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2021年08月30日週 『ハナカク』『史上最強の哲学入門 東洋の哲人たち』『熱帯』読了

8月30日から9月5日までの読書に関する日記・備忘・そのほか。

Kindleを見てたら、松井勝法『ハナカク』が無料だった。

松井勝法は城アラキ原作の『ソムリエール』しか知らない。『ハナカク』は知らなかった。
読んでみると、これが実におもしろい。

JKの格闘技MMAものだが、胸が熱くなる。
スポーツ観戦で言う「勇気をもらった」がまったく理解のできない儂にも「こういうことか!」とわかった気がする。
諦めないで立ち続けること。それが大事。
大事MANブラザーズバンド。

単行本が売れなかったせいで打ち切りになったらしい。打ち切りにならなければ、絶対息の長い作品になったはずだ。もったいないな。

約ひと月かけて、飲茶『史上最強の哲学入門 東洋の哲人たち』を読み終えた。

最後の十牛図で涙が出るかと思うくらい胸を打たれた。何度も何度も観たことがあるのに。
これはすごいよ。見せてあげたい。さすがにスクリーンショットを出すのはまずいか。

第一図の「童子が牛を求める」尋牛から「牛の足跡を見つけ」「姿を見て」「捕まえて」「手懐け」「牛に乗って帰る」。その牛がいなくなって、訪れる世界は、牧人も牛もいない何もない「空白の世界」の第八図。
そして……、何もないところから自然がまた現れる。再び牛飼いの童子が現れるのだが、先の世界での童子(牧童)だった者が新しい童子に手を差し伸べる……。

あれ?と思ったのが、日本の仏教がオリジナルから「日本」のオリジナルに完全に変容するきっかけになった「山川草木悉皆成仏」の考えに触れてなかったこと。
オリジナルの仏教は人間を中心にした動物を対象にしていて、山河や草木にまで拡張したのは如何にも日本的に過剰。

日本文化の基層に南方の要素がかすかに見え隠れしているのは、いろんな識者の指摘するところだ。
全自然に仏を見る「山川草木悉皆成仏」の考えもそうじゃないかと儂は思う。

生命の色が濃い熱帯の風土からそんな考えが自然発生するんじゃないか。
まるで和辻哲郎の『風土』みたいなことを言ってみる。

ということで、次は『熱帯』

※※

森見登美彦『熱帯』が文庫になった。
即日読了。

いろんな読み方ができる。
ということはなにも書かれていないということ。

ある時点で、この小説は「森見の書くということ」として読めることに気づいた。
つまり、

『熱帯』という小説の中の『熱帯』という小説を書くことで著者である森見登美彦を救う小説

ということだ。これはすごい。
快作にして傑作だと思う。素晴らしい!

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