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短編たち

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短編たち集です
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静寂閑雅

少しの静寂と本があれば生きていける。
僕はそっと耳を塞ぐ
周りの音が聴こえないように。

耳を塞げば静寂が僕を落ち着かせてくれる。
小学生の僕は少しだけ背伸びしてて
周りの大人は子供らしくないとか
可愛げがないとか嫌な言葉をぶつけてくる。

それも聞きたくない、聞こえないように
耳を塞いだのにあの子が話しかけてくる
「ねえ、ねえ。何を読んでるの?」
「探偵が出てくる本だよ」
口の形が小さくて唇がふ

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かさぶたは絶対剥がしちゃだめ

耳の中や体の中では小さいおじさん達が働いている。
僕は小さいおじさんを見たことがある。

蟻くらいの大きさのおじさんだったり、雀くらいの小さいおじさんもいるようだ。

休憩中だったようで、おにぎりを美味しそうに食べていた。

僕がじっと見つめていたせいか小さいおじさんはハッとしてどこかに逃げてしまった。
恥ずかしがりやなのだろう。
小さいおじさんが牛乳パックを壁にして何か言っているので耳を傾ける。

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短編量産してます(ショート)

夜中に電話の音がする。
ん…今何時だよ。とスマホを見ると3時
はぁぁぁぁぁ。
1度目が覚めるとなかなか寝られない俺はチッと舌打ちをし、ベッドの中でモゾモゾ動く。
緊急だったら留守番いれるだろうし…
しかもスマホじゃなく固定電話の方に
本当ふざけんな!!!と心の中で荒ぶるが、言葉には出さない。
俺は電話があまり得意ではい。
なぜだかわからないが、対面で話すときのほうが好きなのだ。
電話だと相槌のタイ

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カケコミトイレ

カケコミトイレ

言葉の武器を装備して俺は今日も会社に向かう。会社と言う名のダンジョンへ。
イタタ…胃が痛い。痛みこそ生きてる証なのだと俺は自分に強く言い聞かせ再び足を一歩前に前に進める。後ろから足音が聞こえ振り向くと後輩の武田だ
「先輩!おはよう御座います!今日会議ですね。え?まさか腹痛ですか?」と心配そうな顔をされる。
「いや、大丈夫だ…問題ない」と俺は言うが
すごく胃が痛いのとトイレに行きたいのだが
会社のト

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コインランドリー

僕はコインランドリーが空くのを待っている間
椅子に座って待っている。座る度にギシギシ、ギシギシと音を立てる椅子。
夏は暑くて嫌だったこの熱気が今では少し心地良く感じる。洗いたての洗濯物のにおいと、
洗濯物を畳む時の音がする。
なんだかここにいると、日帰り温泉や、スーパー銭湯と同じ所にいるんじゃないかとさえ感じ、不思議な感覚に陥るのだ。
ここに座っているといろんな人が来る
そりゃあ当たり前なのだが、

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上司と後輩(短編)

俺の貴重な連休が台風と喧しいやつらのせいでことごとく潰されている…腹立たしい。はあ。どいつもこいつもタイミング悪すぎるだろ。タイミングが悪いのか、俺の運が悪いのか……。殻になったたばこの箱を潰してズボンの後ろポッケに突っ込み、灼熱の暑い中
歩きながら最後の1本のたばこを吸っている。
くそ、あちい…
真夏の太陽がジリジリと俺の肌を焼いていく。
歳も30後半だが、いろいろ理由があって実家暮らしをしてい

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