「父と暮せば」映画と本と
*映画編
近くの映画館で行なわれていた「戦争映画特集2023」のひとつ。
井上ひさし原作の「父と暮せば」を見てきました。またまた最終日鑑賞。(なぜか、そうなる)
2004年製作 原作:井上ひさし 監督:黒木和雄 出演:宮沢りえ、原田芳雄、浅野忠信
全編に流れる広島ことばがとてもきれいでした。
宮沢りえ演じる美津江が美しかった。おとったんとのやり取り、掛け合いが面白くてやがて哀しく、心が揺すられました。
なぜ、おとったんは現われたのか。そこが泣ける。
原爆で亡くなった者と生き残った者。幸せになってはいけない自分と幸せになりたい自分。セリフのひとつ一つが説得力をもって伝わってきました。途中で挟まれる原爆の絵や資料も迫力がありました。
「父と暮せば」は舞台用に書かれた戯曲で、劇団こまつ座で1994年に初演となっています。
あまり内容には触れないように、と思っていたのですが、一つだけ。
美津江が、夏休み子どもおはなし会に備えて、昔話の練習をする場面があります。
私「そのおはなし、知ってる!」「絵本にもなってる!」と思いました。広島のお話だったのか。
それと、「宮沢賢治が好き」と言っていた。「永訣の朝」とか。これも嬉しかった。
内容とあまり関係なかったですね。
*文庫本編
確か、この本は買ったはず。
そう思って、帰ってから本箱を見てみました。ありました!すぐ分かるところに。
いつ買ったのでしょうか。もうかなり前と思います。私は読んだのでしょうか。ちゃんと読んでいないと思います。映画が新鮮だったから。もしくは覚えていない。
読んでみました。薄い本です。すぐに読み終えることができました。 脚本でト書きもあります。場面設定もセリフも、映画とほぼ同じだったので、読みながらもう一度この作品を味わうことができました。
*平和への思い
生前、井上ひさしさんは平和への決意を、作品を通して、そしてその他の場でもはっきりと表明されていました。ご自身の言葉が「前口上」と「あとがきに代えて」と2ヶ所にありました。特に前口上で、そのことについて書かれていましたので、引用・要約させていただきます。
《ここから》
ヒロシマ、ナガサキの話をする時、「いつまでも被害者意識にとらわれてはいけない、アジアに対しては加害者でもあったのだから」という意見に対して。
後半の意見は当たっているとしながら、しかし、前半の意見に対しては、あくまでも「否!」と言い続ける、と書いています。
「あの二個の原子爆弾は、日本人の上に落とされたばかりでなく、人間の存在全体に落とされたものだと考えるからである」
「だから被害者意識からではなく、世界五十四億の人間の一人として、あの地獄を知っていながら『知らないふり』をすることは、罪深いことだと考えるから書くのである」《終わり》
「日本だけの問題ではない、世界全体の問題なのだ」
「言い続けないといけないのだ」と言っておられると理解しました。
この映画の感想を書くことが、私のささやかな意思表明とさせていただければと思います。
解説の方が、「核廃絶に至るじつに困難な道を歩くための支えになる『鍵言葉』が、『父と暮らせば』の中にある」と書いておられます。地球が平和になるための「鍵」は、案外と、こういった文学や芸術のなかにあるのかもしれない。そんなことを思いました。
戯曲の素晴らしさ
映画の本筋から少し外れてしまったでしょうか。そんなことはないと思います。
そして、この作品が映画(戯曲)として素晴らしいこと。それは何をさておいても一番に言えることと思います。人としてのあり方。心の揺れ動くさま、人を恋する気持ち。家族を想う気持ち。どれもが心に迫ってきました。終わり方も、これからが明るく思えて、気持ちが暖かくなりました。
戯曲だからこそ表現できるもの。
井上さんは、「劇場の機知」と言っておられます。参考文献の多さにも驚きました。(こんなに読んでおられる)
私の心の財産がひとつ増えました。
*見出し画像のは映画館にあったチラシより。