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【雑記】絵を描く集中力を鍛える方法を格ゲープロのウメハラさんから学んだ話

絵を描き始めてからかれこれ今年で4年目だが、初期の頃からずっと悩んでいたことがある。長時間絵を描き続けることができない点だ
言ってしまえば集中力が続かないのだ。1時間描いてはすぐ休憩を挟んだり、時間が経つにつれて作業より休憩の時間が長くなったりしている。ちょっと描いてはすぐスマホを触ってしまい、作業が全く捗らない。

以前からこの悩みは認識しており、何度か改善しようと試みたものの全て徒労に終わっている。
結果として「自分は集中力が無い性格だから、無いなりに上手く付き合うしかないかぁ」みたいな感じで、半分諦め気分の中今日まで絵を描いてきた。

そんなある日。
休憩時間にYouTubeで動画を流し見していた時、ふと一つのShort動画が目についた。格ゲー界の大御所であるウメハラ選手が、ひたすら昇竜拳を繰り返し練習する動画だ
去年あたりから格ゲーに関する動画を見るようになり、YouTubeから度々様々な格ゲー選手の切り抜き動画がおすすめされていた。その動画も切り抜き動画で、何の気なしにタップしていた。

動画としてはタイトルの通りで、ひたすらウメハラ選手が昇竜拳コマンドを繰り返すだけのシンプルなものだ。だが自分はその内容に大きく驚いた。
片側から昇竜拳を20分間ひたすら繰り返し発動している。それが終われば今度は反対側から再び昇竜拳を20分間繰り返し発動する。合計40分も同じコマンドを反復していたのだ

これを見た瞬間、目から鱗が落ちた。
これまで自分は正直なところ、プロゲーマーはひたすら本番(ランクマッチや大会)をこなしてそこから学びを得ていると思っていた。
野球で言うところの素振りの概念が格ゲーにあるとは思っていなかったのだ。
しかもこの動画は過去のものではなく、ストリートファイター6が発売されてからの動画なのでここ最近の話だということがわかる。
ウメハラ選手は何十年とプロとして活動しているが、格ゲー界のレジェンドとも呼ばれる人でさえこういった地道な反復練習を欠かさず行っていたのだ。

そこで自分は気付いた。反復練習は絵描きにも通じるものがあるのではないか?と。自分は絵に関する反復練習を全然やってないなとふと思った。
ということで、今年の3月ころから描く動作の反復練習を始めてみることにした。
以下にその練習の一部を抜粋して紹介する。


●練習

3月 10段

勝手がわからないのでとりあえずで始めてみた。縦・斜め・横の各方向を気まぐれで描いてみる。
描き始めて1分もしないうちに身体がムズムズしてきて続けるのが辛かった。この1枚を描くだけでも心身ともにいっぱいいっぱいだったのを覚えている。
普段やらない動作を反復するのはめちゃくちゃムズムズする


5月末 15段

時間を見つけてはコツコツ続けてきて、多少は連続して描けるようになった。
それでもまだ身体がムズムズする。このムズムズをひたすら我慢し、自分ができる上限を上げていくほかない。筋トレと同じだ。


7月 17段

段々余裕が生まれてきた。線の形やズレも安定している。
この頃になってきてようやくムズムズの頻度が減ってきた。長時間続ければまだムズムズするが、初めのころほどではない。

絵描きの方にも影響が出始める。これまではスケッチやドローイングといった絵描きを長時間できなかったのだが、目に見えて続けられるようになった。長くて1時間だったのが、午前中ずっと絵を描けるくらいにはなったのだ。
ここまでやってきてようやく練習してきてよかったと実感することができた。「この練習は無駄かもしれない」という恐怖が付きまとう中で練習を続けるのはやはり辛かった。
ただ過去に絵の習慣化と称して1年間で写経を157枚書いた頓珍漢な実績があるので、これが謎の自信になった。この手の地味な作業を続けるのは慣れっこなのである。

7月末 23段

ずっと同じ方向から線を描いていても良くないので、別の角度を試すようになる。
また1からかと思ったが、これまでの練習の甲斐があってかそこまでムズムズしなかった。ムズムズはしたが
要領はこれまでと同じなので、初期のころほど苦労はしなかった。なおA4用紙の裏表に描いているので、ちょくちょく穴が開いて困る。


