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うさぎちゃんへの片想い

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勝手にうさぎちゃんに想いを寄せるお話です
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#バンコク

うさぎちゃん-1-

うさぎちゃん-1-

彼女は私と同じくタバコを吸う。
恐らく一日に多くても3回、オフィスビルの下にある喫煙所に現れる。

基本は10時と15時50分。後はよく分からない。大体そのあたりの時間、喫煙所に座って、彼女はタバコを吸いながらスマホをいじったり、電話をしたり、同僚と会話をしている。

笑顔はほぼ無い。どちらかと言えば無愛想に見える。
かん高い声は見た目の印象よりも若く感じられるが、恐らく私とあまり遠くない年代のよ

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うさぎちゃん -3-

うさぎちゃん -3-

彼女は少し猫背気味なので、凛とした印象と言うよりも、アンニュイな雰囲気を朝一番から一日中安定して醸し出している。化粧もタイ人にしては濃く、セクシーというよりケバい。やや目が座ったどこか不機嫌そうな大きな瞳。。それがまた魅力的なのだが。

彼女の写真を撮ったら、「ナンカ文句あんのぉ?」という吹き出しが一番ピッタリする、そんな感じ。なので、タバコを吸う姿はスケバンっぽくてとてもお似合いだ。

ある日、

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うさぎちゃん -4-

うさぎちゃん -4-

うさぎちゃんはショートカットのためなのか、あるいは小顔のせいなのか、背が高く細身に見える。まっすぐにスラッと伸びた脚からそう感じるのかもしれない。この胸にうさぎちゃんを抱きしめた時のことを想像すると、きっとホントにちっちゃくて華奢なんだろうなぁ。
その華奢な体でその瞬間「チョット!。。苦しいよぉ。。」ってポツリと言うのかなぁ。スケバンらしく。

しかし、人間の体は見た目からは想像がつかないことがあ

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うさぎちゃん -5-

うさぎちゃん -5-

うさぎちゃんは必ず植え込みの縁に座って、足を組んでタバコを吸う。見た目はスケバンだが決してウンコ座りはしないのだ。

うさぎちゃんには少し独特のセンスがある。ツンとすましている割に、服装はクールと言うよりパンキッシュ。

週5日出勤したとして、2日はズボン、3日はミニスカという割合が彼女のファッションスタイル。金曜日は必ずと言っていいほどジーンズなのだが、理由は分からない。

因みにミニスカのうさ

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うさぎちゃん -6-

うさぎちゃん -6-

目が合うのだ、目が。

うさぎちゃんがタバコを吸いに来る時、たまたま私が先にいると、彼女は私に視線を送ってくれるようになってきた、あくまで、そんな気がする。

あ!うさぎちゃん。。キタ。。

当然、私の目は彼女に釘付けで、情けないことに笑顔を作ることすら出来ない。ひたすら彼女をガン見するという最低な所作がせいぜいできること。せめて会釈でもできればといつも後悔する。

うさぎちゃんは、当初私の存在を

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うさぎちゃん -7-

うさぎちゃん -7-

うさぎちゃんはショートカットなのだが、ボブスタイル程にしているタイ人はかなり珍しい方だ。なので、似たような髪型を見かけると、全部うさぎちゃんかと勘違いして目で追いかけてしまう。

と今朝書いたのだが、クライアントミーティングの出先で少なくないボブスタイルの女性に遭遇。結果、そこら中にうさぎちゃんらしき女性を発見し、目が泳ぐ泳ぐ。

うさぎちゃん、どれが、うさぎちゃん?

ショートカットのタイ人は珍

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うさぎちゃん -8-

うさぎちゃん -8-

今思えばあれが最大のチャンスだったに違いない。うさぎちゃんがタバコを吸いに来たとき、ライターがガス欠になって困っていた所に偶然にも居合わせたのだ。

彼女がそっと近寄ってくる。ライターが全然点かないのは横目で見ていたので、要件は話を聞く前から分かっていた。

キ、キター!うさぎちゃん!

