迷惑亭

見た映画や小説の感想を書きます。だいたいネットフリックスかアマゾンプライムです。筆力を鍛えるために1,000字以上を目指します。良ければ読んでください。

迷惑亭

見た映画や小説の感想を書きます。だいたいネットフリックスかアマゾンプライムです。筆力を鍛えるために1,000字以上を目指します。良ければ読んでください。

最近の記事

    • カンボジア🇰🇭のアメリカ大使館前でガザ連帯のスタンディング(2024.10.7)

      1年前の10月7日、長年にわたるイスラエルによる占領と侵略に抗うため、ハマスが奇襲を仕掛けた。それ以降イスラエルの空爆と虐殺はエスカレートし、天井のない監獄は槍が降り注ぐ監獄となり、絶望の声で溢れている。世界では抗議の声が拡大し、明確にイスラエル支持を打ち出す国も今ではアメリカとドイツくらいとなっている。しかしそんな国際社会の非難をものともせずイスラエルは虐殺の手を緩めようとはしない。 私はハマスの蜂起から3ヶ月ほどはガザ連帯の運動にも精力的に参加していた。京都では知り合い

      • 10.7蜂起からもうすぐ1年

        ハマスによる奇襲、それに伴い激化したイスラエルによるガザへのジェノサイド(大量虐殺)。あと2週間ほどで一年が経とうとしています。一方的な暴力と迫害がまさかここまで続くとは一年前の私は思ってもおらず、国際社会の役割の放棄と自分自身の無力感を悔しく思っています。 10.7蜂起から3ヶ月が経った頃まではほんとうに精神的にしんどかったです。それなりの運動の盛り上がりがありつつも日本政府のイスラエル支持の姿勢は変えられず、中東という一般の人からは縁遠く感じる地域の事柄なだけにウクライ

        • 坊ちゃんの「美人」描写の秀逸さ

          青空文庫のアプリで久しぶりに夏目漱石の「坊ちゃん」を読みました。主人公のまっすぐで正直な‘竹を割ったような’性格に、実のない虚飾のカッコつけをこき下ろす痛快な喩え悪口の数々。こんな気持ちのいいやつとぜひ友達になりたいと嬉しくなりました。 坊ちゃんの前に読んだ「銀の匙」は言葉も古風で密度が高く、それと比べると読みやすさが段違いで、面白いようにするする読み進められました。気に入った表現はそんなに見当たらなかったのですが、それでも一つだけハッとさせられる文章がありました。 場面は

          韓国で「関東大虐殺」追悼スタンディングをしました(2024/09/01)

          (筆者は在日韓国人3世です) 企画した動機 友人が関東大震災の朝鮮人虐殺についてドキュメンタリー映画を作った。事件の記憶と追悼行事を行う「ほうせんかの会」という団体を運営している女性に密着したものだ。 去年、事件から100周年となった。東京では追悼行事が開催され、多くの人が集まったと報道された。関西に住んでいる自分からすると東京は遠いなと思い行かなかったのだが、テレビ報道で同世代の日本人が追悼文を読んでいる姿を見て、自分も行けば良かったと後悔した。そこから来年は自分でも

          韓国で「関東大虐殺」追悼スタンディングをしました(2024/09/01)

          【運動家必見!】韓国ソウルでおすすめの運動&歴史学習スポット7選(随時更新)

          そこらへんの適当な観光ブログでは知れない(て言うほどマニアックではないけど)、日本による植民地支配や民主化運動の歴史を学べるスポットを紹介します。 日本と違い、博物館や美術館でかなり無料の場所が多いので、色々行ってみてください。小さな記念館でも同様です。お金かかったとしても、やっぱりかなり安いです。 一番最後に、毎週確実にやっている韓国の中心的な運動現場を紹介しています。そちらもぜひ足を運んでみてください。 【戦争と女性の人権博物館/전쟁과여성인권박물관】 日本軍性奴隷問題

          【運動家必見!】韓国ソウルでおすすめの運動&歴史学習スポット7選(随時更新)

          「私たちがインディアンだと思っていた人々」展/韓国•国立中央博物館

          ソウル市ヨンサン区にある国立中央博物館に行ってきました。「우리가 인디언으로 알던 사람들 /私たちがインディアンだと思っていた人々」展を見た報告と感想を綴らせていただきます。2024年10月9日までの特別展なので、訪韓予定のある方はお早めに。 入り口すぐ、スキーの板のようなものが展示してあった。説明文を見ると、子供のゆりかごだった。子供をここに入れて馬に繋いだり、持ち運ぶという。布で体に括り付ければいいものを、わざわざ一つ作るのにでも骨が折れそうなゆりかごで子供を守る。子

          「私たちがインディアンだと思っていた人々」展/韓国•国立中央博物館

          市民運動に大事なのは「楽しさ」ではなく、「意義を信じられているかどうか」だと思う。

          どうすれば日本の市民運動が盛り上がるのか、悩みに悩んでいた。 日本の集会やデモを見渡せば学生・青年が少なく、30-50代の中年層がぽっかりと抜け落ちている。単純に同世代の運動家が少ないのは寂しい。そして、使い回しの言葉と自己紹介ばかりで内部への問題提起もない「予定調和」な各運動団体のスピーチ。集会を締める(※締まっていない)覇気のない全体コール。一本調子で前回から工夫をした痕跡の感じられないデモコール。 このどれもに、ずっと、ムシャクシャしていた。なぜもっと一回一回にエネ

