頼山陽と中島らも
頼山陽の掛け軸である。妻の祖父が上野のぼろ市で入手したというが定かではない。当の本人はすでに他界しているので確かめようもないのだが、義父は遺品故に処分こそしていないものの本物とは露ほども思ってはいない。それもそのはず、頼山陽の掛け軸というのはひところかなりもてはやされた事がありそれ故に贋作が殊の外多いといわれている。依頼(誰もしていない)品を見たこともないのでその状態や筆遣い、何が書かれているかは全く知らないのだが、義父の判断は至極まっとうと言えるだろう。見たところで真偽を見定める眼などこれっぽっちも持ち合わせてはいない。
TVを見ていると、何を根拠にそんなに自信が漲っているのかわからない人たちがワンサと出てくる。自己評価額ウン百万円、聞くとその作者すらロクに知らなかったりするから面白い。挙げ句の果ては「妻には内緒で買った」とか言っている。腹立たしいことこの上ない。客席に座った妻は「もう怒り心頭で」といいながらあわよくばを眼の奥に宿らせているのが見え見えだったりするので、きっと似たもの夫婦なのだろう。高値が出たら家族揃って海外旅行とか、依頼品に対するリスペクトのかけらもない。欲ボケ親父のギャフン(古いなあ)という顔を見るのが楽しみという人も多いだろうから、まあ人間鑑定団と言っても間違いではない。
なんていうのも、本棚の整理をしていたら「中島らものたまらん人々」というのが出てきたのだ。だいぶ黄ばんでいるがそれもそのはず昭和六十二年の発行とあるから、もう40年近く前。わけのわからん人、鼻につく人、いばりんぼ、しぶけち、だいがくせえ、「すっかりその気」のひとたち、ジンガイ魔境、ロック・アラウンド・ザ・フロック・・・見出しだけで想像できる人たちからなんのこっちゃの人たちまで、コピーライター中島らものユルくスルドイ人間論。文庫化されているけれど、こちらは初版の単行本。定価は980円、本人評価額は?(処分する気はさらさらないのだ)
見出しのイラストは「木花薫」さんの作品をお借りしました。ありがとうございます。