Youtuber岡本さんの「瞑想とヨガ哲学の話し」へのコメント
ヨガの教えや、仏教、精神世界等のYoutubeチャンネルオーナーの岡本直人さんの動画に対する自分の反応をまとめてみました。なので最初に以下のYotubeを見てからでなければ何を言っているのか解らないと思います。
また、いつも以上にマニアックなことを書いているので、YOGA沼の深淵を覗きこんでみたいという人以外は、本文を読んでも何の話だかわからないかもしれません(笑)
このYoutube動画のチャンネルオーナーの岡本さんの質問に、ゲストコメンテーターが答えていくというスタイルです。三者三様の回答を聞きながら、「自分だったらどう答えるかな」と考えたら、ゲストの人達とは色合いの異なるものになりました。
一度は動画にコメントしようかと考えたのですが、あまりに長文になってしまったし、せっかく書いた文章なのでnoteに残すことにしました。
瞑想中のビジョンとはどこから生まれるのか(聖典等でどのような文脈が有るのか)
お釈迦様の話なら、解脱時に瞑想が深くなり、過去(昨日、去年、10年前、生まれた時等)を思い出し、最終的に前世、その前世、そのまた前世を思い出したというジャータカ(釈迦の過去世物語)が有名です。
ヴェーダであれば、最古のリグ・ヴェーダから瞑想時に現れた世界を言葉にしたものと言われています。
シヴァナンダはシヴァ神のシヴァと関係するのか?
シヴァナンダヨーガ・センター東京の記事によると
名前の最後にサラスワティが付くのはダシャナーミー・サニヤーシンというシヴァ系の行者です。
シヴァナンダは医者でもあったので健康体操としてのアーサナを取り入れたものがシヴァナンダヨーガといわれるヨーガのようです。
佛教密教が修行体系としていた『ハタ・ヨーガ』を、インド佛教滅亡後にシヴァ教徒やヴィシュヌ教徒が修行体系として積極的に取り込むようになりました。
佛教が滅亡する前のインドでは、ヒンドゥーのハタ・ヨーガはシヴァ教徒(で且つ佛教タントラ教徒)のナータ派という行者集団がメインストリームで、実質の開祖はゴーラクシャ・ナータといいます。
上記ダシャナーミー(10の名前)のサニヤーシン(放擲者)は、サラスワティーの他にギリ、プリー、バーラティ、etcの系統があり、元はヴィシュヌ派の行者だったのが、シヴァ教徒に改宗したもので、改宗しなかったヴィシュヌ系の行者集団(通称、ラーマナンディー・ティヤーギー)からは裏切り者と呼ばれ、殺し合いの闘争が行われました。
シャーンティだのアヒンサーだのはどこへ行ったのでしょうね(笑)
リシケシのシヴァナンダ・アシュラムはシヴァ教徒か
アシュラムで行っている内容はビシュヌ教のヴェーダーンタですね。
そもそもリシケシの街全体がほぼほぼヒンドゥー教の保守本流であるヴェーダーンタの街なのでシヴァ教タントラ系のヨーガは筋違いでしょう。
シヴァナンダの弟子のサティアナンダはタントラ系のハタ・ヨーガを修行してビハール・スクール・オブ・ヨーガを作りましたが、それは別の話です。
ラージャ・ヨーガは印度では途絶えているのか
この質問の『ラージャ・ヨーガ』をパタンジャリのヨーガ・スートラとするならば、ヨーガ学派はほぼほぼ絶滅状態でしょう。
ただし、BJP政権が押し進めているインドのヨーガ改革としては、学歴化の必須教科としてパタンジャリのヨーガ・スートラを基礎教養の位置付けとなっています。
この辺りのインドのヨーガ事情は別にまとめましたので興味があれば参照してください。
シヴァ教徒とヴィシュヌ教徒は共存するのか/しないのか
一般の信者であれば敵対はしないでしょう。日本佛教の宗派の違いのように、あえて相手のテリトリに踏み込まないようです。コレはヒンドゥーとムスリムも、国家間では紛争が有っても民間では互いに踏み込まないのと同じでしょう。
ただし、前記のダシャナーミー・サニヤーシンとラーマナンディー・ティヤーギーという行者同士の場合、クンブ・メーラで絶対に隣り合わせに陣取ることはなく、もしそんなことになったら今でも殺し合うそうです。
シヴァ神はヨーガの原初のグルなのか
ナータ派の神話によると、シヴァ神はハタ・ヨーガの原初のグルですが、いわゆるヨーガ全般の原初のグルという文書は見つかっていません。
インダス文明の時代に使用されていた印章に、角の生えた男性が合蹠座で座っており、その後ろに動物達が描かれている。という図案のものが発掘されています。その男性がシヴァの原形のパシュパティ(獣の王)ではないか?といわれていますが、インダス文字が解読されていないので、憶測でしかありません。
また、ビームベートカーの岩陰遺跡で三叉激(シヴァの持つ槍)のようなものを持つ人物が描かれていることにより、シヴァの原形の可能性を説く人もいますが、一般的には根拠が薄いといわれています。
