映画「PERFECT DAYS」から感じるマインドフルネス
遅ればせながら、ヴィム・ヴェンダース監督、役所広司主演の映画「PERFECT DAYS」を、鑑賞してきた。観に行こうと思ったきっかけは、kururiさんの下記の記事を読んだこと。もし、映画の詳細について興味を持った方は、感性豊かなkururiさんの書かれた記事を読むと良いと思う。
鑑賞して1日経ったが、私はまだそれほど、感想を言語化できていない。第一印象として感じたのは、主人公の平山さんは、出家して煩悩を捨てて悟りを得たブッダのようだということ。
裕福な王族だったブッダは、ある日、家も家族も財産も全て捨てて出家する。そして修行を通して、苦しみは煩悩から生まれることに気づき、煩悩を捨てることで悟りに達したブッダ。
裕福な家庭の長男であったと思われる平山さん。しかし、父親との確執や恐らく裕福な家柄自体に嫌気が指して、平山さんは家を出てトイレの清掃員として生きることを、自ら選択した。この構造に、ブッダとの類似性を感じる。そして、映画全体に流れるマインドフルネスの「いまに集中する」という意識。
「マインドフルネス」とは、ブッダの始めた仏教の修行の考え方から、宗教性を除いて、西洋科学の考え方で整理した、心身を整える手法や考え方のこと。マインドフルネスの一番大事な考え方は、「いまに集中する」ということ。
早朝の出勤前。家のドアを開けて、空を見上げて笑顔になる平山さん。トイレの掃除中に入ってきた人が用を足すのを待つ間、トイレの入口の外で待つ平山さん。彼は、その時必ず空を見上げて、笑顔になる。普通なら、作業を中断させられていることでイライラするかも知れない。しかし、平山さんは常に「いま」に集中している。待たされているという意識は無く、いま見える景色の木々の合間からこぼれる光「木漏れ日」に意識を向ける。平山さんは常に「いま」を生きている。
映画の展開部で姪のニコと家に帰る途中、2人は「今度は今度、いまはいま!」と声を掛け合いながら、自転車を漕ぐ。この言葉も、マインドフルネスの「いまに集中する」という考え方を感じさせる。
生き急ぐ現代社会の薬として、「マインドフルネス」という考え方が浸透して、それなりに時間が経つ。この映画「PERFECT DAYS」は、そのマインドフルネスの意識を全編を通して感じさせる。この作品が評価されたのは、平山さんの「いまに集中した」生き方に憧れや共感をする人が多かったからではないだろうか。
その後、とても良い批評を見つけた。この方は、平山さんを「方丈記」の作者の鴨長明になぞらえて批評している。とても納得感があるので、ぜひ読んで欲しい。