【感想文】無印良品の、人の育て方(松井忠三)
ページ数:221ページ 2014年著
松井氏のプロフィールは以下の通りです。
【なぜこの本を読もうと思ったのか?(自分の弱みや足りない点)】
個人レベルではなく、
会社レベルで人の育成を
自然な文化にするにはどうすればいいか?
人材というより人間として成長してもらうために、
プロフェッショナル思考を持つ人間として。
【なぜそう思ったのか?】
「人が育たないのは、
その人のせいではなく育てる側の問題」と
会社の人間すべてが共通認識としたい。
そして、その解決策となる最善策は何か?が知りたい。
これはすでに成功している企業から
学んだ方が早いと思った為。
最も、こういう系の本を
そのまま鵜呑みにするのは危険なので、
・その文脈に流れる背景
(なぜその施策になったのか?どんな葛藤があったか?)
・その施策の際、会社はどのフェーズにいたか?
・その施策は会社がどの様なPPM(事業構成)に
あった時にできたのか?
などの考察を元に進めていった。
3,096文字/1,440文字
【❶結論】
【人材育成する上で絶対に必要なのは会社のビジョンである】
そもそも人の育成は「会社としてのメリット」と
「その人にとってのメリット」を一致させる必要がある。
そう考えると、
「その人が人生で重要視しているのは何か?」を
把握する必要がある。
したがって、
①会社の目指す方向を共有し、
②その方向に進むとその人にとって
どう良い影響があるかをすり合わせ、
③その人の役割と人生をリンクさせていく
上記を仕事をすすめる上で昇華させていく流れとなる。
そうする事でやりがいと働きがいが生きがいにつながり、
離職率低下につながり、業績向上にもつながる。
となると、まずは会社のビジョンなしには
ただそこで働いているだけの状態になるので、
改めて中期経営計画の重要性に気づけた次第である。
私は前職で評価面談を部下と初めてする時は必ず、
フラットな姿勢で「あなたが人生で大事にしている事や目標、そう思った背景が「知りたい」」と言うスタイルを貫いてきた。
決して上から目線でもなく、
だけども相手が見落としている点や
自分が失敗してきた背景などは場合に応じて共有する。
そして自分自身も相手から教わる事も多い。
したがって面談はお互いの成長の場にもなる。
一人一人に関心を寄せなければ、
決してこちらの話など真の意味で
腹落ちしてくれるはずがないと考えている。
なぜなら私が部下だった時代は、
そんな一方的な上司などに心を寄せた事はなかったからだ。
つまり相手の関心や能力を把握する事が重要と言える。
(これは無印良品に限らず、
ワークライフバランスの小室淑恵氏著書
「プレイングマネジャー「残業ゼロ」の仕事術」にも
「ひとり作戦会議によるチーム戦力図」にて似たような描写が見て取れる。)
面談に限らず、日々のコミュニケーションもとても重要視している。
ただし、
あくまでビジネス上のコミュニケーションであるので、
立場上、飲みに行くとかそう言う事はあまりしなかった。
もちろん飲みニケーションは大事だと思うし、
これは企業によっては推進すべきだとは思う。
ただしその様な事はしなくても、
心からお互いに尊敬できる関係は
作れてきたと自負している。
面談の場に限らず、常にリスペクトの姿勢を持ち、
以下の事は可能な限りやってきた。
・具体的に感謝を述べる
(やってくれた事、やってくれた事の背景の思考まで述べる)
・自分が間違っていたら素直にごめんなさいと謝る
・誰でも平等に接する
・褒める場合は全体の前や第三者を経由して伝える
・叱る場合は可能な限り個別空間で
・フィードバックは私情を入れず客観的に
・ミスは曖昧にせず限界まで原因を遡って解決する
(←部下持った時に最も多くの人がこれに対して抵抗あるだろう)
余談ではあるが、
前職で経営を体系化したメソッドを学んで本当に良かった。
経営コンサルタントとして多くの社長と仕事をしてきて本当に良かった。
本を読むとすべてが繋がってくる。
経験を積んだこともあるだろうが、
ここ最近ベース思考系の本を読んだせいか、
更に問いかけが増えて読むようになったので、
前に本書を読んだ時よりも発想や文脈が
読み取れている気がする。
ふせんを貼る場所や、赤線を引く場所も変わった。
【❷要約】
本書は無印良品の現在の経営体制や具体論を展開し、
いかにして人が企業の望む人間として育つようになるか?を記している。
良い会社は人を育てる「仕組み」がある。
良品計画の仕組みはおおまかな流れとしては以下になる。
-----------------------------------------------------
部署異動や海外赴任をベースにした修羅場体験をする(←ここがおそらく松井氏の根底にある)
↓
「人に仕事をつける」と回らない
↓
「仕事に人をつける」必要がある
↓
マニュアルの重要性に気づく
↓
マニュアルの「精度」の重要性に気づく
↓
マニュアルの「アップデートの文化づくり」に気づく
↓
以上の仕組みを動かす上で人が結果的に育つ
-----------------------------------------------------
無印良品の今の経営方針は
松井氏自身の経験が色濃く反映されている。
上記の流れでもわかる通り、
無印良品は異動による成長を重点的に考えており、
スペシャリスト2種類+ゼネラリストを目指す方針である。
その背景はおそらく、
松井氏自身が西友から無印に40歳で異動(実質左遷)され、
そこから得られたことが大きいのではないか。
誤解を恐れず言えば、松井氏に限らず
仕組み化にこだわる人はおそらく人を良い意味で信用していない。
と言うより、過去に人を信じて
人を変えようとして大きな挫折を味わったのではないか?
