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揺らぐ足元

今、何に一番お金を使っていますか?

何か大きな買い物するわけでもなく、海外にしょっちゅう旅行に行くわけでもない。大抵のモノは既に買い揃えてあるし、買い換えるとしてもまぁたかが知れてる。自分は何に一番お金をかけているんだろうって改めて考えてみた。

考えるまでもなくもう断然、車だった。

元来、私は欲しいモノが買えない人だった。欲しいモノがあっても「高いから買えない」と親に言われ続けて来たからだ。多少お金に余裕ができるようになってももったいないんじゃないかと思って買えない人生だった。染みついた癖はなかなか消えないものだ。

そんな私が初めて本気で欲しいと思って買ったのが今乗っている車だ。最初は身の丈に合っていないんじゃないかと豪華な革のシートも落ち着きが悪かったが、長く乗ってくれば馴染んできてどこかその威厳が当たり前になってしまった。

FIREするときに将来のシミュレーションをしたがどう考えても必要のないものナンバーワンはこの車だった。ちょこちょこお金のかかるコだったが、まぁ何とか乗り切っていたある寒い朝のこと。車に乗ろうと外に出るといつも凛としたあのコがもう明らかに左にへこたれていた。

見た瞬間、"えあさす"という言葉が過ったけれど、なかなかそれを受け入れることができず、しばらくして心を落ち着かせてから車屋に電話をしてみた。

馴染みのおじさんに何やらテクニカルな話をされたけれども、穴が空いたかのように何も入ってこず。予想通りのエアサス交換で修理には最低50万かかると言うことだった。

念には念を入れるタイプの私も、流石にFIREのシミュレーションにエアサス修理は入れていないので、FIRE後、初めて想定外の大きな出費をすることになった。それも50万だ。資産がいくらとかではなく、絶対額として車の修理費に50万は私には大きい。傾く車を見ながら私も崩れ落ちそうだった。

いっそ車を売却することが頭を過り、念の為妻に確認をしたら、食い気味に反対された。

「車を売るとどうなるの?このコが他の人のモノになるなんて絶対にイヤ!!」

「必ず最後まで乗る!!」

子ども達も猛反対だった。最後までってどこが最後までかはわからないけれど、まぁ確かに私たち家族がこの車のことを大好きだと言うのは事実だし、私もできれば乗り続けたい。何よりお金が払えないわけではない。そんな事を考えながらシミュレーションのExcelにそっと"=-500000"と打ち込んだ。

欲しいモノを買えない私。

だからFIREできたんだろう。

そんな私が欲しくて買った車。

やはりFIRE生活には見合わないけれど、

久しぶりにまた働こうかな。

FIRE後、初めてそう思った。

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