ただしBJP政権で行われたヨーガ改革で使用される教科書には、「シヴァが原初のグルである」と書かれており、夢がありますがその根拠は不明です。
パタンジャリ伝説の一例
ここからパタンジャリ伝説が始まったといわれます。上半身が人間で下半身が蛇のパタンジャリ像はこの神話が元になっているようです。
シヴァ・サンヒターはハタ・ヨーガの経典か
第1章の内容はヴェーダーンタです。
第2章以降、後半に進むほどハタの雰囲気が増えてきますが、全部が全部ハタ・ヨーガの記述ではありません。
それよりカシミール・シヴァ派の考え方ではヨーガ・スートラの25諦(プルシャ、プラクリティ、ブッディ、アハンカーラ、、、、)を下敷きにしており、その25諦の前に11の諦が有るとして36諦で考えます。その最初の諦は原初のシヴァとされ、ヨーガ学派の二元論をベースにした[シヴァに帰滅する]一元論です。(シャイヴァ・シッダーンタという二元論の系統もあります)
直接の関係はありませんが、天の川銀河は過去においていくつかの銀河が合体して出来たといわれています。その中で2つの銀河が合体した痕跡が見つかっています。この2つの銀河を「シャクティ(Shakti)」と「シヴァ(Shiva)」と名付けています。シヴァ教の二元論的宇宙論で、こういう話は大好物なんです。
ハタ・ヨーガ・プラディーピカはナータ派の経典か
ナータ派だけでなく前記ダシャナーミーやラーマーナンディ、チベット佛教、そしてアンチ・ハタヨーガの行者(この人達の行法を『ラージャ・ヨーガ』と呼んでいたそうですが、それはまた別の話)も含めた各宗派が好き勝手なことを言っているので、著者であるスヴァートマラーマが
「数多の教義の暗闇を彷徨う者らに、ハタの灯明を伝授する」
と言って全ての教義に目を通し、有効な行法をまとめたものといわれています。従って、ナータ派だけの経典ではありません。
ヴィシュヌ系とシヴァ系の行方の違いは有るのか
ヴィシュヌ系は苦行好きと言われているので、真夏の炎天下で自分の周りの四方八方に牛糞の焚き火を置き、下手すると焚き火の入った皿(鉢?)を頭に乗せてアーサナしたり、太陽を見つめたり、等の苦行を行います。その他様々な苦行者も「肉体は穢れている」と考えるヴィシュヌ教徒が多いようです。
ナータ派は基本、瞑想系のアーサナで体操系のアーサナはしません。
シヴァ系は体操的なものもするし、阿字観とかのイメージ瞑想もします。いわゆる密教的な行法はナータもシヴァ教も有りです。
ヨーガ哲学専用の経典はあるのか
バガヴァッド・ギーターのカルマ、バクティ、ジュニャーナの実践のことをヨーガと呼んでいますが、実体はヒンドゥー教の実践であり、佛教なら戒・定・慧の三学の実践に相当するでしょう。
一般の人がギーターを毎朝1章読んでから仕事に行く、とかいうのもヨーガの実践をしているという意識のようです。
ヨーガを結合と言ってみたり、プルシャとプラクリティの分離と言ってみたりで文脈によって意味が変わるので、ヨーガ・ダルシャナといったらヨーガ・スートラにしておくのが安全だと思われます。
ちなみに真実[在]についての考察を深めるのはヴェーダーンタ哲学ですね。
ヨーガ・スートラをヴェーダーンタで説明しようとするのは無理があると思っています。どちらかといえば佛教の文脈で書かれたスートラを日本人に説明するのなら、佛教からのアプローチの方がわかりやすいし、同じサンスクリットの単語でもヴェーダーンタ的解釈だと誤解の元だと思っています。
世界の抗鬱剤使用ランキング
国民皆保険制度が有って、誰もが最先端の西洋医療を受けられる日本の環境と、医療保険?なにそれ美味しいの?のインド環境で比較しても、インドではそもそも全ての薬剤の使用率が低いのではないのでしょうかね?
自殺率はインドも結構高いようですよ。
ヒンドゥ原理主義
確実に原理主義が強すぎることへの反発は有るようです。ヒンドゥー以外の人々にとっては住みにくくなっていると聞きました。
それにカースト外の不可触民もヒンドゥー教原理主義であれば、その地位から抜け出すことが難しいようですね。
それでも政府主導で『ヨーガ改革』(実態はバーラタ(インド国民)の誇りを取り戻すためのヒンドゥー教再定義)によって、世界的に『国際ヨーガディ』等を打ち出して、日本でもヨーガの知名度や地位の向上に繋がっているので、功罪共に有るのでしょう。
雑談
映画“RRR”の話とかをし始めると、更に長文になってしまうので、後半の雑談について話に加わるのはやめておきます。
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