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清い気持ちだけでは、望みをかけられないことがある
〜好きポイント〜
・好きとか嫌いとか、そういう本ではないです。とても重い話だけれど、
読んで良かった。誰もが持っている、人間の美しいところと醜いところ
を、鮮明に暴き出した小説だと思います。
〜出逢い〜
母が買ってきた。
思春期の息子と娘を育てながら平穏に暮らしていた石川一登・貴代美夫妻。9月のある週末、息子の規士が帰宅せず連絡が途絶えてしまう。警察に相談した矢先、規士の友人が殺害されたと聞き、一登は胸騒ぎを覚える。逃走中の少年は2人だが、行方不明は3人。息子は犯人か、それとも......。規士の無実を望む一登と、犯人でも生きていて欲しいと願う貴代美。揺れ動く父母の思いー。心に深く突き刺さる衝撃のサスペンスミステリー。
(角川文庫出版「望み」裏表紙より引用)
息子は加害者なのか、被害者なのか?
加害者であっても良いからとにかく生きていて欲しいと願う母親と、息子は何があっても人を殺したりする人間じゃない(=息子は既に死んでいる)と信じる父親。
どちらの結末でも地獄だけれど、真相がわかるまでどちらかに望みをかけて自分を保つしかない。
どちらを信じても地獄。
「サスペンスミステリー」という分類になっているけれど、こんなにストーリーに引き込まれるにも関わらず、「結末」そのものを知るモチベーションが高まらないサスペンスミステリーは初めてだった。
ハッピーエンドになる道筋は、一本も残されていないから。
結末は2つに1つしかなくて、どちらも苦しいから。
サスペンスミステリーって、普通「え、どうなっちゃうの?犯人誰?」という感じでハラハラドキドキページをめくりますよね。私はそうです。
でもこの本は、「やだ、やだ、やだ、やだ、やだ」という気持ちで、でもページをめくる手が止まりません。
何かを祈ったり、誰かを信じる時、そこにあるのはいつでも真っ直ぐで美しい感情だけなんだろうか?
手放しで、誰も傷つけずに祈れるのは「世界平和」くらいでしょうか。
後味が悪いのとはまたちょっと違うけれど、読後打ちのめされ放心状態になります。