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インタビューで大切にしている20のこと 1/4 【準備編:事前にできること】
人に話を聴いて文章を書くことを仕事にして約30年になります。そのうちの半分をフリーランスライターの仕事だけでやってこられたのは、この「聴いて書く」ことが、自分の性分に合っていたからだと思います。
ただ愚直に仕事と向き合ってきただけですが、気づくと自分の中にルーティンが生まれていました。この記事ではそのルーティンを記したいと思います。
とても項目が多く、マニアックな内容なので、もっと簡単にインタビューで大切なことを知りたい方はこちらをどうぞ。
https://note.com/deep_garlic9546/n/nc940c4507e1e
1. 企画者と目線を合わせる
インタビュー取材には、立案した企画者(編集者やディレクター、社内であれば上司など)がいます。とにかく大切なのは、取材の依頼を受けた後に、しっかりとインタビューの目的と着地点を共有し、目線を合わせることです。
ふわっとしたままだと、インタビューの現場で、そして記事を書きながらズレが生じて、コンセンサスを取るのが難しくなっていきます。まずは、腑に落ちるまで企画の趣旨を理解することが肝心です。
2. 事前情報は平等に
多くの場合、企画者からインタビュー対象者に関する事前情報が提供されます。企画書、資料、関連のURLなど。大切なのは、企画者とライターが互いに事前情報をできる限り共有することです。ライター側からも調べて入手した情報を企画者へ提供します。
インタビューは企画者とライターの共同作業と言えます。事前情報の偏りを無くすことで、両者が共通認識を持って、取材を進めることができるのです。
逆を言えば「その情報、なんで事前に共有してくれないの?」という感情が芽生えてしまうと、不信感につながりかねません。私の場合、これが原因で仕事が続かなかった企画者がいました。
いわゆる「情報の非対称性」をなくすことが、チームでインタビュー取材を進めるうえで重要なのです。
3. 周到な準備から"聴く必然"が生まれる
企画の趣旨を理解したら、インタビュー対象者とテーマについて調べていきます。提供された事前資料を読み込むのはもちろんですが、関連する情報をネットで検索していきます。
「これは知っている」という先入観を外して、少しでも理解が曖昧なものは正確な内容を学んでいきます。企業のオウンドメディアの記事を社内で作成する場合でも、自社の事業と取材対象者の仕事について改めて学ぶよい機会となるので、調べる手間を惜しまないようにしましょう。
その準備を通じて、聴き手としての必然のようなものを感じられたら、一気にインタビューが楽しみになってきます。
準備の作業で私が心がけているのは「脱線」です。取材すべき人やコトに関する事象のまわりには、初めて出会う出来事や世界が広がっています。「仕事に関係ない」と線引きせずに、どんどん新しい情報に触れていく時間がインタビューを豊かなものにすると思います。
4. 質問事項を列挙する
ひと通り資料の確認が終わったら、質問を列挙していきます。
質問事項を整理するうえで大切なのは「展開」です。最初は思うがままに列挙するだけでよいのですが、ある程度出し尽くしたら、展開を考えていきます。
どのような順番で質問をしていったら、話が流れるか? 自分が聴きやすいか? 相手が答えやすいか? インタビューをイメージしながら展開を考えていくのです。
PCで取材項目を整理して、取材の前夜ぐらいにプリントアウトします。でも、そこから「これも聞かなきゃ、あれも聞きたい」というのが出てきますので、それを青字で書き込んでいきます。
5. 他者の質問案は自分流にカスタムする
取材によっては、事前に質問案を作成して、取材対象者に送る場合があります。企業のオウンドメディアなどでは、事前アンケートを作成して対象者に回答を依頼することもあります。
企画者が質問の原案を作成して、ライターは質問案の確認と加筆を求められる場合もあります。その際、企画者に了承を得られれば、想定するインタビューの展開に沿って、質問の順番を変更します。
質問案は、インタビューの台本とも言えます。現場での取材者であるライターが腑に落ちていない展開での質問案を提出してしまうと、それがインタビューのリズムに影響を及ぼすおそれがあるのです。
もし、事前質問案の順番の変更が難しい場合は、インタビューの現場で聞く順番を変える準備をしておきます。私の場合は、自分の展開イメージに沿って質問の順番を組み替え、そこに付随する情報を整理しておきます。その場合は、インタビューの冒頭に「事前にお渡しした質問案とは少し順番を入れ替えながら質問をする場合もあります」とお伝えしておきます。
企画者や取材相手に配慮しつつも、聴き手である自分自身がパフォーマンスを発揮できる話の流れを整える準備をする。そこまでが、インタビューの前日までに行う準備です。
もちろん、レコーダーの充電など必要な機材の準備も忘れずに。
次回は【準備編:当日できること】です。