かさぶたは絶対剥がしちゃだめ
耳の中や体の中では小さいおじさん達が働いている。
僕は小さいおじさんを見たことがある。
蟻くらいの大きさのおじさんだったり、雀くらいの小さいおじさんもいるようだ。
休憩中だったようで、おにぎりを美味しそうに食べていた。
僕がじっと見つめていたせいか小さいおじさんはハッとしてどこかに逃げてしまった。
恥ずかしがりやなのだろう。
小さいおじさんが牛乳パックを壁にして何か言っているので耳を傾ける。
「かさぶたは絶対剥いちゃだめだからな!!!」
小さいおじさんの声は結構高めで、つい笑ってしまう。
「笑ってんじゃねえぞ坊主。俺達がせっかくかさぶた貼り付けたのにまた剝して……仕事やり直しじゃねえか」とぷんぷん怒っているが
全くもって恐くないし、寧ろ可愛い。
「ごめん、ごめん剥かないように気をつけるよ」
「剥かないならいい!!!後耳の中指を突っ込まない事!!俺達いつも押し込まれて出てくるの大変なんだからな!」と念押しされた。
台所からお母さんの声が聞こえる。
「誰と話してるの?」
僕は小さいおじさんと顔を見合わせて笑う。
「内緒!!!お母さん今日のよるご飯何?」と僕は小さいおじさんにバイバイして
台所へ向かった
(完)