年賀状と和歌
毎年、年賀状は自分でデザインすることにしている。これはグラフィックデザイナーとしてせめてもの矜持だ。
寂しいことに、年賀状を辞める人が増えている。さらには、年賀状をネットで送信するという味気なさで済ます人も。
私は毎年百枚ほどで、母が四十枚ほど。思いがけないところから届いたりして、予備に十枚ほど置いておくが大抵全部使い切ってしまう。
年賀状のデザインは年始の飾りにしており、毎年、玄関を飾る。
そして、年賀状には一首の和歌を添えている。歌会始の御題を詠んだ自作である。
そういえば、今年の年賀状は初めて日本語の謹賀新年や迎春などといった文字を入れなかった。
御題茶盌と和歌
御題といえば、茶道とは切っても切れぬ商品がある。御題茶盌だ。
毎年、たくさんの茶盌がカタログを賑わせている。作家が頭を捻りながら、知恵と技術で作り上げたものである。
これを母が「員茶盌になる」と集め始めたのだが、数年で辞めてしまっていた。続けてくれていればいいものを、なんで辞めてしまうのか……と思うが、教室を開くにあたって、御題茶盌を買うのを再開した。
毎年、母と二人で相談して決めていたが、今年から、息子もそこに加わった。
瀬戸 粉引手 鈴木八郎作 贈鬼佛庵 昭和四十七年 御題「山」
瀬戸 柚子黒 杉浦芳樹作 贈鬼佛庵 昭和五十年 御題「祭」
瀬戸 柚子黒 杉浦芳樹作 贈鬼佛庵 昭和五十三年 御題「母」
加藤鐐三作 贈鬼佛庵 昭和五十四年 御題「丘」
瀬戸 柚子黒 杉浦芳樹作 贈鬼佛庵 昭和五十五年 御題「桜」
瀬戸 兎月窯 柚子黒天目 杉浦芳樹作 昭和五十六年 御題「音」
京 仁清写 工藤寿楽作 昭和五十八年 御題「島」
京 仁清写 片山雅美作 宗靜先生購 昭和五十九年 御題「緑」
黒楽 茶盌 佐々木松楽作 宗靜先生購 昭和六十一年 御題「水」
柚子黒 樹木文 杉浦文泰作 贈鬼佛庵 昭和六十二年 御題「木」
黒織部 滝川鉦一作 平成三年 御題「森」
仁清写 枝垂梅 加藤春永作 贈紅雲庵 平成四年 御題「風」
仁清写 宝尽くし 工藤寿楽作 贈紅雲庵 平成五年 御題「空」
瀬戸 鈴木八郎作 平成十一年 御題「青」
黄瀬戸 野田東山作 平成十四年 御題「春」
御室 乾山写銹絵染付松樹茶盌「静日雨凄々」 八木海峰造 平成廿六年 御題「静」
京 仁清写「栞」 川本真琴作 平成廿七年 御題「本」
美濃 仁清写 人字草 加藤郷山作 平成廿八年 御題「人」
美濃 春野絵織部 玉山窯 玉置兼光作 平成廿九年 御題「野」
京 竹取物語 山岡善高作 平成丗年 御題「語」
京 乾山写 山川敦司作 『明かり窓』 平成丗一年 御題「光」
楽 吉村楽入作 『望月の歌』 令和二年 御題「望」
楽 吉村楽入作 『金柑の実』 令和三年 御題「実」
京焼 福本未来作 『円窓に紅白梅』 令和四年 御題「窓」
持っている御題茶盌は以上である。
時折、持っていない年の茶盌をヤフオクで見つけては購入したりもするし、抜けている年の物を寄贈くださる方もいらっしゃるので有り難い。
大寄せ茶会にて
これら御題茶盌を大寄せの員茶盌として使うのだが、この御題茶盌の写真を撮影し、御謹製の歌と私の歌とを添えて読み物にして待合で回すことにしている。
これは待合でのおしゃべりを最小限に抑えるための工夫であり、おしゃべりとは退屈からはじまるものであり、ランダムに出される茶盌でどんなものが出るか分からないのだから、ワクワク感を助長する効果がこの読み物には附随する。
和綴本にでもしたらいいのであろうが、現在のところクリアファイルブックで済ませている(笑)
こうした御題茶盌も、本当は自分が構想した物を職人に作らせるのが本当の数寄者であろうが、私はまだまだそんなレベルには辿り着いて居ない。
今は、思いついたアイデアをブログに綴って、作家さんの参考にしてもらいたいと思う程度である。
次の大寄せがいつ持てるか分からないが(何せ、お偉いさん方は茶会を開きたがらないのだ)、持てたら冊数を増やして、回したいものである。