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バリカタとワカメと鮭のこねたんに卵を巻き付けたやつ
家の近所には、大阪府最大級の図書館がある。本を好きなだけ読めるということで、現在の家に決めた。
図書館の隣には、狭すぎす広すぎずで絶妙にのどかな公園があり、ベンチに座って借りてきた本を読むのが僕の憩いだ。
否、正しくは憩いだった。
公園では、家から握っていったオニギリで1人ピクニックを開催する。
極端に水少なめで炊いたバリカタ白米をボールに移し、ワカメ&鮭を配合した生ふりかけ的な代物と混ぜ合わせる。そして、バリカタとワカメと鮭の混合物をこねくりまわし、見目好いトライアングルに成形する。
ここからは仕上げ。広めのフライパンでクレープ状の薄い卵焼きを作り、バリカタとワカメと鮭のこねたんに巻き付ける。
『バリカタとワカメと鮭のこねたんに卵を巻き付けたやつ』の完成だ。
仕事に行き詰まった時、人間関係がうまくいかない時、ラップの箱を濡れた手で触ってしまった時、僕は『バ(以下省略)』を弁当箱に詰め、図書館経由で公園へ行く。
否、正しくは行っていた。
ある日、公園でバ(以下省略)を喰らっていると、4〜5人の男子小学生が母親を引き連れて入場してきた。まもなくガチンコのドッジボールがスタート。子供が苦手な僕は、額・わき・膝裏に汗が滲んだ。
心拍数が徐々に上がるのを感じながらも、涼しい表情の演出に命を懸けてバ(以下省略)を頬張り続けていた。
足元にボールが転がってきた。ボールを拾い、取りにきた外野の小学生に手渡そうとする。
理想「ありがとうございます!」
現実「なんかたべてるー!!!」
公園で食事するのがそんなにも珍しいだろうか。別によくない?と思っていると、残りの内野とか外野が一斉に僕をめがけて突進してきた。
蒙古襲来ってこんな感じなのかなと恐怖に戦慄き、僕はとっさにバ(以下省略)を弁当箱へ隠すように収納した。
額から流れる汗が目に入り、鮭の塩分濃度とどちらが濃いかを考えたがそれどころではなかった。
ふと顔を上げると、内野とか外野のオカンがめっちゃコッチを見てきていた。明らかに不審者を見る目をしている。
「怪しい者ではありません!バリカタとワカメと鮭のこねたんに卵を巻き付けたやつを食べていただけです!」と弁解すれば嫌疑は晴れただろうか?
ドラマなら数分後…段差を通過する際、荷台に積んだボックスのガタガタ音のうるささ世界一のチャリに乗ったおまわりさんが駆けつけるだろう。
走らなければならぬ。
モモを高く上げ、地面からの反発をもらいながら全速力で帰路についた。
それ以降、僕はその公園を一度も訪れていない。図書館へ行くときもバ(以下省略)をせっせとこねくりまわすことはなくなった。
仕事に行き詰まった時、ラップを濡れた手で触ってしまった時、「全然ええねんけど〜」で話し出した人がやっぱり全然よくなくてキレられた時、僕はどこに行けばよいのだろう。
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