          市民運動に大事なのは「楽しさ」ではなく、「意義を信じられているかどうか」だと思う。

          2021年総裁選に見る、自民党員ですら総理大臣を選べない究極の茶番劇

          時代は「誰」を求めるか? いま世間を賑わせている今年の自民党総裁戦のキャッチコピーである。よくこんなに白々しい言葉を使えたものだ。 〈日本には民主主義がない〉という市民の嘆きをよく聞くが、そもそも間接民主主義や三権分立ですら成立しているとは言えない、はるか手前の政治制度になっていると思う。 小学生の時に社会の授業で、日本は国会議員の投票で総理大臣が選出されるから「立法権」と「行政権」の距離が近いと教えられた。思えばこの時から、日本の選挙制度に対する不信感が生まれた気がす

          2021年総裁選に見る、自民党員ですら総理大臣を選べない究極の茶番劇

          【運動家必見!】台北(台湾)で行くべき歴史・政治スポット10選

          ★台北で絶対行くべき!…なところ★ 二二八国家記念館 1947年2月28日に台湾省台北市で発生し、その後台湾全土に広がった、中華民国政府による長期的な白色テロ(独立運動家や知識人など反体制派の大量虐殺)の歴史が学べる。説明文もそこまで多くなくスッキリとしていて見やすい。展示の見せ方も工夫がされている。 ※一展示ごとにQRコードがあり、スマホで読み取れば音声案内が聞けて内容をざっくりと理解できるようになっているが、館内のWi-Fiが弱すぎるので使えない。ちゃんとSIMかe-S

          【運動家必見!】台北(台湾)で行くべき歴史・政治スポット10選

          サピエンス全史が与える人類史観の背骨、また「マクロ視点」の不在という日本の課題

          「サピエンス全史 文明の構造と人類の幸福/ユヴァル・ノア・ハラリ」 読了! 積ん読になっていたのを旅の友に連れ出して、タイ→フィリピン→韓国→香港→台湾と読み続けてきました。とても刺激的で、それでいて読みやすいのですがなんだかんだ時間がかかってしまいました。今日やっと読み切りました。 まず、この本を旅の中で読むことができてほんとうに良かったと思います。大きな流れとして人類の進化史と未来について考えることができ、地理的なだけではなく時間的な感覚でも世界をマクロに捉えて考える

          サピエンス全史が与える人類史観の背骨、また「マクロ視点」の不在という日本の課題

          【台湾の赤ひげ】貧困者の治療に生涯を捧げた清水照子

          現在、台北(タイペイ)からこの記事を書いている。今回は台湾を旅する中で知り感銘を受けた、ある日本人の方を紹介したいと思う。 その方は、施照子(シー•ジャオツー)さんという女性だ。帰化される前の日本名は、清水照子さん。以下に彼女の生涯をまとめた。 清水照子は1910年、京都市の下京区で生まれた。家庭は父親が和紙問屋を営んでいて裕福だった。二条女学校を卒業した後、夫となる施乾と出会う。台湾総督府の商工課に勤務していた施乾は、台北市内の貧困層の調査をしていく中で、生活困窮者や不治

          【台湾の赤ひげ】貧困者の治療に生涯を捧げた清水照子

          斎藤幸平の「オリンピックをボイコット」は正しいが、少しだけ違和感。

          NEWS23での斎藤幸平氏のコメントが話題になっています。 「スポーツウォッシュに加担したくない。」「ロシアは出場できないのに、国際司法裁判所も違法としているイスラエルが参加している。みんながオリンピックよかったね!ってなるとパレスチナの人が忘れられたことになるので抵抗している」 いつもオモシロ批評か薄口コメントでお茶を濁している割には今回は頑張ったな、という印象です。ただ、「ダブルスタンダード」という指摘には少しモヤっときました。ほんとうに重箱の隅をつつきたいわけではない

          斎藤幸平の「オリンピックをボイコット」は正しいが、少しだけ違和感。

          韓国ドラマ「旋風」に見る言葉の力と独特の政治文化

          いま話題のNetflix制作の韓国ドラマ、「旋風」を見始めました。 相変わらず、韓国で作られた政治を扱った作品はレベルの高さを感じます。権力闘争やミステリーを絡めてはいるものの、観客に媚を売るような小手先の工夫はなく、ハードな政治モノにしつつも圧倒的な駆け引きの面白さでもって視聴者を惹きつけてきます。 まだ一話しか見ていませんが、印象的だったセリフを紹介します。 「政治は算数じゃない。数学よ。 変数もあるし、未知数だってあるの」 しびれますね。残念ながらこれは、主人公

          韓国ドラマ「旋風」に見る言葉の力と独特の政治文化

          夏目漱石の「こころ」は小説としての構成が終わっている。

          高校生の時にはじめて読んだ「こころ」を、久しぶりにフィリピンで読んだ。海外放浪中でやることがなかったので、小説に飢えて、スマホに青空文庫のアプリをインストールした。昔の旅人は日本から持ってきた本を読み終えたら、旅先で出会った人と交換していたらしい。自分が全く手も出さなかった山岳小説や詩集なんかを偶然手にするのを想像すると、新しい世界が開けるようでロマンを感じる。いまではスマホを持っていればKindleで新著も読めるし、青空文庫のアプリを入れれば古典の名著も楽しめる。交換する必

          夏目漱石の「こころ」は小説としての構成が終わっている。

          「銀の匙」で日本語の美しさを堪能する。

          今まで読んできた小説の中で、一番表現が美しいと思ったのは、中勘助の「銀の匙」です。 この小説は日本文学の名作で、僕が憧れてやまない地元兵庫県のエリート学校「灘中学」の教材として使われたことでも有名です。灘中学・高校は今となっては東京の開成高校と肩を並べる日本屈指のエリート学校ですが、まだ「関西の進学校」程度の存在だったころ、ある国語教師が教材としてこの本を使いました。彼は一般の教科書は使わず、中学3年間をかけて「銀の匙」一冊を徹底して熟読するという前代未聞の授業を行ったので

          「銀の匙」で日本語の美しさを堪能する。