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映画『リッチランド』~キノコ雲の校章

長崎原爆忌の9日、映画『リッチランド』を見てきました。第七藝術劇場。
『オッペンハイマー』を見たかったのだけど、こっちが最終日だったので。

ガラガラではなかった。2割くらいかな。(ガラガラというのか)
『オッペンハイマーのその後』とあったので、その流れで来た人がいるのかも。

考えも、感想もいろいろ。これを書くのは、まずは自分のための記録。これはあくまでも個人的な感想ということをご了解いただけたらと思います。

その上で、このゴチャゴチャした長い文章を「読んでやろうじゃないか」と思って下さる方がいらしたら嬉しいです。


             ***


リッチランド。
アメリカワシントン州南部にある町。

1942年からのマンハッタン計画における核燃料生産拠点「ハンフォード・サイト」で働く人たちと家族が暮らすために作られた町。

長崎に落とされた原爆「ファットマン」のプルトリウムは、ここで作られた。
リッチランド高校の校章は、キノコ雲。

映画は、リッチランドの日常風景とともに、関連するいろいろな立場の人が話をする。

「原爆は戦争を早く終わらせたことに貢献した」と町に対する誇りを持つ人々。
ハンフォード・サイトで働いていた人。
ハンフォード・サイトで働いていた兄を、関連する病気で亡くした女性。
核開発記念のイベントで、「ここはいい所」とゆっくりする高齢者夫婦。


映画『リッチランド』を読み解くキーワード(パンフレットより)
①アメリカの原爆史感
  複雑な要素が絡み合う。正しかったという意見は減っている。
②セトラー・コロニアリズム
  先住民族の問題
③風下住民
  慢性的に放射性物質を排出し続けていた。
  2000人の住人が訴訟中。
④福島イノベーション・コースト構想
  福島第一原発の事故以降、研究分野を中心に産業を集積し、復興の切り札にしようという構想。このモデルがハンフォード・サイト。

私の感想

・極端なところがなく、いろいろな人々の率直な声を聞かせてくれたり、現状を伝えてくれて良かった。余韻が残った。

・これはアメリカ映画。立ち位置はアメリカ。アメリカから見た原爆。

・日本だって、79年前のことは意識しないと現実味が薄かったりするのに、アメリカでは「遠い話」になるんだろうな。

・でも、リッチランドでは、施設の環境浄化が永遠に続くと言っていたし、健康被害の不安もあるし、過去の問題ではないんだ。

・「原爆が戦争を早く終わらせた」という考えは、やはりショック。惨状を知らないのではないか。
  国や我が町を誇りに思うことには、なんの異議もないのだけど、話は別と思う。

高校生の感性

・リッチランド高校生が、庭で話し合う場面が印象的だった。キノコ雲の校章について、その他。

男子生徒1:兵器だろ。それも大量破壊兵器だ。校章がたとえ銃でも僕は嫌だよ
全員:そうだね
男子生徒2:僕は校章よりスローガンが嫌だな。
男子生徒3:分かる。核攻撃を美化している感じだ。原子モデルの方がこの町の業績を素直に表現できると思うよ。だって、放射線物質はいいことにも使えるだろ。

パンフレットより引用

過去にとらわれない、素直な価値観で話をしている。監督も「高校生に任せます!』と言っていた。

先住民族の生き方

・リッチランドは、もともと先住民族の土地だった。長老のような初老の男性と甥の話も印象に残った。

 突然、土地を追われ、文化や風習も失われた。

「この土地は、僕たちの宗教において重要なんだ。この土地を守る役目を僕らは負ってる。土地が与えててくれる愛を返すんだ。動物にも愛を。薬草にも 木の根にも」
「甥の言うとおりだと思う。私たちを支えているのはまさにその認識。これが私たちと その生き方。両親からもそのように教えを受けてきた。

パンフレットより引用

先住民族の問題は、リッチランドだけの問題じゃないと書いてあった。アイヌ民族とかも同じだって。

原爆のインスタレーション

被爆三世で、アーティストの川野ゆきよさんが講演する場面。唯一、日本の立場からの発言。


祖母の着物から、長崎に落とされたファットマンの造形を実物大で作り、広々とした川べりに展示する。

最後の場面で、風に揺れていた。


パンフレットがすぐれもの。監督の話など。
映画を見たあとで、頭を整理してくれた。


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