彼女はためらいがちに何かを言ったのだがそれを覚えていないのが悔やまれる。もしかしたら、仕草だけだったのかも知れ

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うさぎちゃん -9-

うさぎちゃん -9-

今週はうさぎちゃんを見なかった。仕事を休んでるのか、たまたまなのか。うさぎちゃんとの距離感が広がる不安。

もしかして私にガン見されるのに嫌気が差して転職でもしたのでは。。「ッタク、ウゼえんだヨ、このクソオヤジ」ってスケバンのうさぎちゃんに思われてしまったのだろうか。

距離感と言えばタイの街中を走るバイク。多くの日本人はアブナーイ!と思う筈の車間距離やスリ抜けが当たり前。だがそれは、ライダーのド

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うさぎちゃん -10-

うさぎちゃん -10-

あいつ。。羨ましすぎるー。彼女と同じ会社に勤めているだけでオレのうさぎちゃんと会話できるなんてー。

うさぎちゃんはたまに同僚とタバコを吸っているのだが、隣に座って会話をしているのだ。オレのうさぎちゃんの隣で、である。

私はと言えば、隣はおろかうさぎちゃんを肉眼でガン見する気持ちを抑え、喫煙所の向かいにあるガラスに反射するうさぎちゃんを見つめるだけだ。念の為、うさぎちゃんの視界に入る場所に立つこ

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うさぎちゃん -11-

うさぎちゃん -11-

盲点である。喫煙所の植え込みで座れる場所は2方向あり、片方は正面にガラスがあるが、植え込みを挟んだその反対側にはガラスはない。

今日久しぶりにうさぎちゃんに会うことができた。彼女の定位置はガラスに面した側の端っこなのだが、先に座っている人がいたらしく、あろうことかガラスなしの方に座っているではないか!

これではガラスに反射したうさぎちゃんを眺めることは不可能である。勿論、座っているうさぎちゃん

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うさぎちゃん -12-

うさぎちゃん -12-

あんなに心を焦がしてうさぎちゃんと会えなかった日々は何だったのだろう。今日は何と3回も遭遇したのだった。

こんなにラッキーだと、却って単純に喜べない複雑な気分だ。やはり、多少は焦らさせる方が、彼女の特別感が増すというものだ。同時に、私はどうもこんなにも身勝手な人間なんだと呆れる思いである。

とは言え、今日は何が素晴らしかったかというと、異なる角度からスケバンのうさぎちゃんと遭遇できたことだろう

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うさぎちゃん -13-

うさぎちゃん -13-

今日はうさぎちゃんに会えるのだろうか。と考えながら先程Grabタクシーで会社に着くと、うさぎちゃんが丁度すぐそばを歩いていくところにすれ違った。

タイのタクシーはガラスにスモークが掛かってないが、私が乗っていたのは一般人の車によるタクシーサービスだったので、もちろんスモークが掛かっている。向こうからは車の中は全く見えない。

うさぎちゃん、やっぱり金曜日はジーンズなんだよねぇ。彼女の金曜日の定番

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うさぎちゃん -14-

うさぎちゃん -14-

ついにこの日が来た。
うさぎちゃんが、意思を持って私を見たのだ。

今日は私が先にタバコを吸っていた所に、うさぎちゃんが現れた。彼女はいつものお気に入りポジションに座ったのだが、私は植え込みを挟み彼女の左斜め後方に立っていた。

私がうさぎちゃんの後ろ姿をガン見していたのを、きっと彼女は背中で痛いくらいに感じていたに違いない。今日のイヤリングはとびきり大きくて、只でさえ小顔のうさぎちゃんの顔が更に

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うさぎちゃん -15-

うさぎちゃん -15-

こんなパターンは初めてだ。これでは流石にうさぎちゃんをガン見出来ない。しかし、ハプニングにより新しい組み手を発見したのだ。

雨が降っているため、喫煙所の半分は使う事が出来なかった。私は油断してうさぎちゃんの定位置にカバンを置き、立ちながらタバコを吸っていたところにうさぎちゃんが現れた。

ヤバい。スケバンのうさぎちゃんに怒られる。。

「センパイ、場所確保しておきました」
「テメェに頼んだ覚えな

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