込むことでアルビーさんの会社では、みんなで時間を守るが当たり前になっています。
転職
インドネシアの転職率の高さについて、「経営者にとっては大きな悩みです。また頻繁な転職は技術が身につかないことを招いていますのでインドネシアのビジネス発展にもマイナスです。」とアルビーさんは思っています。転職の多い理由は「もっと稼ぎたい・スキルアップしたい・仕事にあきる・新しくワクワクするしたい」などで、実は明確なビジョンはなく新しい何かをしたいという漠とした感情による行動結果だそうで、30-40代になると安定志向になるそうです。
実は、転職は経営者にとって悪いことばかりではありません。転職した人からの新たなプロジェクト紹介があったりして、ビジネスが広がったり新たな業種とのコネクションになったりするそうです。そのため、円満退社になるように気を使うことで、社外に良い営業マンが居ることになり人脈ネットワークを広げるチャンスでもあると捉えているそうです。
福利厚生とスキルアップ
アルビーさんの会社では、転職で人材流出しないように、中小企業ではあまり実施していない福利厚生やスキルアップに力を入れていて大手企業並みにしているそうです。社内ローンを使えるようにしたり、自己啓発および業務チームの知識向上に繋がる書籍購入を行いやすくしたり、会社のみんなに報告することを義務としてセミナー参加を奨励しているそうです。
ゾーン
働いている人達へのインタビューでは、給与にしろ転職にしろ少しずつステップアップしていく着実な印象を受けたのでその点も聞いてみました。インドネシアは、血筋・家柄で受けれる教育・卒業する学校のランク・最終学歴が決まっていき、自分の就職できる会社が決まるそうです。こうした自分の入れるランクの職業・会社規模・給料レベルの“ゾーン“をもの凄く意識しているそうです。このゾーンの壁を越えていくには、着実に少しずつスキルアップしていくことだと認識しているとのことでした。
起業
インドネシア人の最終目標はボスになることだそうです。労働するのではなく、資産を持って資産経営しリソースを操ることです。彼らのボス像は“現場には行かず、接待や人脈構成をすること”を仕事とすることだそうです。日本人の理想の経営者像とかなり異なりますね。日本では経営者・マネジメント層が現場を知ることは必須のことと推奨していますが、インドネシアではトップは現場に行くべきでない、そこは社員に任せることが大事と思っています。一見立派な経営哲学に思えますが、偉くなって社長室でふんぞり返って楽したい願望が実状のようです。
これまでの、インタビューやアルビーさんとのやり取りから、日本人とは異なるインドネシア人の働くことへ意識の違いは南国特有の感覚か?と聞いてみたところ、「地域・自然環境による差ではなく、経済成長段階の差だと思う。日本でも江戸や明治の時代は、今よりはのんびりとしていて、働くことの意識は違っていたはず。今はインドネシア人が先進諸国と同じような意識・考え方に変わりつつあるところだ。」と回答されました。
全8回のインドネシアの働く意識の考察はこれで一旦終わります。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。