だらねこげーむず2

ショップとお金のゲームデザイン

武器屋、防具屋、道具屋。時にはスキルを売ったりすることもあり、ことデジタルゲームにおいて「ショップ」というのはかなりの確率で出てきます。RPGやアクション、シミュレーションなどジャンルもあまり問われません。

しかし、なんかこう、扱いが軽いと言うか。相当ゲームデザインが好きな人間でない限り、ゲームを作っている人でもショップの作り方をこだわるようにはあまり感じません。お金(ゲーム内通貨)も、お前存在価値ないよね?みたいなレベルで空気な存在になっていることもあります。

大企業とかだと知見が蓄積されているのかもしれませんが、なんとなくでショップが作られているゲームもあるんじゃないのかなー、と思うことも多いです。

ので、ゲームにおけるショップとお金について、ちょっと考察してみたいと思います。


◆ゲームにおけるショップの面白さ

ショップの面白さを大別すると、大きく分けて2つあると思っていますだと思っています。

 ①限られえたお金の中で何を買うべきか迷わせる、ジレンマの面白さ

ゲームデザインを語る上でジレンマは外せません。
ジレンマを解消するために目標や予定を立てたり、少ないお金の中でどうやりくりするか工夫をしたりするのがもう楽しいわけです。
これ自体の重要性については↓で語ってるので割愛。

「目標を立てる」というのは地味に大事な要素で、ゲームを続ける理由になったりもします。同じ作業でも目標があった方が飽きにくい、みたいな話もありますし。

 ②新しいショップに行くと強い物が手に入る、インフレの面白さ

まぁ、人間って単純なもので。純粋に数字が上がると嬉しかったりします。攻撃力が 50 ⇒ 120 みたく桁が上がったりとか。苦戦していた敵を1撃で倒せるようになったりとか。
そして、インフレへの期待もまた面白さの要素です。RPGとかで新しい街に行くと、何かソワソワするというか、ワクワクするというか。そういう経験ありませんかね。新しい街へ行けば強い武器が売っていて強くなれる、というインフレへの期待が刷り込まれたプレイヤーはもう新しい街に着くだけでウッキウキですし、新しい街を目指す過程も楽しくなってきます

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ゲームを作る上で、コンセプトを考えるのは大事です。これはショップを考える時もそうで、「そもそもどんな面白さを追求するショップなのか」を決めてから設計し始めると良い物が作りやすくなります。


◆ショップデザインの類型化

次にショップをいくつか分類分けしてみます。特徴毎に分類分けをしておくと「この面白さを追求しよう!」という時にどういうショップを作るべきか考えやすいので。

私が思いつく基本型は以下の3つ。

①インフレ型
〇代表的なゲーム
 ドラクエ。ショップと言われて思い浮かべるのはだいたいこのタイプ。
〇特徴
 ゲームが進むと明確に強いものが出てくる。
 ⇒インフレの面白さを追求しやすい
〇備考
 鍛冶屋などゲームが進むと強い武器が解放されるものも含まれる。

②特色型
〇代表的なゲーム
 ロマンシングサガ3。
 オープンワールドやフリーシナリオのゲームに多い。
〇特徴
 ゲームの進み具合でインフレしない。
 ⇒序盤から色々な街に行ける。
 ⇒どのくらいの強さの物が売っているかは街ごとに違う
 ⇒そのお店に到達し、お金を用意できれば序盤でも強い装備が手に入る
 ⇒序~中盤にお金を稼ぐのが楽しいデザイン

③ランダム型
〇代表的なゲーム
 SlayTheSpire
〇特徴
 品ぞろえがランダムで、後でお金を貯めてから購入、ができない。
 ⇒より「ジレンマの面白さ」を追求しやすいデザイン
 ⇒強い物(欲しい物)かは運次第な所がある
〇備考
 少し特殊で、ゲームシステムによってはやりにくい。
 ⇒使えるゲームは限定される。


これらの型は組み合わせて扱うことも可能です。
例えばオクトパストラベラーなんかは、インフレ型と特色型の組み合わせ。より敵の強いところを切り抜けた後の町には強い物が揃ってるけど、街によって売っているものに特色があります。この町だと弓は強いの売っているけど剣は売っていないとか。

ゲームを作る時、ショップに関して「今回のゲームのショップはどの面白さを追求して、そのためにこのタイプを使う」みたいな形で一度考えてみると、良いショップが作れるかもしれません。


◆お金の存在をどう扱うか?

さて、次はお金のお話。世の中お金ですよね。私もいっぱい欲しいです。
……という私の欲望はさておき。お金やそれに相当する概念が出てくるゲームは非常に多く、冒頭で話したように色んな用途で使われます。

しかし、ゲームごとにお金の価値ってけっこう違います。例えば物価が高く基本的に所持金だと全ての装備が買えないゲームもあれば、新しい街について売っている装備は全部買うことができるゲームもあります。どちらが良いかはぶっちゃけゲーム次第なところがあるので、考察していきます。

①物価が高いゲーム
〇特徴
 基本的にお金が足りない。
  ⇒最新の装備を全て揃えるのも苦労したりする
〇メリット
 大量のお金が手に入った時が嬉しくお金が報酬として意味を持つ。
 プレイヤーに目標や計画を立てさせることができる。
  ⇒より「ジレンマの面白さ」を追求しやすい。
  ⇒考え工夫するのが好きなゲーマー向けのデザインとも言える。
〇デメリット
 上手く扱わないと延々と雑魚狩りをするなど作業ゲーをすることになる 
  ⇒ゲームデザインがしっかりしていないとマイナスになる
  ⇒そのための工数もかかる

