片山詩史

リモートワークで暇ができたので note を始めました。美術館が好きです。上野に通いす…

片山詩史

リモートワークで暇ができたので note を始めました。美術館が好きです。上野に通いすぎて、地方出身だけど都内から離れられない。読んだ本や映画の感想などを書いています。大学で日本文学を研究していたのに日本の小説読まずに、海外の本ばかり読んでます。新潮クレストブックスが好きです。

最近の記事

映画『怪物』の感想・考察

 是枝裕和監督の映画『怪物』を観てきましたので、感想を書きたいと思います。クィア・パルム賞を受賞しているということで話題になっているのもあり、公開から2か月経とうとしているのに、映画館は満席でした。もちろん週末というのもあるでしょうが。 #映画感想文 #怪物 あらすじ登場人物 麦野早織(演:安藤サクラ):麦野家の母。夫を亡くしており、湊を一人で育ててきた。 麦野湊(演:黒川想矢):地元の小学校に通う男の子。 星川依里(演:柊木陽太):麦野湊のクラスメイト。 星川清高(演:

    • 読んでないのか、それとも読めないのか

      文章が読めない テキストベースで仕事していると、相手に思った通りに意図が伝わっていないということがよくあります。  これは、コミュニケーションにおいて非常に一般的な問題です。コミュニケーションは、単に言葉を交換するだけではなく、コンテキスト、表情、トーン、身振り、文化的背景など、多くの要素に影響を受けます。特に、テキストベースでコミュニケーションをする場合、これらの要素が欠落するため、相手に自分の意図が伝わりにくくなります。  例えば、メールでのやり取りであれば、相手が自

      • リフレッシュ

        こんにちは、私は日々キャリアについて悩んでいる人です。私は自分自身が何をしたいのか、何を追求すべきかについて常に考えています。そんな中、私が唯一自分自身を解放できる時間は、映画を見る時ですが、最近は見る時間もありません。しかし、多様な働き方を推奨しており、皆さんにも同じように自分の時間を持って欲しいと思います。 そんな私ですが、今日は休暇でした。休むということは、自分自身に向き合い、自分の健康を考えることができる貴重な時間です。今日は上野の美術館に行ってきました。美術館に行

        • 積読理性

           外苑から見る丸の内のビルがホントにきれい。  久しぶりに日記をアップしてみます。1000文字くらいかな。 最後まで読めない……  難しい本ばかり読んでいると、頭が痛くなります。膨大な量の論文読んでいたりしても同じで、さらに目も疲れます。早く解放されたいと思って読むスピードを早めるのですが、それでも終わりが見えてこない時は、段落飛ばしで読み、挙句の果てに結論だけ読んだりします。よくないよね、と親切そうな気持ちがよぎります。もちろんよくないことは分かっているわけですが、しか

        映画『怪物』の感想・考察

          映画の感想『イニシェリン島の精霊』

           『イニシェリン島の精霊』という映画を公開日に観賞してきたので、note に投稿しようと思います。公開日に映画を観ることは人生初めてのことで、とても贅沢な気分を味わいました。映画の内容にとても心を動かされてしまい、いろいろ覚え書きしていたら、感想というより考察のようなものになってしまったので、途中からネタバレ有りになります。 #映画感想文 #イニシェリン島の精霊 あらすじ登場人物 パードリック:本作主人公。イニシェリン島で羊飼いで生計を立てている。ペットにロバがいる。

          映画の感想『イニシェリン島の精霊』

          フレンチ・ディスパッチ

          #映画感想文 コンクリートの名作モーゼス・ローゼンターラーと看守シモーヌ ローゼンターラーは精神疾患を患っており、極めて猟奇的な殺人を犯している狂人である。同時に、劇中では描かれることはなかったが、同性愛者であると考えられる。 その内実を見てみる。 同性愛 ①ローゼンターラーがある囚人の部屋の部屋を訪れるシーンがある。囚人は正面を見ている。画面越しに我々を見ているが、この男が実際に見つめているのはローゼンターラーだろうと考えられる。 ②囚人が酒をなみなみと注ぐ。 ③ロー

          フレンチ・ディスパッチ

          あしたのパスタはアルデンテ

          #映画感想文 あらすじ主人公はイタリアのとある田舎町にあるパスタ製造工場社長の息子である。息子には兄妹が数人いて、兄が跡取り息子として工場を仕切っていた。トンマーゾはカントーネ家の次男として兄と一緒に父親から共同経営を引き継ぐことになっていたが、トンマーゾには誰にも言えない秘密があった。 トンマーゾは作家になりたいこと、ローマに戻るつもりであること、最後にゲイであることを兄のアントニオに打ち明ける。共同経営に参加する気はないと伝え、兄のアントニオは何ともいえずその場の話は終

          あしたのパスタはアルデンテ

          是枝裕和『ベイビー・ブローカー』

          #映画感想文 登場人物 サンヒョン、ドンス、ソヨン、 ウソン、ヘジン アン・スジン刑事、イ刑事 各パート雨の中、ソヨンがウソンを捨てるところから始まる。雨のメタファー① ベイビー・ブローカーのBOXには入れない BOXは教会に続いている。中に子どもを入れておけば死ぬことはない。その後は教会直属の保育園、施設で育てられる。 アン・スジン刑事がウソンをBOXに入れる。 ソヨンがベイビー・ブローカーに戻ってくる イ刑事がソヨンを見失った後、ソヨンは教会に昨日ウソンを捨て

