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多様な人材が資本主義をアップデートする

※本記事は、「資本主義のアップデートについて考えるアドベントカレンダー2024」のために書いた記事です。

こんにちは。株式会社方角の方山です。今回は「多様な人材が資本主義をアップデートする」というテーマで記事を書いてみようと思います。
弊社は企業の社会課題解決系のプロジェクトのクリエイティブを作る会社です。メンバーが全員で9名という小さな会社ですが、そのうちの6名に何らかの障害があります。(聴覚障害者がほとんど、あとは視覚障害者も。)さらに年齢層もバラバラで、下は20代、上は60代とかなり幅広いです。セクシャリティの話はわざわざ聞かないのでわかりませんが、会社としてアライの姿勢を取っています。
この多様さは、組織に非常に良い効果をもたらしているのではないかと考えています。

なぜ多様な人材を雇用するようになったのか

最初のきっかけは聴覚障害に関係する仕事を手がけたことでした。その時は29歳でしたが、それまで聴覚障害者と接点のない人生を送ってきたことに、違和感を感じたのです。

そこで、当時設立間もなかった会社に、アルバイトとして聴覚障害者を雇用してみました。最初は正直少し不安でしたが、こちらが工夫すれば何にも問題ないのだと思いました。むしろ既成概念を崩されることが、新たなアイデアの源になりました。それから3年が経った今、多様なメンバーで構成される不思議な会社になりました。

多様な弊社のメンバー、特に障害者の割合についての話をすると驚かれるのですが、弊社は創業してすぐこのような感じになったので、もはや社内で障害を意識することはかなり少ないです。むしろ障害のないメンバーの居場所を確保したい、と思うこともあります。

当たり前を常に疑い、調整する力

私はもともと美術大学のデザイン系学科の出身です。私たちの世代のスターデザイナーの皆さんは、よく著書やインタビューの中で「当たり前を常に疑うことにしている」と言っていました。

多様な人材がいる環境は、まさに当たり前が崩れる瞬間の連続です。
電話をするのが難しいならどうする?
声で会話しない人とはどうコミュニケーションをとる?
文字が読めない人に書類を確認してもらう場合はどうする?
弊社の毎日は、そういうことの連続です。ちなみにこれらは色々な方法がありますが、私は正解はないと思います。その人の性格や属性、その人との関係性で変わってくるからです。「それぞれの正解」を出していくための日々の小さな「調整力」こそが、価値を創造する大きな一歩となりうるのではないでしょうか。

顧客の多様な背景を知る

これまでの資本主義では、大量生産、大衆マーケティングで一気に消費者へ訴求する手法に依存してきましたが、DX化により顧客はより多様になり、新たな顧客理解を理解する必要が出てきます。多様な人材が顧客の多様な背景を知ることができると、もっと深くサービスを設計することができるようになります。

障害の有無に関わらず、異なる専門知識、文化、世代、ジェンダー、生活経験などが混じり合うことで、新たに価値が創造されます。資本主義の原動力は「価値創造」ですので、この話は資本主義を根本的に変えるのではなく、あくまで「アップデート」になるのではないかと思うのです。

ちなみに、そんな多様な顧客背景を、同一のルールや固定概念のもとで理解することは難しいでしょう。例えば弊社の場合ですと、聴覚障害者向けのプロジェクトにいくつか携わっていますが、私は聴覚障害者ではないので、全部をきちんと理解するのは困難だなと感じています。なので自分と境遇が違う顧客の理解をする時(障害者向けプロジェクトなど)は必ず当事者に意見を聞いたり、時には上流から企画に入ってもらいます。

それぞれが生きてきた時代や経験、感性、その文化が纏う空気ってあるんですよね。そこを理解する人はとても少ないので、我々は多様な人材を非常に重宝しています。

ずっと健常者ではない場合が多い

生まれた時から健常者なら、ずっと健常者なのか?それは必ずしもそうではありません。障害者になる場合もあるし、年を取れば高齢者になります。

もしそうなったら、消費へのアクションも労働へのアクションも、突然アクセスが絶たれてしまうケースが多いでしょう。これでは長期的に見て、労働人口も消費者も減ってしまいます。

様々な人の生活ケースを考慮に入れながらプロダクトやサービスを開発することは、プロダクトやサービスを使える人の人口を増やし、可能性を広げることになります。こういう理由から、多様な人材が資本主義をアップデートすることはごく自然なことなのではないかと考えています。

支援ではなく協業の時代が、資本主義をアップデートする

マイノリティ、特に障害者は一昔前なら「守ってあげるべき存在」のように言われていました。しかし現代ではそうではないのではないかなと思います。健常者も障害者になりうるし、やがて高齢者になります。

こう考えると、私たちが暮らす社会には「誰もが支援されるべき弱者である可能性」と同時に、「誰もが他者を支援できる主体である可能性」が共存しています。ここで注目すべきは、「支援」という一方向の構図を「協業」という双方向の関係性に切り替える視点です。マイノリティと位置づけられてきた人たちを、ただの「配慮を要する存在」として扱うのではなく、彼らの視点、経験、スキル、そしてアイデアこそが社会やビジネスのイノベーションを牽引しうるリソースとして見直すのです。

「支援」から「協業」へ。このシフトが、従来の資本主義が見落としていた潜在的価値を掘り起こし、新しい時代にふさわしい経済モデルへとアップデートしていく鍵となるでしょう。


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方角は社会課題解決プロジェクトに特化したデザイン・企画制作会社です。
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