よりゲーマー向けに面白い物を作ろうと思ったら物価の高いゲームの方ですかね。何を買うべきなのか、どうやってお金を稼ぐかを考えさせ、それを目標に計画を立てさせてあれこれできますし。

何より、お金が報酬としてちゃんと認識されるので、「お金をいっぱい落とすレア敵」とか「苦労して進んだダンジョンの宝箱に大量のお金が入っていた」とか、色々と作りやすいです。

ただし制作難易度が高く、1つ1つの品物の値段を吟味しお金をそのお店に到達した時点でどのくらい持たせるのか、お金の稼ぐ方法はどうするべきか、など細かいゲームデザインに気を配る必要があります。

②物価が安いゲーム
〇特徴
 基本的にお金が足りていて、お金を意識することが少ない。
  ⇒新しい街についたら、欲しい物は財布と相談せずに全て買える。
〇メリット
 置く品物によってプレイヤーのインフレ具合を操作しやすい。
  ⇒インフレの面白さに特化するのに向いている
  ⇒迷わせることが無いので、カジュアル層には向け?
 お金に関しては必要な量を供給すれば良く簡単。
  ⇒細かいゲームデザインが必要ないので工数は少ない
〇デメリット
 実質的に「お金」の存在価値が無くなる 
 ⇒報酬としての「お金」が役に立たず、もらっても嬉しくは無い。

対する物価の安いゲーム、ウリになるのは「分かりやすさ」「作成難易度の低さ」ですね。

新しい街についたけどお金が足らなくて装備が買えない……みたいなことがないため、安定して「新しい街に着く= 強くなる」の図式が成り立ちます
また装備などを皆が揃えられるので、プレイヤーごとの状況のブレが少なく難易度調整などはしやすいです。

その反面、デメリットとして存在する「お金が報酬としての意味を為さない」問題は大きく、対策を講じる必要があります。何もしないとゲーム内で高頻度で出現する要素を1つ無駄にすることになるので、非常にもったいないです。
例えば「どこかのタイミングで大量にお金を要求するイベントがある」とか。あとは「お金を報酬として置くのをすっぱり諦める」という潔い方法もありますが。


◆資金稼ぎのデザイン

物価の高いゲームを作っている時なんかは特に「どうやってプレイヤーにお金を供給するのか」という点は非常に重要です。過去のドラクエなんかは延々と雑魚狩りをさせてましたが、これはもう時代遅れと言うか、作業ゲーが好きな人間がターゲットじゃない限りは低評価の要因となります。

この辺りのデザインで個人的に好きなのはロマサガ2や3ですね。これも古いゲームですけど。
ロマサガシリーズってフリーシナリオRPGで、ダンジョンに潜って宝箱を開けて良い物を手に入れていくのが楽しかったりします。
そしてロマサガ2や3って雑魚狩りしてもお金が全然たまらないんですよ。代わりに宝箱などからまとまって手に入ったりします。

つまり探索が面白いゲームが探索の報酬として「お金」を供給しているわけですね。なんか言葉にしてみると陳腐ですけど。
何が言いたいかと言うと、このゲームの場合はゲームのコンセプトとお金の供給方法がマッチしていて、お金の存在がダンジョン探索の面白さに貢献しているのです。お金の存在を上手く使っている良い例ですね。

ロマサガ3の場合は、ミニゲームで稼げるようにもなっています。ショップには高額だけど序盤で手に入るとけっこう強いのが置かれていたりするのでお金は稼ぎたい。そして「マスコンバット」や「トレード」といったミニゲーム自体が面白いので、お金稼ぎが苦にならない。むしろお金を稼ぐのが楽しい。お金の供給デザインとしては、かなり優れていると思います。


◆まとめ

今回の話をまとめるとこんな感じですかね ↓ 。 ちかれた。

①ショップの面白さは2つある
 ⇒ジレンマの面白さ:迷い、考えるのが楽しい
 ⇒インフレの面白さ:分かりやすく強くなるのが楽しい
②ショップのデザインを分類すると3タイプ(組み合わせるのも可)
 ⇒インフレ型:インフレの面白さを追求しやすい
 ⇒特色型  :お金を稼ぐのを楽しくしやすい
 ⇒ランダム型:ジレンマの面白さを追求しやすい
③物価の高いゲームにするか安いゲームにするか
 ⇒高いのは作成難易度が高いけど面白くするのに向いている
 ⇒安いのは作成難易度が低いけどお金の存在価値がピンチ
④お金はゲームシステムに合わせて楽しく稼がせましょう。

まーぶっちゃけ何と言いますか、えらっそーに、「ショップの面白さは大きく分けて2つだ!」とか「ショップデザインの基本形は3つに分類できるぞ!」とか言ってますが、根拠はないです。というか、他にも絶対あります。私が思いついていないだけで。

逆に、こういうのも考えられるんじゃない?といった意見があれば大募集しております。色々と教えて頂けるとですね。私がより面白いゲームを作れるようになり、世の中に良いゲームが増えます。すんばらしいですね。


◆蛇足兼宣伝(?)

ちなみに、私が今作っているゲームブック風RPG(いのちのつかいかた)だと、インフレ型とランダム型を組み合わせると思います。ジレンマをできるだけ感じさせたいけど、ゲーム進行に合わせて手に入る装備は強くしたいので。ある程度の周回要素もありますし、運の要素も欲しいです。
良いショップデザインにしたいですな。



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だらねこ
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