          是枝裕和『ベイビー・ブローカー』

          濱口竜介『ドライブ・マイ・カー』

          #映画感想文 登場人物: 家福、音、みさき、韓国人(以下K)、高槻、韓国手話、女性俳優、その他 各構成 音が死ぬまで 家福、音のセックスシーン 家福は音の語りを聞いている 夢見つつの中、物語は語られる 音の夢と物語 物語は車の中で再生産される、家福の口から音の中に再び戻っていくのだ。物語は反芻され、音から新しいかたちとして発せられる。 家福の演劇、音が控室に訪れ、高槻を紹介する。音と高槻の親しいシーンが描かれる。家福にある懸念が浮かび上がる。 音から『ワーニ

          濱口竜介『ドライブ・マイ・カー』

          アダム・スミス『道徳感情論』第一部②

          第二編 適合性と両立するさまざまな激情(passion)の程度についてこの序論はたった数行で短い論考だが、この書物を通して貴重なことが述べられている。 P62「我々が関係する対象によって呼び覚まされるあらゆる激情の適合性は、つまり、観衆が同調できるピッチ(高さ)はある種の中庸にあるはずだ、ということは明瞭である。仮に激情が高すぎたり低すぎたりすれば、観衆はそれを汲み取ることができない。たとえば、個人的な不運や不当な扱いに対する悲嘆や怒りは、いとも簡単に高くなりすぎるが、これは

          アダム・スミス『道徳感情論』第一部②

          アダム・スミス『道徳感情論』第一部①

          第一部 行為の適合性について 第一偏 適合性という感覚について 第一章 共感について P30:いかに利己的であるように見えようと、人間本性のなかには、他人の運命に関心を持ち、他人の幸福をかけがえのないものにするいくつかのプリンシプルが含まれている。 推進力 = プリンシプル、これは原動力のようなもので、この場合、他人と交わることによってもたらされる喜びのようなものだと解釈できる。 原動力は眺めることによって得られる喜びがあり、哀れみや同情といったエモーショナルな情動がこれ

          アダム・スミス『道徳感情論』第一部①

          マルクス・ガブリエル「新実存主義」

          存在論とは:存在者を存在させる存在なるものの意味や根本規定について取り組む 唯物論…観念や精神、心などの根底には物質があると考えている 観念論…われわれの精神世界だけをこの世界の本源的な存在とし、外界は、われわれが自己の精神的存在すなわち観念で認めた、仮象の世界にすぎないとする認識論 ドイツの批判主義 ── 批判=吟味する  カント ── 批判哲学の立場から理性を吟味した。経験論、合理論を統合した         アプリオリ 認識論…認識論(にんしきろん、独: Erk

          マルクス・ガブリエル「新実存主義」

          ホモサケル第二章第三章

          第二章 ホモ・サケル [オピニオン]呪われた人間、聖なる人間 : 東亜日報 古代ローマ法には「ホモ・サケル」という特異な人間が存在した。ラテン語で「聖なる人間」という意味だが、実は正反対だ。人々が犯罪者と判定したので彼を殺しても殺人罪で処罰されない「呪われた人間」だからだ。古代ローマの思想家をはじめ、多くの西欧学者にとって大きな謎だった。どうして呪われた人間が聖なる人間と呼ばれるのか? ホモ・サケルは、中世の「オオカミ人間」や国際法の秩序の外に位置する海賊の姿で常に存在

          ホモサケル第二章第三章

          『ホモ・サケル』第一章 主権の論理②

          締め出し:ジャン・リュック・ナンシー 法自体のないところで法を維持し、自らを適用から外すことによって自らを適用する、法の潜勢力。例外関係はひとつの締め出しの関係であるといえる。 主権者たるノモス P49:「ヘシオドスにおいては、ノモスは暴力と法権利、野獣の世界と人間の世界とを分かつ権力である。ソロンにおいては暴力と正義の「つながり」は両義性も皮肉も含んでいない。それに対して、ピンダロスにおいては、主権者たるノモスは、法権利と暴力とを結びつけることでこの二つを不分明の危険にさ

          『ホモ・サケル』第一章 主権の論理②

          『ホモ・サケル』第一章 主権の論理①

          アガンベンの主張 P18:「近代の民主主義を古典時代の民主主義と比べて特徴づけるものがあるとすれば、それは近代民主主義がはじめからゾーエーの権利要求および解放として姿を現すこと」 としており、これは近代民主主義が剥き出しの生そのものを、普遍的な生の形式へと変容させようとしていることを示唆している。 これは恒常的にゾーエーのビオスを見出そうとしている。 ゾーエーは生物的な生なのに、その中に本来の政治的、社会的な生であるビオスがあると信じようとしている。生の形式の定義として剥き

          『ホモ・サケル』第一章 主権の論理①

          柄谷行人の交換様式Dとコモンの概念

          柄谷行人の交換様式Dは交換様式Aの高次元の回復である。 効果様式Aは互酬制であり、互酬とは贈与とお返しの関係性で成り立っている共同体のことである。現代からするとそれは家族間や近しい親族、友人関係のなかで成り立っている。 交換様式Aは共同体間の争いにより、交換様式Bの支配が強くなる。 交換様式Bは服従と保護の形式であり、これはロバートノージックのいう保護協会の意味合いが最も近い。 トマスホッブズの想定する「万人の万人による闘争」状態にある自然状態はまず最初に争いがありきであり

          柄谷行人の交換様式Dとコモンの概念