【連載小説:ホワイトハニーの未来へ】「第3章 予感って、」(1)
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あの朝、母が一年は残しておきたいと言っていた父の部屋は、大樹の予想通り、十年が経過した今も残っている。母は今も実家で一人暮らしをしており、寂しい毎日を暮らしているのかと思ったが、友人達と趣味の登山や観劇に勤しんだりと意外にも充実した日々を送っていた。
大樹は、大学時代からずっと付き合っていた美咲と数年前に結婚をした。結婚の際、美咲は母と暮らす事に賛成してくれたので、母に提案したが申し訳ないと断られた。その代わりと言っては何だが、母は美咲と仲良くしてよく買い物に