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読書日記「おらおらでひとりいぐも」

近くの公民館の図書室から借りていました。返却期限が迫ってきて、急いで半日で読み切りました。借り直しもなんぼでもできるのですけどね。

なかなか面白かったです。もう返してしまったので、覚えていることだけで感想を書きます。(果たして書けるか)内容にも触れます。(ネタバレします)

なんで面白かったのか

東北弁が出てきます。初めはそれに引っかかりました。意味が分からないのもありました。でも、わからなくてもいい。何となくわかる。それは桃子さんの心だからです。標準語もあります。三人称の文は標準語で書かれています。

主人公、桃子さんの姿が目に浮かぶようでした。子どもの頃から始まり、夫に突然死なれ一人暮らしの現在まで、桃子さんの人生という野太い一本の線がお話の中に引かれているようでした。そして、その傍らに、出来事、感じていたこと、思っていたこと、嗅いでいた匂いなどが、感覚とともに立ち上がってきます。昔の自分やおばあさんが現われます。

心の中の思いや葛藤が現われてきます。

桃子さんは、自分の人生の意味を考えます。あれこれ考えたり悩んだり、寂しい思いで立ち止まります。でも、たくましいんです。亡夫のお墓参りをするために、ずんずん進んで行くように。草ぼうぼうでも、転んで怪我しても歩いて行くように。

「ひとりいぐも」 一人で行くんです。でも孤独ではありません。

自分も同じ境地



構成が素晴らしいと思いました。桃子さんの周りに立ち現れる音や幻想。ずんずん歩く桃子さん。東北弁(この部分は改行がありません)と標準語の対比。

桃子さんの年齢は、私より少し上。作者も同年代です。だから、今の自分の身に置き変えて、いろいろ考えることができて良かったです。共感できるところがたくさんありました。

老いや死はすぐ近くにあるけど、でも、大丈夫。ひとりでいぐ。終わり方は明るかったです。桃子さんがたくましいから。単にたくましいのではない。すべてを受け入れて進む道だから、明るいのだと思います。

読後感がよかった。


著者は夫に55歳で死なれてから小説講座に通い始めます。
8年かけて初めて書いた小説が2018年芥川賞。
次作も出ましたよね。

これは、その年だからこそ書けた本ですよね。
励みになります。


 タイトル:おらおらでひとりいぐも
 著者:若竹千佐子
 出版社:河出書房新社。文庫本が出ています。
     映画にもなったようです。

タイトルは、宮沢賢治の詩「永訣の朝」にあるそうです。
本を返して、また次を借りてきました。読書の時間はたっぷりあるけど、借り過ぎ。

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