見出し画像

【書評・感想】正義の教室 善く生きるための哲学入門 飲茶

この本は、表題のとおり、正義についてや、善く生きるとはなにか?についての考え方が書かれている本です。

正義に関する本としては、学生時代に、マイケルサンデル氏のこれからの正義の話をしようを読んだことはあったのですが、当時全然理解できないで、何となく読んだ記憶があります。(笑)

飲茶氏の別の著書、史上最強の哲学入門を読んでとても面白いと思ったので、この本を手に取りました。

この本は、物語形式で構成されており、大変読みやすいです。また、内容に関しても、正義について議論する際の大切な考え方や哲学について分かりやすく丁寧に書かれており、正義について理解を深めることができます。

また、物語としても楽しめる本です。私自身、物語に感情移入し、カフェで読んでいたのですが、心を打たれ気づけば自然と涙を流していました笑

善く生きるとは何か?ソクラテスからはじまる答えのない哲学的問いや、正義についての考え方を学べる最高の一冊です。

概要

この本は、題名に教室とあるように、高校を舞台に書かれています。物語は基本的に、男生徒1名と女生徒3名、先生1名を中心に進められていきます。

女生徒3名がそれぞれ、正義について考える際の3つの考え方を持っています。
その考え方について、先生が授業で説明していき、深掘りをしていく構成になっております。


著者紹介

飲茶氏

東北大学大学院修了。会社経営者。哲学や科学などの知識を、楽しくわかりやすく解説したブログで人気となる。

主な作品・・・「史上最強の哲学入門」「史上最強の哲学入門 東洋の哲人  たち」「飲茶の「最強!」のニーチェ」



簡単なまとめ

正義についての3つの考え方
平等・・・功利主義(幸福重視)
自由・・・自由主義(自由重視)
宗教・・・直観主義(道徳重視)

功利主義(幸福重視)
功利主義とは、物事の正しさを幸福の量で決めようという考え方です。
功利主義の創始者は、J・ベンサムで、最大多数の最大幸福という言葉は、聞いたことがあると思います。

自由主義(自由重視)

自由主義とは、自由を守ることを正義だと考え、その正義を実現しようとする考え方です。

自由主義には、弱い自由主義(リベラリズム)と強い自由主義(リバタリアニズム)があります。

弱い自由主義(リベラリズム)は、幸福になるには自由が必要だと考えます。そのため、功利主義のように、幸福を重視した考え方です。

強い自由主義(リバタリアニズム)

自由にやれ。ただし、他人の自由を侵害しないかぎりにおいて(飲茶、正義の教室 善く生きるための哲学入門)

強い自由主義の考え方は、上記のように、他人の迷惑にならなければ、何をしてもいいという考え方です。

強い自由主義には、愚行権(人間には自分の意志で不幸になる自由があるか?)といった論点があります。

宗教の正義・・・直観主義(道徳重視)

私は、「物質または理性を超えたところにある何かを信じていること」、それが宗教的であることの唯一の条件であり、その一点によって、宗教的かどうかの是非を見分けるべきであると考えている」(飲茶、正義の教室 善く生きるための哲学入門)

宗教の正義(直観主義)について考える際に、この本では上記のような考え方をしています。

そして、善、正義といった概念が、「私たちが生きているこの世界」の内側にあるか、外側にあるかといった論点で話が進んでいきます。

宗教の正義(直観主義)の立場では、善、正義といった概念が「私たちが生きているこの世界」の外側にあると考えます。

例えば、盗みは悪いことですか?と聞かれたときに、反射的に悪いことですと答えると思います。このように、人間が本来持っている道徳観(私たちが生きているこの世界の外側)を用いて、正義を判断するのが宗教の正義(直観主義)の考え方です。

【私が本書で印象に残ったポイント】

”バランスが大事”

人間は、完全な正義を直観できないし、知りようもない。それはどうしようもない現実だ。でも、そんな何が正しいかわからない世界の中でも、それでも「正しくありたい」と願い、自分の正しさに不安を覚えながらも「善いこと」を目指して生きていくことはできる。(飲茶、正義の教室 善く生きるための哲学入門)

常日頃から、善く生きるとは?を考えて生活をするのは、難しいと思います(笑)それでも、心に留めておきたい言葉でした。

善いことを目指して生きていくためには、自分の考え方・価値基準を明確にすることが必要になると思います。

そして、考え方・価値基準を明確にするためには、色んな考え方を学び、吸収する必要があります。その時に、一つの考え方にとらわれず、視野を広く持ち、バランスを保つことの大切さを感じました。

また、自分が正しいと思っていることが、必ずしも正しいとは限りません。

普段の生活の中でも、自分と相手で、考え方や物事のとらえ方が違うことが結構ありますよね。

そういった時に、自分が正しいと決めつけるのではなく、相手の考え方・意見を尊重し、考えることの大切さを改めて感じました。

【最後に】

この本は、物語形式のため、本当に読みやすいです。また、哲学の基本的なことも学べるため、とても勉強になります。ぜひ読んでみてください。


いいなと思ったら応援しよう!