「誰が正しいのか」よりも知りたいのは——トーベ・ヤンソン『誠実な詐欺師』、日高敏隆『春の数えかた』
拝啓
夏の忙しい日々が、ようやく終わりました。のびた髪を切り、傷んだ靴を新調し、ゆがんだ生活リズムを整えているところです。重い瞼に抗いながら、読書する時間も取り戻しつつあります。
前便でご紹介した石村博子『ピㇼカ チカッポ 知里幸恵と「アイヌ神謡集」』が、あなたをそんなに動揺させるとは思いもよりませんでした。アイヌに生まれ育った一人の少女がみずかららの本質である神謡を命を賭して紡いだ物語であり、書くといういとなみに、生きる悦びを見出した知里幸恵に学びたかったのです。
補