精神論ではうまくいかないと認識し、
仕組みによって、
その仕組みの中で人が育つ様に構造転換を図ったのだと思う。
だから「修羅場体験」が重要と言っており、
特に海外赴任という「仕組み」によって
人を変えさせる事に力を注いでいるわけだ。
【❸仮説】
【自社にどの様に応用すべきか?】
結論から言うと本書が共有している数々の仕組み
をそのまま鵜呑みにして取り込むのは危険である。
(その事は松井氏も本文にて述べている)
なぜか?
まず、企業のライフサイクルには4つのフェーズがある。
導入期、成長期、成熟期、衰退期だ。
自社がどのフェーズにいるかと言う「現在地点」を正しく認識し、その上で初めて無印良品と重なるフェーズ時のアクションを行う必要があるからだ。
「どのフェーズに自社はいるか?」と聞かれた場合、
フェーズの肌感覚は人や役職によって異なる。
情報格差があるからだ。
一般的に、上の役職に行けば行くほど経営情報密度が高い。
フェーズはキャッシュフローや事業別売上営業利益の伸び率でわかる。
ただしその情報は部署や役職によって格差が出る。
したがって肌感覚が異なりやすい。
無印良品のV字回復は素晴らしいし、
松井氏が行ってきた経営も素晴らしい。
しかし何度も言うように、
その成功体験をそのまま取り込むのは危険である。
松井氏に限らず、
経営者の出す本は「フェーズごとにまとめてきちんと説明する」事は総じてうまくない。
シンプルに言えば、
「自社はこうやってきました。結果として今があります」
と言う構成になっている。
これほど成功している経営者でさえなぜこうなってしまうのか?
誤解を恐れず言えば、
成功の再現性を、体系立てて話す事ができないからだ。
体系立てて話すには、
・企業のライフサイクル(先ほどの4フェーズ)
・経営情報
・キャッシュフロー状態
・採用、教育
・0➤1フェーズ(立ち上げ)
・1➤10フェーズ(伝承)
・10➤100フェーズ(標準化)
・100➤∞フェーズ(パッケージの発展化)
などなど、ありとあらゆる情報を理解実践した上で、
体系立てて話さないといけない。
しかしながら上記ポイントを
噛み砕きながらわかりやすく書ける人は
おそらくこの世にそういないだろう。
そうなると、書けるのはせいぜい部分の掌握だ。
経営の神様と言われたドラッカーの様な
理解力を持ってしても、
そもそも実際にドラッカーは経営で成功したわけでもない。
たとえ起業家で成功した人でも、
組織化では失敗したりもする。
どこまで言ってもこういう本は
「経営」と言う大きな括りの中で、
ごく一部分の説明のみだという認識で
読み進めるべきである。
かといって、その全てを一冊の本にまとめようとすると、
著者の伝えたい焦点がボヤけてしまう。
例えば今回の様に人の育て方を重点的に書きたい場合、
上記情報をすべて盛り込むのは論点がズレてしまう為
好ましくない。
そうすると、どうしても部分的な経営本となる。
したがって「全体観の把握」なくして鵜呑みで取り込むのは
危険と言う事になる。
自社がどの地点にいるのかざっくりで良いので書き出してみて、
その上で本書の様な経営本に書かれている内容が、
一体どのフェーズの時に実践されたものなのか?を
照らし合わせながら、取り込める事は
取り込んでみると良いのではないだろうか。
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