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書籍出版のお知らせ

この度、あの日から三年の時を経て、書籍を出版しました。

初めての書籍
『ルソン島に散った青年とその時代を生きた女性たち』
表紙

名前だけではありますが自分自身の出版社「春桜社・シュンオウシャ」を持ち、今、自分自身が最も書きたかった人物を選び、一冊の本にまとめました。

あんなことがなかったら、私は文章を書くことを再開しなかったと思いますし、あの当時、三年後に自分が書籍を出版することになろうとは、思いもよらぬことでした。

三度もインスタグラムを消されて、私を知る人も非常に少なくなりましたが、あの悲しみが私の書き続けることの原動力になったのは事実です。

失ったものは二度と返っては来ません。
過ぎ去って行った日々も然りです。

私は悲しみに留まり続けるつもりはありませんでした。いつか、この悲しみを本当の意味で自分のものにして、自分自身の手で、自分の心に決めた彼との約束を果たそうと決めました。そして、私はそれを三年の時を経て果たしました。

本来なら終戦記念日に合わせての告知を予定していましたが、初めての書籍作りに分からないことが多く、発注先のシステムトラブルや自分で書いた文章の粗が目立ち、何度も手直しをし、手間隙を尽くしている間に九月も終わりに近づいてしまいました。

『太陽の子』の時代を生きた、実在した人々の人生の一瞬、分岐点を、独自の視点で選び、そして書きました。

どんなに偉大な人であっても、時の流れと共にその存在は人々の記憶から遠退いて行きます。それは致し方ないことではありますが、決して忘れてしまってはならないことなのです。

取材を進めて行く中で、あの第二次世界大戦で戦死した兵士を、身内ですら憶えていない、良く知らないという遺族がいる現状を知り、私は愕然とし憤りをおぼえました。

なぜ、自分たちの國を、平和を、未来を護るために國に殉じた、いや、もっと踏み込んだ言い方をするならば、文句も言えず戦争になんか行きたくなかった、死にたくなかった先祖を敬わないのか。十分に生きたとは言えない、若くして死ぬしか外に未来がなかった彼らに、なぜ、わずかでも想いを馳せないでいられるのか。

しかし、それが終戦から78年が経過した日本の、戦争を知らない日本人の現状です。このまま、日本は平和を維持出来るのか?そんな危機をも感じながら書き上げました。

これからも、ひとりでも自分の書いた文章を読んでくれる人がいる限り、出来得るところまで書き続けて行きたいと思っています。

【作品紹介】

第二次世界大戦が激化し、日本が破滅に向かって突き進んでいた1944年11月25日、ひとりの青年がフィリピンのルソン島で戦死した。

その青年とは私の大伯父である。

その大伯父と同時代を生きた、美しい4人の女性芸術家たちがいた。

日本人として初めてショパンコンクールに出場し、世界へと羽ばたいたピアニストの原智恵子(書き下ろし)
それまでになかったモダンな雰囲気で日本映画界に新風を吹き込んだ映画女優の桑野通子(書き下ろし)本格的なジャズ歌手の誕生と称賛され、戦後、ブギの女王となった笠置シヅ子(書き下ろし)
そして、命懸けで自分の愛する大切な歌を守り続けたブルースの女王・淡谷のり子(大幅加筆)。

きっと青年は、彼女たちの演奏や歌声をラジオを通して耳にし、スクリーンを通してその演技を目にしていたことだろう。

それぞれの戦前・戦中・戦後を生きた女性たちと、戦後を待たずしてルソン島という戦場に散った、大勢の兵士たちの中のひとりの青年の生涯を、独自の解釈を交えて書き上げた渾身のレクイエム。

今一度知ってほしい、激動の時代を生きた4人の女性芸術家と、22歳の若さで戦場に散った名もなき青年の生きた証を。

【収録内容】

①伝説のピアニスト 原智恵子

甦った幻の音
第三回 ショパン国際ピアノコンクール 
最後の来日リサイタル
パリの楽壇に復帰
世界のプリマドンナ 三浦環との交流   
智恵子の本来の演奏とは
親友 板倉加奈子の回想
帰国後の智恵子とその後

②儚く散った映画女優 桑野通子

ダンサーから映画女優へ
清水宏監督との出会い
通子の演じた日本の女性
戦時下の映画女優
銀幕の名花 通子散る

③時代を背負った歌手 笠置シヅ子

ジャズ歌手 笠置シズ子誕生
時代を背負って舞台に
シズ子を慕った著名人
紅白歌合戦初出場と天才少女歌手の登場
歌手廃業と懐メロブーム到来
ブギの女王とブルースの女王
笠置シヅ子と平成の歌姫
存在は時代を超えて

④歌は心が口癖だった 淡谷のり子

十年に一人のソプラノ
恩師 久保田稲子との出会い
クラシックとの訣別
名曲 別れのブルースの誕生
日本初の歴史的な出来事
皇軍慰問の日々  
のり子がステージで泣いた日
大切なものはあるか
追想 淡谷とし子さんのこと

⑤ルソン島に散った青年

大伯父探しの旅
或る女性の存在を追って
一枚の軍歴証明書
思いがけない一本の電話
三日間の婚姻生活
ルソン島に散った青年
軍国の母の戦後

⑥あとがき
今、どうしても書きたかったこと

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