7月~8月 27段

上から下方向への練習は何度も繰り返したので、今度は下から上に描く。草むらを描く時の動作なので、草むらを描く意識を持ちながら練習した。
やる気の無いときや時間が取れないときが当然あるが、そんな時でもなるべく毎日継続するようにした。1行だけでもいいので毎日継続欠かさず描いた。0と0.1ではかなり違う。サボり癖を減らすためにも心がけている要素だ。


8月

縦方向ばかりやっていたので横方向もやるようにした。右から左、左から右といった感じで、あらゆる角度と方向を練習する。
特定のステータスではなく全体の平均を上げるように練習すると、成長は遅いもののその分安定感は増す。
「特定の方向からしか顔が描けない」みたいに、選択肢を増やさないと表現の幅は限られてしまう。嫌なことや面倒なことでもチャレンジしていかないと結局割を食うのは自分なので、後で辛い思いをするくらいなら早めに苦労した方が自分のためになる…と思いきかせながら、できないこと・慣れないことには積極的に挑戦した。


最新版 39段

もっと細かく描くようにした。段数を増やしたせいで3~4時間かかったが、当初見られたムズムズは解消した上、集中が途切れることも無くなった。格段に改善したと言えるだろう。
終盤では中指が攣りそうなくらいパンパンになったものの、何とかやりきった。

余談になるが、この練習をしている最中にイラストにはマクロとミクロの2つの領域が存在することに気付いた。マクロは全体的なシルエットや形状を指し、ミクロは細かい細部や模様を指す。これらのおおよその分類は画面に対する比率で決まり、画面全体を見たときに小さいと感じた部分はミクロに該当する。

紙にスケッチした場合、用紙のサイズは決まっているのでマクロとミクロの違いがはっきりわかりやすい。それに対してデジタル環境では自由にズームできるので、マクロとミクロの境界があいまいになってしまう。
以前学校の講義で講師の方が「なるべくズームは使わないで描いています」と言っていたような覚えがあるが、ここでようやく合点がいった。マクロとミクロの境界をはっきりさせておくために、意図的にズームを使わないようにしているのだ

(描きやすくて便利なのになんでズームを使わないんだろう)と思ったが、そういうことか!と膝を打ったのが記憶に新しい。以上が余談。

●成果

一つは描く動作に慣れた。これは目に見えて良くなった。もう一つは長時間座って作業できるようになった。正直最近はゲームにしろ作業にしろ1時間も座っていられなかったのだが、今回の練習をしてからは苦にならなくなった。
あともう一つ、字を書くのが少し上手くなった。「かく」要領としては絵も文字も同じなので、思わぬ副産物と言えるだろう。

もちろん長時間座っていられるからといって、休憩しなくてもよくなったわけではない。座りっぱなしはエコノミー症候群を誘発する可能性が高くなるし視野が狭くなりがちなので、こまめに立っては水を飲み、身体をほぐして休む必要は依然としてある。それでも集中して作業できるようになったことは大きいと言えるだろう。

●まとめ

正直言えば今回の気付きは絵の教本のどこかに基礎として書かれているかもしれないし、スポーツをしている人なら知っていて当然のことだと思う。
経験も知識も少なく要領も悪い自分は、様々な業界を広く浅く見て調べるようにしている。一見絵描きに無関係な業界でも、絵描きに通ずるヒントを見つけられるかもしれないからだ。
そして自分によって繋がりや成果を見つけたときの快感は忘れがたく、記憶に残りやすい。答えを見て書いた宿題と自分で解法を考えて解いた宿題ではどちらが身につきやすいか。これと似たようなことが言えるのではないだろうか。

世の中には全く無関係なものなんて存在しないと思っている。だからこそ絵が上手くなりたいなら絵を描くだけでなく、色んなジャンルに軽くでもいいので触れておき、インプットの際に必要なフックを作っておくのは大事だと思う。はるか昔にちょっとだけ見たことのある業界の知識が、何年も後で思わぬ貢献をしてくれるかもしれない。

あらゆる界隈から日々学び、できないことを一つずつできるようにしていく。この日々の積み重ねが大事だと思っている。

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