【Tsugumi×deko 鳥の刺繍Collection Op.5】「クリスマスローズの刺繍バッグ」
橘鶫さんの鳥の原画を使わせていただいて、刺繍作品に仕立てる「Tsugumi×deko Collection」の5作めがようやく仕上がりました。
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昨秋、noteをはじめた頃から親しくしていただいているおともだち(と、私が勝手に思っています)に、念願かなってお会いすることができました。
その日は朝から小雨もようで。あこがれの銀座和光のティールームで待ち合わせをしました。時計の文字盤に並んだプティフール(←これが目当て)をいただき、伊東屋を散策し、たくさんおしゃべりをして楽しいひとときをご一緒してくださいました。
新幹線の時間までまだ少しあるからと、最後に銀座通りを眺めながらもう一度お茶を楽しみました。その席で、彼女は朝からずっと肩にさげていた袋から「これ」と贈り物の包みを渡してくれました。
丁寧に梱包された包みを開けると、入っていたのは、私が前からずっと欲しかった小鹿田焼の飛び鉋の盛皿でした。
感動で声が出ないとは、こういうことを言うのか、と思いました。
小鹿田焼は、作家の銘が入っているような「鑑賞する」器ではなく、食卓で料理と共にあるふだん使いの器です。あたたかみのある肌理や実直な作りを、バーナード・リーチや柳宗悦ら民藝運動の作家たちがこぞって愛した、まさに「用の美」そのものの器です。ふだん使いの器であるため、かえって百貨店等の器コーナーに並ぶことも稀。かといって工業製品のように大量生産されるものでもないため、めったに見かけないのです。また昨夏の台風で小鹿田の里は大きな被害を受けていました。市場に出回る品そのものが激減していました。欲しいけれど、どこで手に入れればよいのかをわからない。いつか偶然にも出会うことができたら、そのときに、と思っていました。
それを。
昨夏に台風被害の爪痕も残る里を心配して訪ねた彼女が、私のために大皿を一枚、連れ帰ってくれていたのです。旅先で私のことを思い出してくださっただけでも、胸がつまりました。
その優しいお心遣いがありがたくて。何かそのお気持ちに、いくばくかでもささやかなお礼をしたいと思いました。儀礼的なお返しではなく、感謝の気持ちをお伝えできるものを何か。
はたと悩みました。
彼女のように心のこもったもの……。しばらく考えあぐねて、ようやく、私にできることといえば我流の刺繍ぐらいしかないと思いいたりました。
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そこで、また、例のごとく鶫さんに泣きつきました。
そのおともだちは、赤や薄桃色の似合う方です。勝手に鶫さんの『鳥の絵をのせるだけの日』コレクションをあさり、「ああ、まさにこれ!」と見つけたのが、『クリスマス・ローズ』のタイトルの絵でした。
このピンク色の愛らしい小鳥は、英語名がPink-headed warbler。日本語名はズキンベニアメリカムシクイというそうです。
この原画は、鶫さんの絵の販売サイトからすでにご購入された方がいらっしゃいました。それは、そうですよね。こんなに魅力的なんですもの。
版権は鶫さんにあるのですが、「ねんのため」とご購入者の方の了承もとってくださいました。
(お世話とお手数をかけっぱなしで、すみません)
そして、それを刺繍したのが、こちらです。
このシリーズの記事を書くたびに思うのですが。
鶫さんの原画と、私が刺繍にしたものを写真に撮って並べると、何か微妙に違って……とほほ、となります。刺繍をしているときには、「今回は、いい感じにできたかも」と思ったりしているのですが。(←身の程しらず)
原画をトレースして、その通りに刺しているつもりなのに、なんでしょうね。頭の角度とかが、おかしい。くちばしの下のふくらみが足りない?
原画の、小鳥がくいっと首をかしげている感じが表現できてない……。
ああ、まだまだだな、といつも思います。
バッグに仕立てたのが、こちらです。
私からの押し付けのお礼ですが。
心優しきおともだちのもとに、私のささやかな気持ちを届けてくれると、いいなと願っています。
これまでの作品は、こちらです。