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「生理人間」から普通の人間になれた気がする

婦人科系の自分語りです。苦手な方はご注意ください。


前回、子宮内膜症疑いで、ホルモンの働きを抑える薬を飲むことになったと書いた。

私が処方されたのは、ジエノゲストという薬。
排卵を抑制し、子宮内膜の増殖を抑える作用があり、飲み始めると通常の月経は来なくなる。それにより、月経痛やPMSが無くなるという原理だそうだ。
服用は1日2回。妊娠を希望しない限り、基本的には閉経まで飲み続けることになる。

服薬を始めて4ヶ月くらい経った。月経は止まっている。非常に快適だ。
生理がないので、生理痛もない。PMSもない。あの「キーッ!」みたいな強烈なイライラ感がないし、泥のような眠気や怠さもない。
嵩張る生理用品も買わなくていいし、持ち歩かなくていい。白いズボンやスカートが気兼ねなく履ける。夜も熟睡できる。旅行やおでかけを中止したり、余計な懸念をしたりしなくてよくなった。
今のところ、良いことずくめのように感じている。

飲み始めの数週間は、副作用と思われる症状があった。
食欲がない。身体が怠い。妊娠初期を思い出すような、なんとも言えない心身の違和感。今まで痛んだことのない、頭頂部付近の頭痛。
一番大きいのは不正出血。これは、薬を飲んだ9割の人に起こるメジャーな副作用らしい。
とはいえ痛みもないし、ナプキンが要るか要らないか程度の少量なので、生理よりマシといえばマシだ。だが、生理の出血ならせいぜい一週間くらいのところ、不正出血はいつまで続くのか読めないので、その点では困った。
結局、断続的に1ヶ月半くらい続いて、その間ナプキンを当て続けなければならなかったのは煩わしかった。
ふと「これってもしかして、生理を分割払いしてるだけでは・・・・?」という疑念さえ湧いたが、いつの間にか出血は止み、体調も安定していた。

「生理のない生活」を手に入れた現在、大げさかもしれないが、ようやく「人間の生活」が始まったような気がしている。
今までは何と言うか、「生理人間の生活」だった。意識の多くの部分を生理への嫌悪や不安、苦痛感が占めていた。
今はその分のキャパが開いて、重いアプリを削除したかのようにサクサク動けるようになった。爽快だ。

あまりに爽快なので、肉体的な「女」という役割から早々に降りた気分にさえなっている。
自分の女性性を否定したいわけではない。これからも私は社会的に「女」であり続けることに変わりはないが、肉体的な女の理不尽の大部分から解放されたのは事実だし、そのことは精神の健康にかなり寄与していると思う。

「女を降りた」というのはつまり、「恋愛や性愛、妊娠出産の当事者から降りた」ということである。
(当然、ジエノゲストを飲んでいる人全員がこうなるわけでなく、あくまで私という個人に起きた心境の変化だ。)
当事者でなくなったので、そういったものが一気に他人事になって、興味が薄れた感がある。

映画やドラマでそういったシーンがあっても、今までのように「おっ」と思うことがなくなった。創作物であっても、私は無意識のうちに、「妊娠を前提とした恋愛・性愛」に心惹かれていたのかもしれない。本能的に、排卵を無駄にせんとする心理が働いていたのだろう。
自分ごとでなくなったら、一気に興味を失ってしまって、映画でも小説でも、恋愛感情や性衝動がキーとなる物語に、感情移入出来なくなった。そもそも結婚出産を経て、そういったものが半分どうでもよくなりつつあったのが、今回で完全に消失した気がする。

生理を止めただけでここまで考えが変わるなんて、私は極端すぎるだろうか。もしかすると、今まで自分の一部だと思っていた感情や思考が、ホルモン由来の本能だったかもしれないことに気付いて、ちょっと動揺しているのかもしれない。
もっと時間が経ったら考えが変わることもあるだろうから、今回はとりあえず今現在の気持ちを率直に書いてみた。

肉体的には快適で、脳みその容量を生理に割かなくて良くなって、心理的にも軽快になったので、全体にはQOLが向上したと言える。ビビりながら、渋りながらも、病院に行ってよかった。

心配しているのは、「今後何らかの理由で服薬出来なくなったらどうしよう」ということと、「更年期に差し掛かったら、体調や精神面はどうなるのだろう」ということだ。
今は苦痛が取り除かれて開放感でいっぱいだが、これからどうなっていくかは神のみぞ知る。願わくば、このまま閉経まで逃げ切りたい。

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